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ああ、気持ちいい。

ゆっくりと承太郎に体を揺すられて、ぼくは次々に生まれくる快楽に身を任せ、そっと目を閉じた。

 

どうして承太郎に抱かれるのは、こんなふうに脳がぐずぐずになるほど、体がふわふわと浮いてしまうほど、途方もなく気持ちいいんだろう。

温かいお湯につかったように、じんわりと体が内側から熱を帯びる。頭の先から爪先まで、全身がすっぽりと彼の愛に包まれる。

 

時折、狙ったように承太郎がぼくの弱いところを擦りあげると、思わず高い声が上がる。彼は優秀な演奏家となり、ぼくは彼の長年馴染んだ愛用の楽器になる。

 

強く、弱く、緩急をつけて、ぼくの様子を伺いながら彼は腰を動かす。そうされると切なく下腹が疼き、もっともっとと貪欲な体は彼を求めて絡みついた。

 

「あっ……すごい、そこ、好き……」

 

奥のあたりをトントン、とノックでもされるように突かれると、身震いがする。ぞぞ、と背骨を快楽が駆け上がり、シャンパンの泡みたいに、目の前で光の粒がパチパチと弾ける。

 

気持ちいい、と素直に恋人に伝えると、彼はほんの少し律動を緩め、子供みたいにそりゃあ良かった、と笑う。

君はどうなんだい、と首に腕を回して問えば、ずっとこうしていたいくらい、気持ちいいぜ、と熱っぽく答えてくれるから、ぼくはもうすっかり嬉しくなって、彼の下腹に尻を擦り付けるように、淫らに腰をくねらせた。

 

すると承太郎が困ったように眉をしかめ、くぐもった呻きをあげる。

 

「おい、あんまり煽るな……イっちまいそうになる……」

 

はあ、と熱い息をこぼす彼の、グリーンの目は蜜蝋のようにとろりとしている。

潤んでキラキラと光るその瞳は、この上もなく美しかった。

 

「いいよ……何回でも、好きなだけぼくの中に出せばいい……」

 

ぼくのお腹がいっぱいになるくらい、飲み込みきれずに溢れるくらい、精液を注いでほしい。

白く濁ったいやらしい体液に、溺れさせてほしい。

 

ぼくも、さっきからイきそうなんだ、とひそひそ囁くと、承太郎の耳がじんわりと紅葉みたいに赤くなる。

それでぼくは、自分がなんだかとても恥ずかしいことを言ってしまったと気づいて、思わず両手で顔を覆った。

 

「待ってくれ、今のは無し……おねがいだ、忘れてくれ……って、う、あっ」

 

ぐぐ、と急にぼくの中で承太郎のペニスが大きくなり、彼がばつん、と腰を打ち付けてくる。

奥の奥まで彼が入り込んできて、内臓が押し上げられて苦しい。しかしそれ以上に、眩暈がするほどの喜悦が襲ってきて、内腿がぶるぶると震えた。

 

「あ、ああっ、だめ、激しい……っ、まって、とまって……っ」

 

頭を振って制止を求めても、恋人は聞く耳を持たず、ぼくをどんどん追い詰めていく。脚が彼の肩につくほど体を折り曲げられ、腰を鷲掴まれ、何度も何度も熱い楔を穿たれる。

 

「今のは、完全に、おめーが悪いぜっ、花京院……っ」

 

ぐちゅぐちゅ、と濡れた卑猥な音が結合部からひっきりなしに聞こえてきて、たまらず目を瞑る。ぼくは必死に快楽を逃がそうと身を捩るけれど、彼はそれを許さずスパートをかけてくる。

 

「ああっ、じょうたろ、ゆるして、もぅ……っ、あ、あ、ああんっ」

 

少しも体の自由がきかない。彼に揺すられるまま、髪を振り乱し、悶え、獣のような叫びをあげる。

腹につくほど反り返ったペニスが、どくどくと脈打って解放を望んでいる。ぼくの中で、承太郎の性器が滑り、じゅぽじゅぽと耳を塞ぎたくなるような、いやらしい音がする。

彼に抱かれて、悦びで体の芯が震えている。どこにも快楽の逃げ場がなく、膨れ上がった喜悦で体がバラバラにちぎれ飛んでしまう。

 

「じょうたろっ、ひっ、ひんっ、もう、イク、イクっ、ああ、あ、ああっ」

 

どくん、と心臓が跳ねて、間髪入れずにガクガクと体が痙攣する。限界まで張り詰めたぼくのペニスが弾け、胸まで白濁が飛び散る。

同時に息を詰めた承太郎が、ぼくの腰を押さえつけ、ペニスを根元まで突き入れた。

びくびく、と中で彼のペニスが脈打ち、奥に熱い奔流が勢いよく打ち付けられ、ぼくはその熱に狼狽えた。

 

「あ、ああっ……承太郎の、精子……中に、出てる……っ」

 

散々擦られて、ぷっくりと淫らに膨らんだ後孔は、放たれた熱を一滴も零すまいとでもするように、うまそうに承太郎のペニスに吸い付き、絞り上げ、悦びにヒクついていた。

びゅーっ、びゅーっと未だ断続的に続く承太郎の射精が終わるまで、ぼくはじっと動かないで、大人しく待つしかない。この瞬間はいつも、彼に種付けをされているみたいで、承太郎の雌にされる被虐的な悦びにぶるるっと体が震える。

 

絶頂の余韻に痺れた体を、ぐったりとベッドに沈めると、彼も満足げなため息をついてぼくの上にのしかかってきた。

 

「重いよ」

 

そう文句を言うと、彼はぼくを抱き込んでベッドの上をごろごろ転がり、二人の上下を逆転させる。

しっとりと汗ばんだ彼の体の上で、ゆるゆると全身の力を抜くとひどく心地よくて、ぼくはうっとりと目を閉じた。承太郎の匂いがする。

 

気持ちよかったけど、もう少しゆっくり、優しくしてくれよ、と希望を伝えると、しばしの沈黙の後に、承太郎がもごもごと善処する、とかなんとか言っている。

今までも毎回そう言って、一度も善処してくれてことなどないけれど、すっかり承太郎に骨抜きにされているぼくが、いつものように頼むよ、と返すころには、もう全てを許してしまっている。

 

他の人から見たら、恐ろしい獣のような承太郎も、ぼくにすれば大きなクマのぬいぐるみとそう違わない。

ぼくはぐりぐりと彼の胸に顔を埋め、そしてすぐに子供みたいに安心しきって、すやすやと眠りの世界へ旅立ったのだった。

 

おしまい

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