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プロローグ 夢をみる島


 ある所に、「承花島」というなんとも不思議な島がありました。その島はどんな地図にも載っておらず、島民以外にその島の存在を知る人は、世界のどこにもいませんでした。


 「承花島」は四方を色鮮やかな魚と珊瑚が生息する美しい海に囲まれており、豊かな森には様々な動植物が暮らしておりましたが、その島に住む人間は「空条承太郎」と「花京院典明」という二種類の個体しかおりませんでした。


 「空条承太郎」はどの個体も非常に背が高く、また広い肩幅の頑健な身体的特徴をもっていました。そうして彼らは皆、短い黒髪に、ややグリーンがかった不思議な色合いの瞳を持ち、誰もが振りかえってしまうほど美しい姿をしておりました。

 

 「空条承太郎」は旅行好きで、好奇心が旺盛なことがよく知られていますが、彼らはとりたてて自分の感情を外に表す必要はないと考えており、そのため誤解を受けやすく、たびたびトラブルを起こしてしまうのでした。そして最大の特徴は、生涯たった一人の人間しか愛さない、ということでした。

 

 一方「花京院典明」は、ゆるく巻かれた一房長い前髪と、横に広く薄い唇が特徴で、こちらも恵まれた体躯を持っていましたが、「空条承太郎」と比較すると、随分と細身で繊細な印象を受けます。
 

 「花京院典明」は皆、人に頭を下げたり、従属したりすることを非常に嫌いますが、尊敬するところのある者には、寛大で優しく、相手を立て、思いやるのでした。「花京院典明」は控え目な性格でありながら、和を保とうとする気持ちが強く、神経質そうな外見からはなかなか想像できませんが、大胆な一面も持ち合わせていました。

 

 「承花島」では、前述した「空条承太郎」と「花京院典明」が番いを作り、仲睦まじく暮らしておりました。全ての「空条承太郎」には、必ず最適な「花京院典明」が番いとして存在し、逆もまた然りなのでした。島に住む「空条承太郎」と「花京院典明」は、十七歳以降、毎年「承花マッチングテスト」を受けることが義務付けられており、その結果によってどの「空条承太郎」と「花京院典明」を番いにするか、島の政府の偉い人によって決定されるのです。

 

 多くの個体は政府のマッチング結果に従い、最適な番いと幸せな生活を営むのが常でしたが、なかには政府に反発し、「承花マッチングテスト」を受けずに、自分自身で番いを見つける個体も少数ですが存在するようです。

 

 これはそんな不思議な島で暮らす、「空条承太郎」と「花京院典明」のお話です。

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