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※水○敬ランドパロディです。広い心で読んでください。

仕事を終え、夕食の買い物を済ませて郵便受けを覗くと、見慣れない封筒があった。ピンク地に小さなハートがびっしり並んだそれを破ると、中には名刺サイズのけばけばしい色をしたカードが二枚と、三つ折りになった便箋が入っている。

 

「承花ランド年間パスポート…?」

 

なんだこれ。そう言えば、一ヶ月くらい前に駅前でアンケートに答えた時、テーマパークのペアチケットが当たるかも、と言われたような気がするが、すっかり忘れていた。ぼくもパートナーである承太郎ももう41だし、テーマパークではしゃぐ年でもないが、せっかく当たったのだから、今度の休みに行ってみようか。まあ、夕飯の時に承太郎に相談しよう、と呑気に考えていたその時のぼくは、「承花ランド」が、『セックスへの罪悪感や嫌悪感を払拭し、生き物として本来の姿に立ち返って、まるで食事を楽しむようにみんなが安全で自由な性を楽しむことができる』ことをコンセプトとした、大人のための性の一大テーマパークであるなんて、思いもしなかったのだ。



 

「これ、アンケートの景品で当たったんだ。今度の日曜日に行ってみないかい」

 

豚肉のソテーを食べ終え、お茶を飲みながらのんびりニュースを見ている承太郎に、「承花ランド」の年間パスポートを見せると、彼は一瞬驚いた表情をし、しばらく固まった後に、随分と聞き取りにくい声でそうだな、と呟いた。

 

「新しくできたテーマパークのキャンペーンなのかなあ……どんなところなんだろう、承太郎は知ってる?」

「……ああまあ、宣伝しているのをテレビで見たことがある」

 

ぼそぼそと答える承太郎の様子は、今思えば確かに少しおかしかったが、久しぶりに承太郎とデートできることに浮かれていたぼくは、全く気づきもしなかった。



 

そうしてきたる日曜日、ぼくと承太郎は朝の早いうちから「承花ランド」行きの送迎バスに乗りこんだ。テーマパークへ向かうバスの中は、予想通り若いカップルが多かったが、中高生と思われるような客は全くおらず、ぼくが思ったよりも年齢層が高めであった。意外と高級志向のテーマパークなのかな、とぼくはぼんやり思った。

 

承太郎とおしゃべりしながら、20分ほどバスに揺られた後、ぼく達はとうとう大型テーマパーク「承花ランド」に辿り着いた。星とチェリーとハートのモチーフで飾られた、極彩色のゲートをくぐると、「空条承太郎」専用入口と、「花京院典明」専用入口に分かれて進むようになっている。

 

「え?『承太郎』と『花京院』は別のところから入るのかい?」

 

と隣の承太郎に問えば、入場前にアトラクションが使用可能かどうかの健康チェックと、専用衣装へ着替える必要があるのだと教えてくれた。彼はぼくが「承花ランド」を楽しめるように、随分前からガイドブックを読んで勉強していたようだ。ぼくは入口が別々であることに少し疑問を抱きながらも、あとで承太郎と待ち合わせることにして、一人で「花京院典明」専用入口に向かった。

 

ぼくはまず身分証を提示し、その後に身体診察を受けた。診察ではなぜか裸に剥かれ、下半身を重点的にチェックされた。この健康チェックに一体どういう意味があるのか、ぼくには全然理解できなかった。次に、パーク専用の衣装に着替えるように言われ、更衣室に案内された。そこには色々な衣装が用意されていたが、どれも布面積が極端に小さく、一体何を隠すのかというものばかりだった。仕方なく一番布が多そうな衣装を選んだが、なぜかズボンは完全に透けているし、尻の部分には大きなスリットがあり、用意されていた下着も紐みたいなものしかなかったので、ぼくの尻は完全に露出していた。上の服もシースルーであるため、一応布が上半身を覆っているものの、乳首から何から丸見えであった。

 

そこでぼくはようやく、この「承花ランド」が性的なテーマパークなんじゃあないかと、うすうす気づき始めた。今思えばたしかに、入口のスタッフの格好がみんなえっちだった。こんな破廉恥な場所に、自分から承太郎を誘ったことがとても恥ずかしい。ハーレムの踊り子みたいな衣装で、こそこそと出てきたぼくを、砂漠の王子様みたいな承太郎が出迎えてくれる。承太郎の服は割と布が多いので、ぼくはそれを不公平に思った。

 

普段なら絶対にしない格好で彼の前に立つのが恥ずかしくて、唇を噛んで俯くぼくを、承太郎は嬉しそうに見つめ、似合ってるぜと呟いた。そうして、向こうにお前が気に入りそうなアトラクションがあるから、とぼくの手を引く。

 

半ば引きずられるようにパークに入ると、エントランス横の茂みで二十歳そこそこくらいの「承太郎」と「花京院」がセックスしていた。犬みたいな格好で尻だけを高くした「花京院」に、「承太郎」が覆いかぶさって激しく腰を打ち付けている。「花京院」は気持ちよさそうにあんあん喘ぎ、「承太郎」はしこたま「花京院」に中出しし、溢れた精液が二人の脚を伝って地面に垂れていた。初めて生で見る他人のセックスにぼくはびっくりして、思わず隣の承太郎の腕を掴む。

 

「どうした」

 

と、なんでもないように尋ねてくる承太郎に、ぼくは信じられない気持ちでいっぱいだった。

 

「だって、あれ、え、えっちしてる……」

「ああ、ここは『承花ランド』だからな。あれが普通だ」

 

そう言って承太郎は、このテーマパークのコンセプトと、ここでは時間と場所を気にせずセックスしていいことを教えてくれる。

 

「お前もしたくなったら言ってくれ、オレもそうする」

 

と至極真面目な顔で、承太郎は言った。そこかしこから聞こえてくる肉のぶつかり合う音や、濡れた水音、甘ったるい嬌声に、ぼくの脳は段々麻痺してきた。ついでにさっきから精液の匂いが充満していて、こっちまでおかしな気持ちになってくる。

 

「そ、そうか、わかった……でもえっちするなら、もう少し静かなところがいい……」

 

何とかそう言うと、承太郎は優しく頷いてくれた。だからぼくはひどく安心しきって、彼に言われるがままパークの奥へと向かった。



 

承太郎に連れてこられたのは、ミラーハウスだった。ミラーという単語にぼくは何だか嫌な予感がしたが、入口のところに「初心者向け」と書かれているので、まあ大丈夫かな、とぼんやり思った。その上、承太郎にこのアトラクションが駄目なら、お前が体験できるアトラクションはほとんどなくなっちまうぞと言われたので、ぼくは覚悟を決めた。ミラーハウスには一人用の入口と、カップル用の入口があり、ぼくと承太郎はカップル用の方から入ることになった。一人用の入り口からは、キラキラした服を着た、金髪の「花京院」が入っていくところだった。

 

ミラーハウスに入った途端、ぼくは自分の選択をひどく後悔した。なぜなら、普通のミラーハウスと違って床まで鏡なのだ。一生懸命脚を閉じて歩くものの、衣装にスリットがあるせいで、ぼくの尻も性器も、全てが床に映っていた。承太郎はもじもじ歩くぼくを楽しそうに眺めながら、ゆっくりと後ろをついてくる。ぼくは鏡に映る景色に翻弄されつつ、早く脱出しようと歩き続けた。

 

時折行き止まりに当たったりして、随分と時間がかかったものの、しばらく進むと広いホールのようなところに出た。すると突然、承太郎がここでやろうぜととんでもないことを言い始める。

 

「ええっ、ここでするのかい……」

「……さっき、静かな所がいいって言っただろ」

 

ここならいいじゃあねーか、とギラギラ輝く緑の目で見つめられて、ぼくは言葉に詰まってしまう。確かに、ここなら静かかもしれないが、後ろからまた別のカップルが入ってくるかもしれない。なるべく早く終わらせてくれよ、と頼むと、それはお前次第だぜと返された。なのでぼくは仕方なく、四つん這いになると自分で尻を広げて彼を誘った。

 

「じょ、承太郎のおっきいおちんちん……ぼくのえっちなとろふわおしりおまんこに……奥までハメて、いっぱい種付けしてください……」

 

おずおずと尻を振って誘えば、承太郎は満足そうに笑って、ぼくに近づいてきた。若い時と全然変わらない、凶悪なまでに硬く、反り返った赤黒いペニスをぼくの尻に何度か擦り付け、入口で配られたでかでかと「承花ランド」と書かれたローションをたっぷり垂らすと、ゆっくりぼくの中に入り込んでくる。

 

「あ、あ……っ♡おっき……♡」

 

ずぬぬ、と慣れ親しんだ承太郎の性器に、粘膜を掻き分けられていく感覚に、ぼくは背筋を震わせて恍惚と溜息をついた。ぼくのアナルは、承太郎の熱く滾るペニスに嬉しそうに纏わりつくと、奥へ奥へと導くようにきゅうきゅう締め上げた。

 

「あ〰︎〰︎〰︎〰︎っ♡すごい、すごいっ♡じょうたろの、ちんぽ♡きもちい♡ずぽずぽ、きもちっ♡」

 

承太郎はぼくの粘膜が馴染むのも待たず、奔馬のように駆け出した。奥をこじ開けるように突かれて、ぐぷ、ぷちゅ、と激しいピストンでローションが泡立つ、いやらしい音が聴覚を犯す。ぼくはあまりの快楽に馬鹿になり、もっともっと、と恥も知らず彼を強請った。

 

「なあ、花京院……っ、お前がオレのを咥え込んでる所、よぉく見えるぜ……」

 

ほら、と促されて目を開けると、発情しきった獣のように、とろけた顔をした自分が鏡に映っていた。そうして、ぼくを後ろから犯す承太郎の姿も。あまりの卑猥な光景にくらくらとして、思わず視線を横に向けると、何枚もの鏡で複雑に反射したのだろう、ずっぽりと承太郎の太いペニスを咥えこむ、縦に割れてぷっくりと縁が膨らんだ、いやらしい自分の後孔が映っていた。

 

「ああっ♡あん、あっ♡やらっ、やらぁっ♡ぼくのおしり、おかしくなっちゃうよぉっ♡」

 

もうゆるして、と訴えれば、承太郎がにやりと笑ってぼくの尻を叩く。ぱぁん、と乾いた大きな音がして、思わずぎゅっとアナルを締めてしまった。

 

「オレが時間かけて、どこに出しても恥ずかしくない、立派なまんこに育てたんだ……だからお前は、ちゃあんと頑張らねえといけねえな……」

 

ほら、上手くできねえと中に出してやらねえぞ、と承太郎が意地悪を言うので、ぼくは必死になって腰を振らなければならなかった。承太郎の精子を求めて体をくねらせ、承太郎に育ててもらったおしりおまんこで、夢中になって彼のペニスを扱いた。

 

「あ、あっ♡ごめんなさいっ♡わがままいって、ごめんなさいぃっ♡ぼくの、じょうたろせんようまんこっ♡どろどろざーめんで、いっぱいおしおきしてくださいっ♡」

 

言ってるうちにどんどん興奮してきて、ぼくは前を触られてもいないのに、鏡に向かってびゅーびゅー射精していた。頭が真っ白になって、体を支えていられず鏡にすがりつく。

 

その瞬間、ぼくの指先が触れていた鏡が急に透明になった。透けたガラスの向こう側に、獣のように交わる「承太郎」と「花京院」がいる。びっくりして体を離すと、ガラスの向こう側にいる「花京院」と目が合った。若い「承太郎」にぼくと同じように後ろから激しく犯されている彼は、さっき一人用の入り口からミラーハウスに入っていった金髪の「花京院」だった。

 

「あっ♡ああ♡やらっ♡みえてる♡ぼくとじょうたろのえっち、みえちゃってるよぉっ♡」

 

そう言えば、電流を流すと鏡とガラスを一瞬で切り替えることができるフィルムが、最近開発されたと言うニュースを見たことがある。このミラーハウスの鏡は、ただの鏡ではなかったのだ。狼狽えて暴れるぼくを、承太郎は軽々と押さえつけると、繋がったままぼくを抱え上げ、ガラスの向こう側に見せつけるようにガンガン突き上げてきた。

 

「やぁぁあっ♡らめ♡そこらめぇっ♡すぐイっちゃうからぁっ♡」

「オラ、恥ずかしがってねえで、とっととイっちまえっ、ちゃあんとイキ顔見せてやれよ……っ」

 

ぐい、と承太郎の手がぼくの顎を捉え、ガラスの方を向かせる。すると向こう側のカップルも、立ちバックに体位を変えた。片脚を抱え上げているせいで、「承太郎」の赤黒いペニスをずっぽりと咥え込む、まだ使い込まれていない「花京院」の初々しいアナルが見えた。乱暴なくらいに後孔を嬲られてなお、金髪の「花京院」はぼくと同じように、とろとろに溶けた顔で、大きな口の端から唾液を零して身悶えている。

 

「ああっ、あっ♡おく、ぐりぐり、らめ♡あ、イク、またイク♡あ、あっ、あ〰︎〰︎〰︎〰︎っ♡」

 

向かいのカップルの激しいセックスを目の前で見せつけられながら、承太郎にぼくの弱いところを重点的に突かれ、限界がくる。甘い電流が身体中を駆け巡り、ガクガクと不規則に内腿が痙攣し、目の前で光が瞬く。ぼくのペニスは栓を失い、水のように薄い精液をとめどなく溢れさせた。同時に一際深く突かれた腹の奥で、承太郎のペニスが膨らみ、弾ける。脈打つ性器から放たれる、承太郎の遺伝子のあまりの熱さと量に、ぼくはただ身を震わせることしかできない。

 

「ああ……っ♡じょうたろうの、せーえき、あったかぁい……♡」

 

体の一番奥に精液を注がれる感覚に、うっとりと酔いしれていると、ガラスの向こうの「花京院」も同じように、恍惚と微笑んでいた。どうやら彼も、「承太郎」にたっぷり種付けをしてもらっている最中のようだ。「承太郎」が中に放った遺伝子を擦り付けようと、ゆっくり深いストロークで奥を突くたび、「花京院」はペニスから噴水のように精液を撒き散らして、全身で悦びを表していた。

 

すっかり承太郎専用の雌になったぼくと違って、金髪の「花京院」の体つきはまだ少し男らしさが残っていたし、乳首もアナルも慎ましやかであったが、抱かれる悦びを知ってしまった彼は、きっとこれから長い時間をかけて、ぼくのように体を作り変えられてしまうんだろう。金髪の「花京院」はすぐにまた年若い「承太郎」に体を貪られていたが、ぼくと目が合うと悪戯っぽくウインクをして、ひらひらと手を振った。すると再びガラスは鏡になり、ぼくの目の前には、金髪の「花京院」ではなく、絶頂の余韻に頰を上気させた自分の姿が現れた。

 

ぱちぱちと何度か瞬きをしてみても、やはり鏡は透けず、もう向こう側の様子はわからなかった。こんこんと鏡を叩くと、背後で承太郎が楽しそうに笑い出す。

 

「……まんまと君に騙されたよ。ミラーハウスじゃあなくて、悪趣味な覗き部屋じゃあないか」

 

むう、と頰を膨らませると、ぼくの機嫌を取ろうと承太郎がキスを仕掛けてくる。舌だけを絡ませ合い、互いの唾液を交換すると、また体に火が灯る。癖になったらどうしてくれるんだ、と文句を言えば、いくらでも付き合ってやると承太郎が嘯く。悔しくて絶倫の恋人の頰をつねるその時のぼくは、まさか自分たちがその年の「承花ランド」年間最多来場カップルとして表彰されることになるとは、まだ知る由もなかった。


 

おしまい

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