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漠然とした不安が、いつも心の奥底に澱んでいる。

 

いつか承太郎が僕に愛想をつかしてしまうのではないか、明日になればこの家から出ていってしまうのではないか…

彼がどれほど愛の言葉を僕に囁いても、溶けるほどに抱かれても、ふとした折に触れ、そういった嫌な考えが僕を支配して苦しい。

 

お互いの左手に輝く指輪だけでは満足できずに、僕はいつもセックスの時に承太郎を縛らずにはいられない。

自分でも馬鹿なことだと思うのに、どうしてもやめられないのだ。

 

 

 

鍛え上げられた肉体を、僕は手慣れた様子で椅子にくくりつけていく。

承太郎の雄々しい体が、縄目によって装飾され目に美しい。

なるべく痕を残さぬよう、また血流を妨げぬように、細心の注意をはらって縛り上げる僕を、承太郎は好きにさせていた。

 

承太郎は僕の不安が、言葉や態度で拭いされないことを悟ると、セックスのときに彼を拘束することを許すようになった。

 

承太郎のスタンドを持ってすればなんてことのない縄でも、彼を束縛できている気がして、僕の心は幾分か安らぐ。

少なくともこの瞬間だけは、承太郎は僕のものだ。

 

動けない彼に頬ずりすると、承太郎は懸命に首を伸ばしてキスをねだった。

唇を触れあわさずに、舌だけを絡めるキスをかわすと、くちゅりと濡れた音が響き、唾液が伝った。

 

何もできない彼を好き勝手に愛撫すると、彼が快楽に耐えいるように睫毛を震わせ、僕はその姿に堪らなく興奮する。

 

くるくると臍の辺りで指を遊ばせていると、じわじわと彼の性器が膨らんでくる。

腕を縛られているせいで、承太郎はそこを隠すこともできず、時折ぴくりと震える彼の性器は、僕の目の前に無防備にさらされている。

 

ぬるい刺激に「花京院」と承太郎が焦れたように、僕の名前を呼ぶ。

その余裕のない声色に、いつも彼を受け入れている場所がひくんと疼くのがわかった。

 

だが、この甘美な時間を終わらせるのが惜しくて、僕はすぐに挿入せずに彼の屹立したぺニスを口に含んだ。

 

熱い粘膜が口腔に招かれた瞬間、承太郎が白い喉をさらけ出して体を大きく反らせる。

唾液を絡めて、わざといやらしい音を立てながら、承太郎の雄を舐めしゃぶる。

僕の人より大きな口を持ってしても、いつも顎がだるくなってしまうが、快楽に染まった承太郎の顔を見ながらするこの行為が、僕は嫌いではなかった。

 

裏筋を舐めあげたり、先端を吸い上げたり、あるいは時折唇で優しくキスを落とすと、承太郎は歯をくいしばって荒い息を零した。

僕はまだ服も脱いでいないのに、全裸の承太郎が勃起したぺニスをさらして、椅子に縛り付けられているのは堪らなくエロティックだ。

 

大好きなチェリーを舐めるように、恍惚としながら僕が彼のぺニスを舌で遊ばせていると、承太郎が腹筋を震えさせながら、なんとか射精をこらえているのがわかる。

僕に翻弄されている彼に、いまだ理性が残っているのがなんだか気に入らずに、僕は見せつけるようにゆっくりと、彼を喉の奥まで導いた。

 

息苦しさでえづきそうになりながらも、精液を絞りとるように頭を動かすと、頭上から噛み殺したような喘ぎ声がする。

僕の手を置いている承太郎の太ももがひきつれるように痙攣し、彼が切羽詰まった声で、口を離してくれと懇願した。

 

僕はそれには構わずに、逆にしっかりと彼をくわえこみ、ひくつく先端を吸い上げると、低い呻きとともに喉の奥に青臭い味が広がった。

何度かにわけて嚥下すると、精液独特の苦味に思わず顔をしかめていたらしい。

承太郎がバツが悪そうに僕を見つめていた。

 

「…苦えだろ、無理すんな」

「いや、僕が好きでしてるんだ…君が気にすることはないよ」

 

一滴たりとも残さぬように、念入りに承太郎の精液を舐めとると、また彼の雄は頭をもたげ始めていた。

僕の口で感じてくれたのが嬉しくて、まだ彼をかわいがってあげたいのは山々だったが、口淫している間にズボンの中で張りつめた僕自身もそろそろ限界で、僕はローションを取り出すと、たらたらと承太郎のペニスにかけた。

 

高いところから液体をかけられる刺激に、承太郎は目を瞑って耐えている。

その様子がなんだか愛しくて、僕はぐちゅぐちゅと音を立てて彼を扱きあげた。

 

「じょうたろ…ねえ、僕の手…気持ちいい?」

 

うっとりと微笑みながら、そう話しかけると、彼はギラギラとした瞳で僕を睨み付けた。

 

「花京院…もう、いれさせろっ…」

 

早く僕にいれたくて堪らないといった様子の承太郎は、僕の尻にペニスを擦り付けて少しでも刺激を得ようと不自由な体を動かした。

僕はなんだか意地悪をしたくなって、どうしようかなと呟きながら承太郎から体を離し、彼のペニスの先端を指で弄んだ。

 

誰もが魅了されてやまない空条承太郎が、最強のスタンド使いである彼が、四肢を拘束されてなお狂おしげに僕を欲するこの瞬間だけ、僕は心から満たされる。

 

彼の体に触れるか触れないか、ギリギリのラインで焦らすように刺激を与えながら、見せつけるように服を脱いでいく。

先走りで濡れた下着をゆっくりと取りさると、彼の喉がこくりと上下する。

 

ふと思いついて、僕のペニスからこぼれる滴を、指で承太郎の裸体になすりつけていく。

その軌跡が淫靡にてらてらと光り、僕は目を細めた。

 

「承太郎の体って、やらしいよね…」

 

つつ、と指を下に向かわせ、彼の怒張したペニスを優しくなでる。

 

「こんな大きいのいれたら、僕死んじゃうかも…」

 

承太郎を欲して切なく後ろが疼き、僕は空いているほうの手でそこを慰めながら、くすくす笑った。

おあずけを食らった承太郎はぎりぎりと歯を食いしばり、僕に噛みつかんばかりだ。

その射抜くような視線にゾクゾクと背筋を快感が這い上る。

 

ああ、なんて気持ちいいんだろう、と思った瞬間、僕は床に倒れていた。

 

「!?」

 

突然のことに頭が追い付かず、顔を上げるとそこにはにやりと笑う承太郎の顔があった。

 

「まさか、君、スタンドを…っ―――――!!!」

 

椅子に縛り付けられたままの承太郎が、ずくりとその雄を突きたてて、僕は声にならない叫びをあげた。

 

「ふっ…きっつ…」

 

承太郎は恍惚とした表情で、ガツガツと腰を打ちつける。

あまりの衝撃に、僕は揺さぶられるままに嬌声を上げることしかできない。

腕も足も椅子に拘束された彼は、僕に覆いかぶさって獣のように突きあげてくる。

 

「うああっ、ああっ、やだっ…じょ、たろ、こんなの、ひ、ひきょうだぞっ…んんっ、んああっ」

「はっ…花京院、花京院…すげえいい、お前の中…」

 

承太郎がかすれた声で僕の耳に囁くと、恥ずかしくてぎゅうと彼を締めつけてしまう。

彼の低い声が僕の名前を呼ぶたびに、歓喜で僕の腰は震えた。

 

「ばかっ…僕が、僕がしたかったのに…っ、ああっ、ずるい、あっ、おかしくなる…」

 

全身がしびれて、体が少しも自分の言うことを聞かない。

承太郎の太い首に腕を回し、夢中で歯のぶつかる下手くそなキスをする。

 

椅子を背負ったままの承太郎は、ただただ貪るように僕の奥を穿った。

彼の形に体を作りかえられそうな、恐怖と喜びが混じり合った快楽に、僕は粉々に吹き飛ばされてしまう。

 

きもちいい、あつい、くるしい、とける、きもちいい、すき、すき、きもちいい、すき。

息もできないほどに愛されて、僕の頭は酸素不足で短い言葉だけがぐるぐるとまわる。

 

それしか言葉を知らないように、承太郎の名前を何度も呼び、そしてそれに答える彼の「あいしてる」という言葉を、僕はとろけた脳で意味が擦り切れるほどリピートした。

僕の中の承太郎が脈打ち、体の奥に欲望を流し込まれるのを感じると同時に、どっと熱い毒のような快楽が全身に波及して、はくはくと口を魚のように動かしながら、僕は果てた。

 

 

 

何100mも全力で走ったような疲労に包まれて、僕はぐったりと力を抜いた。

僕に椅子ごと体を預ける承太郎も、荒い息をこぼしながら体を震わせている。

 

よくもまあ、四肢を縛り付けられたまま、僕をめちゃくちゃに犯せたものだな、と僕はなんだか感心してしまう。

ハイエロファントを呼び出して、スタンドと自分の腕で承太郎の体を強く抱きしめながら、僕はこの時間が永遠に続けばいいのに、と思った。

 

おしまい

 

 

 

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