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注意書き 

 

久しぶりに下妻物語を見たら、ロリータ服の花京院いいなと思って書いたものの番外編です。
 

 

 

 

 

「うっ…」

 

美しくないうめき声をあげて、僕はバタリとテーブルに突っ伏した。

Star Platinumの冬の新作、タロットをモチーフにした一連のドレスを世に送り出すため、僕は連日徹夜を繰り返していた。

 

しかしとうとう、僕は昨晩から続いていた、シリーズ最後の1着、「法皇」と名付けられた、光沢のある緑の生地を使ったクラシカルなドレスに、鬼のような数のパールを縫い付けるという作業を終わらせたのだ。

やったー!!!!

 

つややかな真珠の見た目とは異なり、この作業は苦行以外の何者でもなかった。

肩はこるわ、目は痛いわで、僕の気力は限界に達していた。

本来ならば、こういった地道な作業は他人に任せてしまうのだが、ブランドの威信をかけたこのシリーズを失敗させるわけにはいかず、僕は無理を言って縫製の全工程を一人で行っていた。

 

どんなに頑張っても、丁寧に縫って仕上げるとなると、1日1着が限界で、つまりこのシリーズの全作品に1ヶ月近くの時間を費やしたことになる。

その間、僕は恋人であり上司でもある承太郎と、ほとんど会わず、会っても死んだような目で生存を確認するだけだった。

 

ううっ、承太郎に会いたい…早く会って、完成を伝えたい…

 

僕は、作業着にしていたために汗ばんでしまった、スカート部分が三段ティアードになっており、超絶にかわいいStar Platinumの白い七分袖のワンピースを脱ぎ、白いバラの造花がついたヘッドドレスを外すと、よろけながら半日ぶりに作業部屋を出てシャワーを浴びた。

 

心地よい温水を浴びると、溜まった疲れもゆるゆるとほどけていくようだ。

乙女に似合わないという理由で、湿布も使わず我慢していたので、温かいシャワーが体にしみわたる。

 

僕はちょっと考えてから、シャワー室のすみに隠れるようにして置いてあるローションを手に取った。

承太郎もゾンビのようになっているだろうが、その、一応、ま、万が一のために準備しておいた方がいいだろう…

 

1ヶ月ぶりに異物を受け入れる後孔は、初めてのときのようにきつくなっていた。

羞恥心に負けそうになりながら、ゆっくりとそこをほぐす。承太郎に仕込まれた体は、すぐに快感を拾い、触れられないままにゆるく中心は勃ち上がっていた。

 

(ふあ…きもち…)

 

とろとろと思考は溶けつつあったが、ドレスの完成を今か今かと待っている承太郎のことを思うと、一人エッチにふけっている場合ではなかった。

 

僕はなんとか勃起を収め、シャワールームからでると、完璧なロリータになりてえなら、下着もちゃんとしないとな、と言って承太郎が洋服に合わせて買ってくれた下着を身につけた。

ロリータは僕の魂が求める衣装なので、身に纏っても全く恥ずかしくないのに、レースとリボンがそこかしこにあしらわれた女性もののショーツを穿くのは、何故だかとても恥ずかしい。

僕は顔を紅潮させながらも、なんとかその過程をクリアした。

 

それからピンタックのたくさん入ったドロワーズと、ソフトチュールで作られたパニエを仕込み、僕は童話の赤ずきんの挿絵が全体にプリントされた、裾から花模様のレースがちらりと覗くスカートを膨らませた。

上には生成色の、姫袖のブラウスをあわせ、緋色の別珍生地に、ピンクのリボンを通した梯子レースをあしらった、フード付きのケープをはおる。

最後にキノコの模様のついた靴下とチョコレート色のストラップシューズを履くと、僕は完璧なロリータ赤ずきんちゃんとなったのだった。

 

完成したばかりの、「法皇」のドレスを纏ったディスプレイ用のボディを持って、僕は承太郎の仕事部屋へと向かった。

社長兼デザイナーの彼は、おそらく新作発表会の準備に追われている筈だった。

 

ノックをしてそっとドアを開くと、Star Platinumのデザイン画とファッションショーの書類の山に埋もれるような格好で承太郎が机に倒れている。

床には栄養ドリンクの空き瓶が転がり、部屋は雑然としていた。

ひどい有様である。

 

物を踏まないようにそっと承太郎に歩みより、名前を呼ぶと、ゆっくり彼の目が開かれた。

隈が浮かんではいるが、長い睫毛にふちどられた、僕の大好きなエメラルドの瞳があらわれる。

 

「花京…院…」

 

承太郎は寝ぼけているのか、体を伸ばしてぐいと僕を引き寄せると、胸元に顔を埋めた。

思いきり匂いを嗅がれて、僕は赤面した。

 

「承太郎、承太郎。くすぐったいよ」

 

引きはなそうとしても、承太郎はますます僕を強く抱きしめ、顔をぐりぐりと擦り付けてきた。

 

「久しぶりなんだ…黙って抱かせろ…」

 

彼は着たばかりの、僕のブラウスのボタンをプチプチと外し始めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。やっと最後の法皇のドレスができたんだ。まず、そっちを見てくれ」

 

僕はあわててボディを彼の前に差し出した。

承太郎はぶすくれながらも、ドレスを目の前にすると急に仕事の顔になって、縫製をチェックしはじめた。

 

緑色のつややかな生地をベースに、胸元には幾重にも重ねられたトーションレースをあしらい、袖にはたっぷりとギャザーをよせて、丸い可愛らしいシルエットにした。

スカート部分は劇場の緞帳のように、重々しくも麗しいドレープを形作り、そしてなんといっても僕の魂をこめて縫いつけた、大小様々な無数のパールがそこに美しい模様を織りなしていた。

 

承太郎は真剣な目で、まずドレスの正面を見、ぐるりと回り込んで後ろを確認し、それからスカートの真珠の一粒一粒を、感嘆のため息をつきながらうっとりと見つめた。

 

「最高だ…」

 

大きく手を広げて、僕をぎゅうと抱きしめると、承太郎は熱っぽく僕の耳にささやいた。

 

「そうだろ、このスカートのライン出すのがすごく大変で…」

 

承太郎に褒められたのが嬉しくて、僕が興奮気味に解説すると、彼はやわらかく笑った。

 

「ドレスもそうだが、俺が最高だと思ったのは、おめーだぜ花京院。俺の頭にあるイメージが、完璧に再現されてる」

 

そう言って、承太郎は僕の額にちゅ、とキスを落とした。

ふっくらとした承太郎の唇が触れた部分が、じわと熱を帯びる。

下腹に響く、甘さを含んだ低い声を耳に吹き込まれると、うまく立っていられない。

 

「いつもありがとな」

 

寝起きだからか、常よりも素直で飾らない承太郎の言葉に、心臓がきゅうと締めつけられるような感覚になる。

キスの雨が段々と僕の体を下がっていって、中途半端に肌蹴たブラウスからのぞく胸へと降ってくると、僕はうろたえた。

 

「ちょ、ちょっと、じょうたろ、やっ…」

 

承太郎は手元も見ずに、キスをしながら器用に残ったボタンをはずしていく。久しぶりの愛撫に僕の体はがくがくと震えだした。

 

「嫌じゃねーだろ」

 

承太郎の大きな手が、するりとブラウスの下に滑り込む。薄い胸をやわらかく揉まれ、僕は鼻にかかった声をあげた。

 

「ああっ、あああっ…やだぁ…だって、な、なんだか承太郎に揉まれてから、胸がおっきくなった気がする…」

 

僕は涙目になりながら、承太郎の体を引き離そうともがいた。承太郎はそんな僕の抵抗などものともしない。

 

「じゃ見せてみろ」

「えっ」

「よく見ないと、大きくなったかわからん」

 

ほれ、と承太郎に促されて、僕は震える手でブラウスを左右に開いた。

白く平坦な胸だが、彼に揉まれ続けた部分が、うっすらと盛り上がっているような気がする。

 

「ど、どうかな」

 

承太郎は無言で、僕の胸の薄い脂肪とその下の筋肉の手触りを確かめている。

むにむにと揉まれ、形を変える胸が嫌でも目に入ってきて、恥ずかしい。

 

「最近、その、ち、乳首も、ピンク色が濃くなった気がする…」

 

僕が真っ赤になって訴えると、そうかと言って承太郎は僕の乳首を指で転がし始めた。

びりびりと甘い電流が流れ、下半身に重く熱が溜まり始める。

乳首の先端を掠めるように、すばやく指を動かされ、その気持ち良さに喘げば、今度は爪をたてられ、僕は小さな悲鳴をあげた。

すると一転して優しくいたわるようになでられ、僕は交互に与えられる快楽と痛みに混乱した。

放っておかれたままの、僕のぺニスは鎌首をもたげ、切ない疼きに耐え兼ねて、僕はもじもじと太ももを擦りあわせた。

 

「もっと調べてみねーとわからねーな」

「えっ」

 

嫌な予感がして、もういい、と言おうとした途端、承太郎が僕の胸にしゃぶりついた。

 

「ああっ、ああ、あ、ぅあッ…じょ、じょたろっ、やだっ、吸っちゃやだっ」

 

承太郎が、じゅっと音を立てて強く胸を吸いあげる。

承太郎の口内の濡れて熱い感触が、敏感な乳首から伝わってきて、僕はぶるぶる震えた。

舌で乳首を弄ばれ、歯で甘噛みされ、僕は逃げ場のない快楽を頭を振ってやりすごそうとするが、全くうまくいかない。

 

「ひゃんほはへへひはいほはははへー」

「んああっ、っぅあっ…あああっ…く、口に、ひぃっ、くわえたままっ、しゃべっちゃ、だめぇ…」

 

普通の人より随分と体の大きな承太郎が、まるで赤ん坊のように僕の胸を吸っている、その倒錯的な光景に僕は目眩がした。

 

「は、ぁっあ、…もっ、もうやだっ、じょたろ、下も、下も触って…」

 

僕はなりふり構わず、勃起したぺニスを承太郎の体に擦り付けた。

承太郎は意地悪くにやりと笑うと、ここか?と言って僕のお臍の辺りで、くるくると円を描くように指を動かした。

 

「ちがっ、ちがう、そこじゃないっ…」

 

僕は涙を流しながら、ヒステリックに叫んだ。承太郎の手をとり、ドロワーズの中に導く。

 

「じょうたろ、ぼ、僕の、おちんちん、触って…じんじんして、熱い…」

 

早く、と懇願すると、彼の手がショーツの中で苦しそうに勃ちあがっている僕のペニスをつかみ、上下に扱きあげる。

瞼の裏がスパークするような強烈な快楽が襲い、待ち望んだ刺激に僕はあさましく腰を振った。

 

「ふあぁっ、ん、う…っ……う、ああ、あ、ぅあッ…あああっ…」

「すげえな…」

 

承太郎の喉がごくりと動き、彼の愛撫に邪魔な下着が乱暴に取り払われる。

彼にスカートとパニエをたくしあげるように言われて、その通りにすると承太郎の手が僕の尻に伸ばされた。

 

ローションで念入りに準備しておいたそこは、少し力を入れただけの承太郎の指をするりと飲み込む。

その様子を見て彼はにやりと笑った。

 

「尻で自慰してたのか?」

「あッ…ち、ちがっ…」

 

怒らねえから正直に言ってみろ、と承太郎に促される。

彼の熱っぽい緑色の瞳に見つめられて、僕の脳は完全に思考を放棄してしまう。

自分でも何を言っているかわからないまま、僕の口は勝手にぺらぺらと言葉を紡いだ。

 

「ひぁっ…あっ…じょ、じょうたろと、久しぶりに、そ、その、するのかなって、ふああっ…ぁっ…んっ、んん、だから、さ、さっき自分で、慣らした…けど、オナニーは、あッ…してないっ…ほんとに…あっああっ、も、もうイくっ、あああっ」

 

僕は尻に入れられた承太郎の指をぎゅうと締めつけながら、全身を戦慄かせて、精を放った。

びゅくびゅくと勢いよく吐きだされた白濁が、承太郎の手を濡らす。

 

甘いしびれがいつまでも下腹のあたりで渦巻いていて、僕はくたりと承太郎にしなだれかかった。

はあはあと荒い息を整えていると、承太郎の指が引き抜かれて、代わりにもっと熱く硬いものが押しあてられる。

 

「あ…」

 

僕が期待に身を震わせると、いくぞ、と承太郎が欲望をにじませた低い声で、僕の耳元に囁いた。

ゆっくりと、椅子に座った承太郎の上に腰を下ろされる。

やわらかくとろけた僕のアナルは、ローションの滑りを借りて承太郎を飲み込んでいく。

 

「んんっ、じょたろの…ぁ熱いの…がぁ…ふぁ……はいって、きてるっ…」

 

承太郎はその太い眉を困ったようにしかめながら、僕の肩に顔をうずめた。

がっしりとした承太郎の手に腰を掴まれて上下に揺さぶられると、体内を擦られる感覚に、僕は思わず中にいる彼を締めつけた。

 

「っは、きっつ…花京院、力抜けっ…でちまう…」

「むりぃ…きもちよくて、あっああっ、じょうたろ、そこ、いい…」

 

背骨をぞくぞくと熱が這いあがり、僕の体が糖蜜のようにとろとろと溶けていく。

承太郎に中を穿たれるたびに、喜びの声をあげ、僕は快楽の奴隷になっていた。

 

「じょうたろ、じょうたろっ、すきっ…ああっ、んっんっ…すきっ、だいすき、ふあっ」

 

僕は奔馬のように腰を動かしながら、夢中で彼にすがりついた。

支えを失ってスカートとパニエが落ちかかり、僕の勃ちあがったペニスに擦れて気持ちいい。

激しい律動で頭のフードは脱げてしまい、靴下はくるぶしまでずり下がっていた。

しかしあまりの悦楽に僕はただ喘ぎ、体を震わせることしかできなかった。

 

「俺も、すきだっ…花京院、お前だけだ、お前じゃなきゃ…はっ、俺はもう駄目だ…」

 

ぎゅうと強く抱きしめられ、同時に奥深くを突かれる。承太郎の声で耳に囁かれるたび、頭の芯がぼうっとしびれて、何も考えられない。

 

「あっあっあっ、いっ、いくっ…また、いっちゃぅ、うああっ」

 

腰を打ちつけられる感覚が段々と短くなり、絶頂の予感にぞわりと肌が粟立つ。

承太郎が「俺も」と低く呻くのが愛しく、僕は承太郎の腰に足をからませ、彼が抜けないように固定した。

 

「じょったろっ、おねがい、なっ…なかに出して…」

 

そう言った瞬間、目の前が真っ白になり、高いところから一気に落ちたような浮遊感に襲われる。

僕はかすれた叫び声をあげながら、ガクガクと体を痙攣させて、断続的に精液を吐きだした。

同時に、体内に勢いよく承太郎の熱を注がれるのを感じながら、僕は意識を手放した。

 

 

 

 

唇にふわりと柔らかい感触が降ってきて、僕は重たい瞼を開けた。

心配そうな顔の承太郎が見えて、ああ、気絶しちゃったんだな、と僕は理解した。

 

「大丈夫か?」

「…うん、久しぶりだから、ちょっとびっくりしただけ」

 

彼が差し出すペットボトルの水を受け取って、そう答える僕の声はひどくかすれていた。

ちらと下を見ると、僕のお洋服には点々と白い液体が付着し、スカートはくしゃくしゃになってしまっている。

クリーニングださなきゃ…でも、このシミについてどう説明したものか…

 

色々と考えてみるが、久々のセックスと、ここ最近の仕事で疲れ切った僕は、急に襲ってきた眠気にうとうとし始めた。

ごし、と目を擦ると、承太郎が優しく「もう寝ちまえ」と僕の背中をなでる。

その心地よさに抗わずに、僕が目を閉じると、承太郎は僕を抱きかかえて、部屋の奥にある仮眠用のベッドに連れて行ってくれた。

 

眠りに落ちる直前、「ファッションショー絶対成功させようね」と呟くと、承太郎がああ、とほほ笑んで僕の額にキスをしてくれる。

とろけるような幸せを感じながら、僕は夢の世界へと導かれていった。

 

 

 

「承太郎、僕柄にもなく緊張してきたよ」

 

新作発表会当日、僕は自身もfor menの衣装を纏って、モデルとして舞台袖で震えていた。

 

「いっつも震えることなんかないのに、どうしよう、汗までかいてる気がする」

 

経験したことのないような大きなステージを前に、僕は涙目で承太郎に訴えた。

 

「安心しろ、花京院。そりゃ武者震いってやつだぜ。自信もって行って来い」

 

と彼は笑って、僕の左手の薬指で輝く指輪にキスを落とした。

 

「上手く行くおまじないというやつだぜ」

 

承太郎に励まされて、僕はなんとか「わかった」と絞り出した。

彼に帽子の位置を調整してもらって、それから僕は承太郎に頼みこんで彼と握手をした。

承太郎の手も緊張のせいか、少し汗ばんでいて、それで僕と承太郎はちょっと笑ってしまい、なんだか緊張がほぐれた。

 

全身をStar Platinumで完全武装した僕は、にっこりと微笑んで、きらめくステージへと一歩を踏み出した。

 

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