top of page

アイドルは一人のためにあらず――誰が言った言葉だったか、アイドルとファンの距離がぐっと近づいた現代において、アイドルの恋愛禁止はもはや常識となりつつある。

ファンの思い描く憧れの存在であり続けるために、アイドルは特定の誰かだけを愛してはいけない。

ファンに応援してもらう分、アイドルはファンの前では理想のアイドル像を演じ、期待に応えなければいけない。

他のアイドルはどう思っているか知らないが、少なくともぼくはそう考えていた。

だからぼくは特定の恋人は作らない、ぼくの恋人はぼくのファン全員である。

花京院典明パコパコバスツアー、これが今回のファンイベントのタイトルである。

年に一回だけ開催される、ぼくとぼくのファンクラブ会員がセックスするイベントである。

「次の方、どうぞー」

 

スタッフの呼びかけでぼくの前に現れたのは、このツアーに初めて参加するらしい承太郎だった。

顔を紅葉みたいに真っ赤にさせ、小刻みに手を震わせながらも、その中心は硬くそそりたって先端から既に蜜をこぼしている。

「か、花京院…」

緊張しているのか、彼はずっとぼくのファンだったこと、何回も応募してようやく今回チケットが手に入ったことを、途切れ途切れに説明してくれる。
初々しい様子の彼に、ぼくはいつもありがとうございます、とにっこり笑いかけた。

「今日はいっぱい楽しんでくださいね…」

くぱ、と尻たぶを広げて、ひくつくアナルを見せつけると、ごくりと喉を鳴らして承太郎が勢いよく覆いかぶさってきた。

ぼくはこういう余裕のないファンが大好きだ。

 

花京院、花京院、と承太郎はうわ言のように何度も呟きながら、ぐいぐいペニスを押し付けてくる。

アナルの上を濡れた亀頭で擦られるのも非常に気持ちいいが、ぼくの中は早くこの男の熱を受け入れたくて、疼いていた。

「あっ♡ちが、もっとしたっ♡はやく、ちんちん、ほしっ♡」

いれて、と耳元で囁いた瞬間、粘膜を掻き分けて承太郎がぼくの最奥を突き上げた。

ぼくは衝撃に獣のような咆哮をあげる。

「んおっ♡ひ、ひぐっ♡すご、こりぇ、すごいぃ…っ♡」

経験の少なそうな承太郎は、すぐにガンガンと遠慮なくぼくを突き上げてくる。

技巧も何もない、動物の交尾のような荒々しいセックスは、ぼくの骨組みを吹き飛ばす。

ぼくは彼の広い背に必死にしがみつき、爪先を震わせることしかできない。

「は、かきょ、かきょういんっ、ふっ、こし、とまんねえ…っ」

きもちいい、と承太郎が絞り出した言葉に、ぼくの中がきゅうと収縮する。

「あ、あんっ♡あっ、あっ♡ありがとっ♡ん、んんぅっ♡ぼくも、きもちっ♡」

ぼくは嬉しくなって、彼のペニスをもっと深く迎え入れようと腰を振りたくった。

恥も外聞もなく、脚を大きく開き、承太郎の唇を貪る。柔らかく濡れた舌の感触、上も下も粘膜を擦り合わせる悦楽に、否応無しに射精感が高まってくる。

「ん、んん――っ♡あ、あ〰︎〰︎っ♡らめ、らめっ♡いく…っ♡いっちゃうっ♡」

おしりでいきます、とぼくの唇は恥ずかしい台詞を勝手に紡いでいた。

ぐっと中に埋め込まれたペニスを締め付け、ぼくは背を丸めてビクビクと身体を痙攣させる。

「ぐっ……」

同時に息を詰めた承太郎が、ぼくの中で爆ぜるのがわかる。

最奥に精液を叩きつけられ、ぼくはまた絶頂の波を呼び起こされる。

「……っ♡は、ああっ……あついっ♡あ、あっ……またくるっ♡また、いきますっ……」

あ、あ、と意味をなさない喘ぎを繰り返し、ぼくは連続で精液を噴き上げた。

中出しされるだけで、我慢の効かない身体は簡単に絶頂に至る。

太ももが引きつり、目の裏で光が弾ける。おなかの奥の方から多幸感と痺れるような甘い毒が湧き上がり、ぼくを襲う。

「あ︎、ありあと…ございまひゅ…」

これからもずっと応援する、と承太郎はぼくの手を強く握った。

まだ息の荒い彼と記念写真を撮り、蕩けた笑顔でダブルピースする自分のポラロイド写真に、ぼくはサインしてあげた。

 

次に入ってきたのは、3年前から連続でこのツアーに参加してくれている大学講師の承太郎さんだった。

「じょうたろ、さん…」

今回も来て下さってありがとございます、というぼくの声は震えていた。

ぼくはこの承太郎さんとの行為がちょっと苦手だ。なぜかというと…

「久しぶりだな、花京院」

すぐに入れることはせず、前戯を楽しむように、あるいは挿入する深さを確かめるように、ぼくの腹の上をなぞる彼のペニスには、ぼこぼこと歪な凹凸がある。

聞いた話によると、やんちゃをしていた時に若気の至りで真珠を入れたらしい。

「あ、あの…その、ゆ、ゆっくりおねがいしま、ひぎぃぃっ」

ぼくの戸惑いなど完全に無視して、長大なペニスが一息に押し込まれる。

ずん、と奥を突かれた時、ぼくは背を仰け反らせて射精していた。

「〰︎〰︎〰︎〰︎っ♡」

びゅく、びゅく、と粘ついた白濁を吐き出しながら、ぼくは音のない声をあげた。

四肢は電気を流したようにぴん、と引き攣り、自分の鼓動が頭の中でやけに大きく聞こえる。

「はぁっ……」

承太郎さんは恍惚とため息をつくと、何度も犯したぼくの孔を確かめるように、その突起でごりごりと内壁を擦りはじめた。

「あぁぁあぁ〰︎〰︎っ♡らめ、それ、らめぇっ…やだ、こわれる、や〰︎〰︎っ♡」

ゆっくり奥まで突き入れたかと思うと、浅いところでぬぷぬぷと焦らしてみたり、前立腺の膨らみばかり集中的に責め立てたり、ぼくの内部を知り尽くした承太郎さんは、完全に遊んでいる。

「あったかくて、きもちいいな…花京院…」

ふっ、とからかうように耳元に息を吹きかけられ、びくんと体が跳ねる。

ぼくは口の端から唾液を零し、へこへこと腰を振った。

「うん、うんっ…きもちっ♡このちんちん、すき…」

こつ、こつ、とオナニーするみたいに、彼のペニスの出っ張ったところを自分の好きなところに当てて悶えていると、承太郎さんがぼくの腰を鷲掴んで動きを止めさせた。

見上げれば、キラキラ光るグリーンの瞳が妖しくゆらめいている。

「おい、自分ばっかり気持ちよくなってたらダメじゃあねえか」

ファンにはサービスしねえとな、と体の芯に響く低い声で囁かれて、息を呑む。

思わずぎゅう、と承太郎さんのペニスを締め付けると、ものすごい力で身体を引き寄せられた。

「ひぎ……っ♡」

ごりゅ、と承太郎さんのペニスがぼくの奥をこじ開け、入ってはいけない部分まで亀頭が押し入ってくる。

目の裏で光が弾け、背筋が慄く。

ぼくのペニスは栓を失ったように水のような液体を漏らしていた。

 

「あ、が……っ」

 

承太郎さんはそのまま激しく腰を打ち付け、ぼくを追い立てる。

はくはくと魚みたいに口を戦慄かせ、ぼくはされるがまま、奔馬のようなピストンを受け入れるしかない。

「あ、ああ、あっ♡あ、あ、あ……」

「はあ…すげえ、かきょういん…」

うっとりと呟く承太郎さんが、感極まったようにキスしてくる。

ぼくはその熱く濡れた舌を受け入れながら、快楽の嵐に巻き込まれ、粉々にされ、ただの生命の塊になる。

「あ、あ、ああ…あ、あっ♡」

一際深く腰を打ち付けられ、中で承太郎さんのペニスが脈打つ。

ドロドロとした熱いマグマを再奥に注がれる。

朦朧としながらも、自分を犯した男に礼を言い、ポラロイドに向かってぼくは笑顔を見せる。

「また、きてくらひゃい…」

頑張れよ、と承太郎さんが離れていくと、入れ替わりに次のファンがくる。

脚を抱え上げられ、立ったままの承太郎の上にぼくは腰を落とす。

気持ちいい。しがみつき、喘ぎ、ぼくはもう精液も出せずに絶頂を迎える。

また中に注がれ、写真を撮る。

「あ、あっ♡」

次は四つん這いになって、後ろから貫かれる。

背中に覆いかぶさった承太郎の重みと、荒い息遣いに興奮を呼び起こされる。

獣だ、とぼくは思う。ぼくは原始のいきものになり、ただひたすら承太郎たちの愛と欲を受け入れる器になる。

また相手が変わり、 ぼくは脚を開き、交尾を強請る。

 

尽きることのない快楽に、ぼくは溺れ続けた。

 


目を覚ますと、マネージャーの承太郎がふくらはぎを優しく揉んでくれていた。

「起きたか」

 

お疲れ様、という彼にぼくは首をひねってキスをする。ふんわりとした承太郎の唇は、砂糖菓子みたいだった。

「…頑張ったぼくに、ご褒美は?」

営業用のスマイルを向けると、苦笑した彼がぼくの身体を引き寄せる。

腰に当たった承太郎の中心は、既に硬く膨らんでいた。

 

ぼくは機嫌をよくして、ズボンのジッパーを勝手に下ろし、彼のペニスを愛撫する。

先端がプラムのように熟れたそれは、ぼくの手によく馴染んだ。

「乗っていい?」

と聞けば、こくりと彼が頷く。

承太郎はやさしい。

 

ぼくはゆっくり腰を沈め、根元まで彼のペニスを飲み込むと、ほう、と息を吐いた。

彼とするセックスは、興奮するというより、なんだか落ち着くのだ。

マッサージみたい、とぼくは思う。

承太郎はぼくの動きにあわせて、焦らしたりはせずに、好きなところを擦ってくれる。

あたたかな湯に浸かったような安心感に、とろりと身体が溶けていく。

好きな時に出していいぞ、と言われ、うん、とぼくは緩慢に返事をする。

目を閉じると、身体の底からやさしい快楽が滲んできて、イクと小さく呟いた時にはもう精液が溢れていた。

 

「あ…」

ぶる、と身体を震わせると、ぼくの身体から彼が出て行く。名残惜しく見上げれば、優しく微笑まれた。

 

「もう寝ちまえ」

 

ほら、と毛布をかける彼に、君がいってないだろ、と抗議してみるが、今度でいいと彼は笑う。

 

「側に居られるだけで満足だ」

おれは一番贅沢なお前のファンだぜ、という彼に、ぼくは敵わないと諦めて、そっと目を閉じる。

眠りに落ちる瞬間、彼が優しく頭を撫でた気がして、ぼくは思わず微笑んだ。

おしまい

bottom of page