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DIO様に調教済みの花京院を承太郎色に染める話。

花京院がDIO様のお古なので注意してください。

 

 

 

-1-

 

真っ暗な闇にとらわれて、何も見えない。

視覚からの情報を得られない私の体は、他の感覚を研ぎ澄ませるが、四肢を拘束する枷の冷たさが増しただけだった。

心細さから浮かんだ涙も、視界を被うベルベットの布地に吸いとられてしまう。

 

「ふぅっ…ううっ…」

 

口に馬のように革棒をくわえさせられているせいで、鼻からこらえきれない嗚咽がもれ、私は盛大に泣いてしまった。

さみしい。早く圧倒的な力で捩じ伏せてほしい。

 

拭うことのできない涙が、目隠しをすっかり濡らし、泣き疲れてうとうとしはじめたころに、ギイと重々しい音をたてて、扉が開かれた。足音が近づいてくる。

その音に私の体は強ばる。

誰だ。慇懃無礼な執事か、それとも主の忠実なる狂犬か。

 

「おやおや、花京院。私がいなくて泣いていたのか?」

 

優しく甘い声が響き、すぐにわかった。私の主人――DIO様だ。

犬のように尾があれば、私はちぎれんばかりに振っただろう。

しかし、尾もなくベッドにくくりつけられた私は、不自由な体を動かして、ガシャガシャと鎖を鳴らし、無様な声を出すことしかできない。

 

「かわいいやつめ、私が自ら可愛がってやろう」

 

そういって、DIO様の冷たい指先が私の体を撫でる。

微細な電流が這いまわり、下半身に甘い毒が回る。

見えなくとも、私のペニスが天をつかんばかりに勃ちあがるのがわかる。

 

もっと決定的な刺激を欲し、私は甘えた声を出して胸を突き出す。

DIO様が笑い、私の乳首に穿たれた金色のピアスを弄ぶ。

じん、とした痛みも快楽にすりかわる。

 

「私のやったピアスが気にいったか?淫乱なお前にぴったりだ」

 

今度はDIO様の手が私の足の間にのばされる。

だらだらと涎を垂らしているそれを扱きあげながら、DIO様が問いかける。

今度はここにしてやろうか?と。

 

はいと返事をしたいが、革棒に阻まれて満足な返事もできない。

こくこくと頷くと、DIO様が笑ったのがわかった。

DIO様が喜んでくださるのはうれしいことだ。

 

私が歓喜に震えていると、ゆっくりと目隠しがとりはらわれた。

ぼんやりとした部屋の明かりでも、暗闇に慣らされた私には刺激が強く、思わず目を眇めてしまう。

眩しいほどの金髪に、白い肌、そしてルビーを思わせる赤い瞳に、同じ色のルージュをひいた主人の姿があった。

 

「花京院、ペニスのピアスは、お前が私の望みをかなえたら、褒美にやろう。私の頼みを聞いてくれるか?」

 

私が頷くと、私の唾液で汚れるのも構わず、DIO様が口枷をとってくださった。

 

「私のために、日本にいる空条承太郎という男を始末してほしい」

 

私はしびれてうまく回らない口でその男のことを尋ねた。

 

「私の…首から下の体は、別の人間のものだが…空条承太郎はその血統を持っている。おそらく強力なスタンドを、最近身に付けたはずだ。」

 

DIO様の美しい手が、私の頬をなでる。

 

「お前の緑のともだちの…敵ではないだろうがな」

 

やってくれるな?とDIO様が問うので、仰せのままにと私が答えると、DIO様はうっそりと笑い、いい子だと私の耳にささやきかけた。

そしてDIO様の黒く塗られた爪が、私の性器につきたてられ、私はひときわ高く鳴き声をあげて精を放った。

 

 

 

空条承太郎は疲れていた。

留置場をでて、四日ぶりに学校に登校できたと思えば、今度はDIOの刺客に命を狙われ、学校を半壊させる騒ぎとなった。

 

いくらタフな彼といえども、今回ばかりはさすがに骨が折れた。

やれやれだぜ。いつもの口癖をつぶやき、承太郎は早めに寝ることにした。

そのときであった。

 

「JOJO」と遠慮がちに声がかけられる。

いぶかしく思い、声のした方に目を向けると、ふすまの向こうに誰かが立っている。

すらりとした影から、承太郎はその人物が、DIOに操られていた少年だと分かった。

こんな夜分にどうしたのだ、と承太郎は思ったが、部屋に少年を招き入れてやった。

 

少年――花京院は、悲痛な面持ちで、承太郎の部屋の畳をにらんでいた。

強く噛みしめた唇が色を失っている。

声をかけるのもためらわれる雰囲気ではあったが、承太郎は花京院に突然の来訪の理由を尋ねた。

 

花京院は、思いつめた顔で、「頼みたいことがある」といった。

承太郎が何を、と聞く前に花京院はホリィが用意した寝間着を脱ぎ始めた。

そして目の前にあらわれた光景に承太郎は息をのんだ。

 

花京院の白い胸に浮かぶ二つの突起を、大ぶりな金色のピアスが貫いていた。

彼の乳首は女のように赤く色づき、肥大している。

 

「…DIOにつけられた。溶接されていて、私ではとることができない。だが、お前のスタンドなら、あるいは…」

 

花京院は顔をあげると、承太郎をまっすぐ見つめてきた。

 

「こんなことを頼むのは、虫がよすぎるかもしれない。私はお前の命を狙い、殺されても文句も言えない立場だと言うのに…」

 

花京院のやや紫を帯びた、不思議な色合いの瞳は、DIOに踏みにじられてなお、彼の高潔さを感じさせ、凛として輝いていた。

彼の瞳に見とれながら、不意に承太郎は、昔読んだ自分の一等好きな小説の一節を思い出した。

 

(星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているから)

 

音もなく、承太郎の分身が現れ、その青い闘士のようなスタンドを見、花京院はびくりと体を震わせる。

無理もないことだ、と承太郎は思う。

今日、敵であった彼をさんざ殴って気絶させたのだから。

 

「動くなよ」と告げ、承太郎は花京院の肩をおさえた。

青い巨人がそっと胸のピアスをもちあげ、徐々に力をこめる。

花京院は目をつぶり、膝の上でこぶしを握り締め耐えていた。

 

その瞳が見えないのは惜しい、と思いながら承太郎は蒼白な顔を見つめた。

こんなに他人のことが気になるのはじめてのことだった。

この感情をなんと名付けていいかわからずに、承太郎は吸い寄せられるように、花京院の薄い唇に自分の唇を重ねた。

 

「!?」

 

花京院の体がこわばり、その瞳が大きく見開かれる。

彼に胸を強く押され、引きはがされる。

その拍子に、パキリと花京院のピアスがこわれ、砕け散った。

 

「な、何のつもりだ!からかっているのか?」

 

花京院の顔は先ほどとは一転して紅潮し、彼は瞳をうるませながら承太郎をにらんできた。

 

「いや、すまねえ。俺にもようわからんが、つい。」

 

とつぶやくと、花京院は自分こそわけがわからないという顔で、うろたえていた。

やがてしぼりだすような声で

 

「…わ、私がDIOの慰み者にされていたから、馬鹿にしているのか」

 

と花京院は言った。

 

「違う」

 

承太郎が静かな声で告げると、花京院は黙り込んだ。

 

(お前が、なんだか泣き出してしまいそうだったから。その目がもっと見たかったから)

 

キスをしてしまった理由はぐるぐると承太郎の中をめぐっていたが、結局言葉になることはなかった。

重苦しい沈黙が流れ、承太郎は自らの口下手さを呪った。

 

「…不快にさせたなら、すまん。悪かった。」

 

と承太郎が謝ると、花京院は目を合わせないまま「別に」と小さな声で答えた。

赤くなった花京院の耳と震える肩に、なんだか胸が締め付けられる思いをしながら、承太郎は花京院に元通り寝間着を着せてやった。

 

部屋に戻れるか聞くと、花京院はこくりとうなずき、立ちあがった。

黙り込んでしまった花京院に、心が痛み、承太郎が先ほどの行為を反省していると、ふいに夜着にしている浴衣が引っ張られた。

見ると、花京院の細い指先が承太郎の胸元を小さくつまんでいた。

 

「ピアス、とってくれてありがとう」

 

と油断すれば聞き逃してしまうようなかすかな声がして、ちらりと視界の端に熱を帯びた花京院の瞳が見えたかと思うと、彼は背を向けて歩きだしてしまっていた。

小さくなる花京院の背中をいつまでも見つめながら、承太郎は彼の瞳の気高さが失われないように、自分が守ってやりたいと思うのだった。

 

 

 

-2-

 

花京院典明が、承太郎が思うよりずっと強かだとわかったのは、日本をでてすぐのことだった。

 

承太郎に比べて線が細く、繊細そうな外見の花京院は、勇ましくクワガタのスタンド使いを一人で倒した。

その後墜落する機体に驚きはしたものの、パニックになることもなく落ち着いていたので、承太郎はそのことを少し意外に思った。

花京院は自分より1つ年下で、ケンカにも慣れていなそうであるし、もっと怯えるのではないかと思ったからだ。

 

花京院からは一種の覚悟のようなものが感じられる。

DIOに肉の芽をうえられ、一度死んだも同然の経験をしたことで、彼に強靭な精神力が備わったのかもしれない。

 

承太郎は何事にも動じない花京院のことをとても好ましく思った。

なぜなら今まで彼の周りには、うるさく騒ぐ女子生徒や、無謀にも自分に歯向かってくる不良や、恐怖の目で己を遠巻きに見る腰抜けしかいなかったからである。

自分と同年代のスタンド使いというのも手伝って、承太郎はますます花京院について興味をひかれた。

 

それから、承太郎は暇さえあれば、花京院をそっと観察するようになった。

花京院は、いつも控えめに、みなの和を保とうと微笑んでいる。

決してでしゃばることなく、しかしここぞと言うときには前にでて闘う。

 

花京院はよく気がつく男で、承太郎が何も言わずとも、その意図をくみとる。

花京院が側にいると、心が落ち着くことに承太郎はなんとなく気が付いていた。

花京院からは清潔で爽やかな印象をうけ、とてもDIOに玩具のように弄ばれていたとは思えない。

そのことを知っているのは、この一行のなかでは承太郎だけだ。

 

花京院につけられた忌まわしいピアスをとることは、アヴドゥルにもできただろうが、(多少の火傷は避けられないが)彼が承太郎を頼ったということは、少しは心を開いてくれているのだろうか。

はじめのうちは、気取った話し方だった花京院も、段々とうちとけ、にぎやかなポルナレフが仲間になると、17歳の少年らしく少しずつ笑ったり、怒ったり感情をあらわすようになった。

 

だから承太郎は、DIOが花京院に残した忌々しい爪痕は、胸のピアスだけだと信じて疑わなかったのだ。

 

 

 

あつい。苦しい。燃える杭が僕の体に打ち込まれる。

足をめいっぱい開かされ、カエルのような無様な姿で、僕は尻に男のものをふくんでいる。

皮膚を裂き、肉をかきわけて、それは僕の体を我が物顔で蹂躙し、男が動く度に、擦られる粘膜が悲鳴をあげている。

 

初めて体で感じる、人の体温がこんなに不快だとは思わなかった。

ざらりとしたものが尻に触れ、それが男の陰毛だとわかったとき、僕は堪らず吐いていた。

 

呼吸がままならず、叫びすぎて潰れた喉からは、ひゅうひゅうとか細い空気がもれただけだった。

男の手が伸びて、僕の力なく垂れ下がった陰茎をしごくが、恐怖と嫌悪感がひどく、とても反応しそうになかった。

 

僕が勃起しなかったのが気に入らなかったのか、男はペニスを弄ぶのをやめると、今度は僕の首を絞めてきた。

じわじわと男の手に力が入り、僕の脳は酸素をとりいれようと必死になる。

死ぬかもしれない。恐怖にさいなまれ、僕は男の手が少しでも緩むように、その手を爪で掻きむしるが、男はただにやりと笑っただけだった。

 

血流が妨げられ、だんだんと頭にもやがかかり、何も考えられなくなる。

大きく口を開けるが、苦しさは変わらない。全身が緊張して強ばる。

 

体の中の男のものが、体積を増したのがわかる。

圧迫感で腹がはちきれそうだ。

喉元まで男の長いペニスがせりあがってくるようで、苦しい。

かすみゆく意識の中で、男の声が聞こえる。

 

「花京院、恐れることはない。友達になろう…」

 

いやだ。こわい。男の声は甘美だが、底知れぬ恐ろしさがあった。

額に鋭い強烈な痛みを感じ、僕は最後の力を振り絞って全身をばたつかせた。

僕の抵抗も空しく、思い切り振りあげた足は軽々と抑えられ、男は僕の足首をつかんだまま腰の動きを再開した。

 

するとどうだ。ざわざわと不思議な感覚が僕の下腹のあたりをうずまき、男の突き上げにあわせて、僕は甲高い声をあげた。

嘘だ。こんなの僕の声ではないと思いたいのに、それはやはりまごうことなく僕の声で、まるで発情した雌猫のようだ。

 

尻の穴がうずき、僕の意思を無視して、嬉しそうに男を締め上げる。

見ると僕のペニスは臍につくほど反り返り、先端には粘液をにじませている。

 

男がくつくつと含み笑い、動きを速める。

僕は夢中でもっともっととねだり、自分から腰をふりたくった。

信じたくないが、僕はこの男の奴隷になりさがっていた。

 

なんて気持ちいいんだろう。

さっきまでの苦痛が嘘のように消え、僕のペニスの脈動が全身に波及する。

淫らな娼婦のように、男に組敷かれて悦びの声をあげ、男の与える快楽に嬉し涙を流しながら、得もいわれぬ幸福を感じていた。

 

男の腰に足をからませ、自分で自分の雄をしごき、欲望を貪っていると、男がどこからか指輪より大きな、しかしブレスレットよりは小さい金の輪をとりだした。

それが何かなど、快楽にゆるみきった僕には全くわからなかった。

また、そんなリングなど気にならないほど、僕は行為に溺れていた。

 

唐突に、自分を慰めている僕の手を、男が引き剥がした。僕が不満の声をあげると、男は代わりとばかりに、僕の乳首を乱暴にひねりあげ、長い爪を深々と先端につきさした。

その刺激をうけ、僕は尻の中の男を強く締め付けながら、背骨を這い上がる強烈な快楽に、大きく身を震わせて欲を吐き出した。

 

射精のあとの心地よい気だるさに、恍惚とひたっていると、男が手に持っていたリングを近づけてきて、手早く睾丸と萎えたペニスを通した。

リングは僕のためにあつらえたかのように、ぴったりと根本の肉を噛み、僕はうろたえた。

 

しかし、男が耳元で嬉しいか?と囁くと、僕は魔法にかけられたように、この男に対する愛しさが込み上げてきて、はいDIO様と答えていた。

 

 

 

久しぶりに浴槽のついたホテルに宿泊できるというのに、花京院は全く嬉しくなかった。

なぜならバスルームで服を脱げば、否応なく自分の中心にはめられた金色のリングが目に入るからだ。

金色というのがまた、DIOの髪色を思い起こさせて、花京院はげんなりした気分になった。

 

DIOにつけられたコックリングは、痛みはないものの、ペニスの根本をしっかりとしめつけており、花京院は恐ろしくて外すことができなかった。

日本をでて、次から次へと敵に襲われ、自慰をしようという気力もなかったからいいが、これからどうなるのかと考えると気が滅入る。

 

このリングをしたまま勃起すると、心臓の血液が全て下半身に集まってしまうような気になるし、絶頂がずるずる長引いて、目の前に世界一嫌いな人間がいても思わずすがってしまうような、強烈な悦楽に襲われるのだ。

 

だが、花京院は胸のピアスのように承太郎を頼ろうとは思わなかった。

考えなかった訳ではないが、ズタズタにされてもかすかに残った彼のプライドが、それを許さなかった。

 

バスルームの鏡にうつる花京院の胸にはぽっかりとピアスホールが空き、乳首は歪に変形している。

ペニスには馬鹿馬鹿しい金のリングをつけており、これから一生、人の前で裸体をさらすことなどできないのだと花京院は思う。

結婚はもちろん、恋人を作ることだって望めないし、学校のプールの授業も、理由をつけて断らなければならないだろう。

 

しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。DIOを倒すことに集中しなくては。

そう思って、シャワーの蛇口をひねると、勢いよく氷のような冷たい水が降ってきた。

 

「うわああああ!!」

 

びっくりして思わず設定温度を見るが、ちゃんと42度になっている。

とにかく水をとめなくては、と花京院は思ったが、ものすごい水圧でシャワーの水が顔にかかり、蛇口の場所がよく見えない。

大騒ぎしていると、バスルームのドアが急に開かれた。

 

「どうした、花京院!敵のスタンド…か…」

 

バスルームに威勢よくとび込んできた承太郎の声は、だんだん大きさを失って、最後の方はシャワーの水音にかきけされて全く聞こえなかった。

彼の目は大きく見開かれて、花京院の股間のリングに釘付けになっている。

 

(見られた!!)

 

恐れていたことが起きた、と花京院は思った。

尊敬する承太郎にだけは知られたくなかった。

いやだ。恥ずかしい。消えてしまいたい。

 

さっと血の気が引き、花京院の体がガタガタと震えだした。

見ないで、と言いたいのに声が出ない。息を吸っても吸っても、酸素が足りない。

体がこわばって、指先がしびれだす。眩暈がひどく立っていられない。

 

「花京院!」

 

承太郎がシャワーで学生服が濡れるのもいとわず、ぐらりと傾く花京院の体を抱きかかえた。

パニックをおこして、陸にあげられた魚のように口をはくはくと動かしている花京院をみると、承太郎は花京院の鼻をつまみ、自分の呼気を彼に与えてやった。

ゆっくりと二酸化炭素の多い空気が、花京院の肺にしみわたり、頭痛と吐き気がおさまってゆく。

 

何度か、承太郎から空気を分け与えてもらうと、花京院の恐慌もやわらいだようだった。

承太郎の大きな体にすがりつくと、彼が花京院の背中をなでてくれる。

 

「落ち着いたか?」

 

承太郎が子供をあやすように、優しく尋ねるので、花京院は「うん」と小さく答えた。

答えてから、自分が命の恩人にずいぶんと軽い口調を使ってしまったと気付き、「はい」と言いなおすと、承太郎は別にいいと少し笑ったようだった。

 

凍えるようだったシャワーはいつの間にか、ちょうどよい温かさになっていて、花京院は心地よさにくたりと力を抜いた。

承太郎の水にぬれた胸元から、トクトクと心臓の音が伝わり、それはひどく花京院を安心させた。ずっと昔に失くしてしまった宝物を、やっと見つけ出したときのような安堵感だった。

 

「…君には、見られたくなかったのに。…僕のこと、けがらわしいと、思ったかい?」

 

花京院がぽつりと呟くと、承太郎はいいやと答えた。

 

「…おめーは、もっと、人を頼ってもいいんじゃあねえか?…あんまり頑張りすぎるな。俺をもっと頼ってくれ。」

 

と、頭上から承太郎の声が降ってきて、花京院は今まで我慢してきた色々なものが、あふれてしまい、子供のように声をあげて、承太郎の胸に顔をうずめて泣いたのだった。

 

 

 

どうやら、自分はさんざん大泣きして、眠ってしまったらしい。

花京院が緩慢におきあがると、そこはベッドの上で、彼には既にパジャマが着せられていた。

 

部屋にはぐしょ濡れの承太郎の学ランが干してあり、バスルームからシャワーの音が聞こえる。

おそらく、承太郎は自分のことを後回しにして、花京院の世話をしてくれたんだろう。

申し訳ない、と思いながらサイドテーブルの電気をつけると、ルームランプの下に見慣れた金色のリングが置いてあった。

 

リングの脇には、紙が添えられ、少しクセのある字で「せっけんでとれた」とだけ書いてある。

その下に、何か書こうとしてやめたような跡があり、花京院は承太郎のその不器用さを愛しく思った。

 

そして花京院はその日、承太郎に受けた恩は返しきれないだろうけれど、自分はこの男のために何でもしようと決意するのだった。

 

 

 

-3-

 

空条承太郎は困っていた。

花京院典明が全裸で自分の胸にしなだれかかって、寝息をたて始めたからだ。

 

水に濡れた花京院は凄絶な色気を纏っており、17歳の承太郎には刺激が強すぎた。

それでなくとも、最近妙に花京院のことが頭から離れず気になっていたのだ。

反応するなというほうが無理だった。

 

(落ち着け、落ち着け…)

 

承太郎は花京院を起こさないようにシャワーをとめ、彼が上を向くように抱き直した。

彼の体にはやはり、先ほどちらと見えたように、中心に金色のリングがつけらていた。

花京院の取り乱しようを見るに、DIOにつけられたのだろう。

 

それはペニスと精巣の根本をしっかりと咬んでいて、動かそうとしても承太郎の太い指では、なかなかうまくいかなかった。

しかも承太郎がもたもたしているうちに、花京院のそこはわずかに膨らんだようで、ますますリングが取れにくくなってしまった。

無闇に取ろうとしても、状況がまずくなることを悟った承太郎は、少し自分を落ち着けることにした。

 

まず、勃ちあがった自身をなんとかしようと冷水をあびた。

だんだん冷静になると、承太郎は自分が幼いころに、母親の宝石箱にイタズラをして、遊びで親指にはめた母親のピンキーリングが抜けなくなったことを思い出した。

大声で泣きわめく自分を前に、母親は動じることなく、うっ血した指を氷水で冷やして細くすると、石鹸を使ってまるで魔法のように外してくれた。

 

承太郎は早速、花京院がびっくりして目覚めないくらいの温度にシャワーを調節し、花京院のそこに当てた。

そして備え付けのボディーソープを大量に、なるべく刺激を与えないように花京院の股間に垂らした。

息をついて、まず彼の精巣の1つを輪にくぐらす。

 

同じ男であるし、デリケートな部位なのはわかっているので、かなり緊張する。

肉の芽をとったときもこんなに汗をかいただろうか。

いつの間にか無意識にスタンドを出していたようで、スタープラチナと名付けられた青い巨人が、承太郎の動きに同調していた。

 

あせらずに、ボディーソープのぬめりを借りて、もう1つの精巣も輪から外す。あとはペニスからリングを引き抜くだけだ、と承太郎は汗をぬぐった。

雁首の部分で少しヒヤリとしたが、リングは無事に花京院の体から取り去ることができた。

 

ふぅと息をはいて、リングを見る。

すると承太郎は内側に何か文字が彫りこまれているのに気づいた。

目をすがめて、その小さな文字を読む。

 

(yours…forever…)

 

吐き気がした。忌々しい吸血鬼め、ぶち殺してやる。怒りが承太郎を支配した。

スタープラチナで握り潰そうかと思ったが、その権利があるのは花京院のほうだろう。承太郎はすんでのところで思いとどまった。

 

 

 

それから承太郎はなるべく意識しないように、花京院の髪と体を手早く洗った。

花京院の体はすべらかだったし、彼の髪も柔らかく、いい匂いがして、ずっと触っていたくなるが、邪念を振り払って淡々と作業をすすめた。

 

気がつくとまた承太郎の下半身は張りつめていた。

承太郎はそのことに気がつかないふりをして、水が滴る学生服を脱いでバスローブをひっかけると、花京院の体をタオルで拭き、パジャマを着せてベッドへと寝かせた。

 

悩んだ後にリングをベッドサイドにおき、「せっけんでとれた」とだけメモに書いておく。

その下に承太郎は「気にするな」と書きかけて、その言葉に余計に花京院が気をつかいそうだと思って、ぐちゃぐちゃと消した。

 

そしてその後も全く収まりのつかない自身を持て余し、承太郎は日本をでて初めて、バスルームで自慰にふけった。

先ほどの花京院の白い肌や、しかめられた眉、薄い茂みの奧の性器を思い出せば、承太郎の雄はすぐに硬く芯をもった。

 

妄想の中で承太郎は、DIOの爪痕も残らないくらい手酷く花京院を犯した。

幻の花京院は淫らにふるまい、承太郎の乱暴な突き上げにも悦んで腰を振っていた。

内股がひきつれたように痙攣し、承太郎は大した時間もかけずに熱を吐き出した。

 

快楽の波がひいていくと、承太郎は罪悪感で頭を抱えた。

あんな妄想、軽蔑するDIOと何ら変わりない、と承太郎は思った。

 

本当は彼に優しくしたい。気高くも繊細な花を慈しむように、毎日水をやって、虫がつけば追い払い、嵐の日には自分が風避けになってやりたい。

だが一方で、そうやって大事に育て、太陽のもとで自由に咲き誇る花を、手折って自分だけのものにしたい、誰の目にも触れないようにしたいという薄暗い気持ちも確かにあった。

 

明日、花京院にどういう顔で会えばいいのか、と承太郎は憂鬱な気持ちでバスルームをでた。

花京院はどうやらぐっすりと眠っているようだ。

肩が出ているので、布団をかけ直してやる。

 

彼の年相応のあどけない寝顔を見ると、残酷な気持ちも少し和らぐ。

ふと横に目をやると、リングはなくなっていた。

メモには几帳面そうな字で、ありがとうと書き足されている。

 

側にあるごみ箱を見ると、リングが無造作に捨ててあった。

手にとるとそれはひしゃげていて、キラキラと光る緑色の欠片がついている。

承太郎はそのエメラルドの粒に、花京院の内に秘める激情を感じ取った。

 

それから、承太郎はDIOに対する嫌悪感にしたがって、窓からリングを投げ捨てようとして、この国ではその行為が法律に触れるということを思いだし、スタンドを使ってリングを粉々に砕き、まるで種を蒔くように金の粒子を風にのせた。

 

それは美しい輝きを放ちながら、すぐに夜の闇の中に吸い込まれていった。

 

 

 

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