ぼくのお気に入りのもの――古本屋で見つけた詩集、誕生日にもらったストール、美術館の新しい展示、好きな俳優が出ているドラマ、贔屓のバンドのCD、野球観戦……他にもたくさんあって、とてもじゃあないけど一つに絞ることなんかできない。
ぼくは欲張りなんだ。
だから、二人の承太郎にいっぺんに告白されたとき、ぼくはどっちの承太郎も大好きだったから、どちらかなんか選べなかったんだ。
放課後はいつも、ぼくの部屋でいけないことをする。
部屋に入るなりぼくはお姫様みたいにベッドに運ばれ、4本の手がぼくの身体のラインを確かめるように愛撫する。
「あ……」
吐息とともに漏れた声をキスで奪われる。ぽてりとした唇と、熱く濡れた舌の感触が気持ちいい。
情熱的な口づけに、酸素が足りなくなって口を離すと、顎を掴まれてもう一人の承太郎に口づけられた。
嫉妬を見せつけるような、快楽を追い上げるためだけの性急なキスに、頭がくらくらする。
「ふっ……ん、んん……」
いつのまにか制服はすっかり脱がされていて、いたずらな手が両方の乳首をひっかいてくる。
ぞわぞわとした快感に身を捩れば、後ろから伸びてきた手が臍の上をすべり、ペニスを握りこんできた。
直接的な刺激に思わず身体が跳ねるが、承太郎たちは構わずぼくを追い詰めていく。
は、は、と犬のような荒い息を上げながら、羞恥で顔を覆うと、欲に掠れた低音でかわいいなと耳元に囁かれる。
承太郎も興奮してくれているのだ、と思うと、下腹がきゅうと疼いた。
「あ、あ……」
ぶるりと身体を震わせると、乳首を愛撫していた承太郎が下がってきて、ぱくりとゆるく勃ちあがったぼくのペニスを咥え込んだ。
熱く濡れた粘膜に包まれる感触に、ひ、と声を上げて内腿が跳ねると、後ろから抑え込まれた。
「逃げるんじゃあねえぜ」
ぐぽ、じゅぶ、といやらしい水音が響き、聴覚を犯す。
承太郎がぼくの脚の間に顔をうずめて、ペニスを愛撫しているという現実に、理解が追い付かない。
「やだ、そんな……や、いや……」
言葉とは裏腹に、承太郎の口内で自分のペニスが角度を増しているのがわかる。
じゅる、と先走りごと幹を吸い上げられて、抜けるような快楽が広がっていく。
「あ、あ、もう……」
イキそう、と漏らせば、急に承太郎が口を離した。
ぎゅう、とペニスの根元を指で締め上げられて、悲鳴が漏れる。
「まだ、出すんじゃあねえぞ……」
早々にへばられちゃあ困るからな、と承太郎がつぶやくと、二人の承太郎が示し合わせたようにぼくの身体を反転させた。
「あ……」
そうすると、後ろからぼくを抑え込んでいた承太郎の滾ったペニスが目の前にきて、ぼくは快楽でぼうっとしたままそれを咥え込んだ。
さっき、もう一人の承太郎がしてくれたみたいに、音を立てて吸い上げれば、気をよくしたのか承太郎が頭を撫でてくれる。
「ん、んふ……」
ぼくはすっかり嬉しくなって、お気に入りのチェリーを舌で転がすように、夢中になってペニスを舐めまわしていると、尻たぶが割り開かれる感覚がある。
外気に触れたアナルがひくりと痙攣すると、そこに濡れた感触が降ってきた。
「ん!んんっ」
ぴちゃ、と熱くぬめる何かが、尻穴を広げていく。
生き物のようにうごめくそれが何かなんて、想像しただけで頭がおかしくなりそうだ。
「ん、んぐ、ん、んぅっ」
うろたえて頭を引こうとすると、もう一人の承太郎に頭を抑え込まれた。
口の中でどんどん質量を増していくペニスに、呼吸が苦しくなる。
「ん、んん……」
酸欠で意識が飛びそうになる瞬間、ペニスが引き抜かれた。
ぼうっと、承太郎を見上げると、彼は獣の笑みを浮かべていた。
「気絶してる暇なんかねえぜ、花京院」
なに、と返すとまた身体をひっくり返された。
仰向けになった承太郎のペニスの上に、腰を落とされる。
「あああっ」
自分の口で育て上げた剛直に身体を貫かれ、目の前が真っ白になる。
息も絶え絶えに視線を上げると、もう一人の承太郎と目が合った。
まさか、と思う間もなく、すでに巨大なペニスを咥え込んでいるアナルの縁をめくりあげると、彼はもう一本のペニスをねじ込んできた。
「ん〰〰〰〰っ」
気づけば、ぼくは挿入と同時に射精していた。
目の前でちかちかと光が明滅する。
声にならない悲鳴を上げ、絶頂に身体を震わせると、二人の承太郎が楽しそうに笑う。
「すげえ締め付けだな」
ぐっと前立腺を突き上げられて、強烈な快楽に何も考えられなくなる。
「あっ、うそ、いや、あっ、あっ」
一人の承太郎が最奥にペニスを叩きつけると、もう一人の承太郎も間髪入れずにピストンを繰り出してくる。
奥と、中と、入ってすぐのところと、全部が気持ちいい。
「は、ひぃっ、ひっ」
いつもは一人を受け入れながら、もう一人を口で慰めていたから、その二倍、いやそれ以上の刺激と快楽に身体がついていかない。
過ぎた悦楽に涙を流せば、承太郎にぺろりと舐め上げられた。
「かわいいやつ」
ぐぽ、ぐぽ、と鈍くいやらしい交接音に、頭がくらくらする。
サンドイッチみたいに承太郎に挟まれて、欲しいだけ快楽を与えられて、幸福な僕はどこまでもとろとろと溶けていってしまう。
「あ、はっ……も、で、でる……」
じょたろ、と訴えれば、二人の承太郎からいっぺんにキスをされた。
甘やかされ、どろどろに優しくされて、ぼくはわけもわからず叫び、精液をまき散らした。
「イキっぱなしで気持ちいいな、花京院……」
おれたちも気持ちいいぜ、と言われて嬉しくなる。
ぼくは犬みたいにはしゃぎながら、夢中になって承太郎を締め付けた。
「あ、あ、じょうたろ……もっと、ぼくできもちよくなって」
めちゃくちゃにして、と呟いた瞬間、本気のピストンが飛んでくる。
最奥をガンガン掘られて、ぼくは獣みたいな咆哮をあげながら、意識を失った。
気づけば、ぼくはベッドの上で二人の承太郎にぬいぐるみみたいに抱きかかえられていた。
汗と精液で汚れたはずの身体は綺麗になっていて、お気に入りのパジャマが着せられていた。
たまに無茶なことをやらかすけど、結局こういう承太郎のかいがいしいマメなところに、全部ほだされてしまうんだよなあ、とぼくは独り言ち、二人の承太郎に毛布をかけなおしてやって、再び眠りに落ちた。
おしまい