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ソファーの上でうとうとまどろんでいると、何か柔らかいものが体に掛けられた。

ごし、と目を擦ると毛布を持った承太郎がしまった、という顔でこちらを見ている。

 

「すまん、起こしたか」

「ん…いいよ、おかえり」

 

腕を広げて彼を迎えると、承太郎の体は冷たくて、コートからタバコの香りがする。

 

「俺を待たずに、寝ていて良かったんだぞ」

 

と呟く彼の息がわずかに乱れていて、急いで帰ってきたのだとわかる。

寒さで真っ赤に染まった承太郎の頬を手で挟み、少しでも彼が温まればいいと思う。

 

「一人であのベッドで寝るのはさみしいよ」

 

君が帰ってきてくれてよかった、と耳に囁けば、僕は毛布ごと抱き込まれた。

ちゅ、ちゅとまだ冷たい承太郎の唇が顔中に降ってきて、くすぐったさに笑ってしまう。

冷たい、と文句を言えば、今度は熱く濡れた舌が首筋を這った。

じゃれあうような刺激が、急に性のにおいを色濃く孕む。

 

思わず「あ」と吐息が漏れて、体が跳ねた。

彼に翻弄されて、コントロールが効かない。

下半身がきゅうと切なく疼き、僕はすがるように彼の肩にしがみついた。

 

「ん、んあ…っふ、ん…」

 

恥ずかしくて下唇を噛んで耐えていると、承太郎の指が口内に差し入れられる。

俺の指でも噛んでろ、と言われてもそんなことが僕にできるはずもなく、快楽を逃がすために子供のように彼の指を吸う。

 

ちろ、と承太郎の形の良い爪と指先を夢中になって舐めていると、いつの間にか僕の服は肌蹴られていて、承太郎は好き勝手に所有者の証をつけている。

首筋、鎖骨、心臓の上、胸の下、脇腹、臍の横…数えきれない赤い花が肌の上に咲いていく。

 

ややして承太郎の指が口から引き抜かれて、名残惜しげに唇で追えば宥めるようにキスをされる。

舌と舌を絡めるといやらしい水音がたち、じわじわと体温が上がっていく。

 

息を乱しながら彼のズボンの膨らみに手を伸ばせば、そこはちゃんと反応をしていて僕は嬉しくなる。

ジッパーをおろす時の金属がジジ、と擦れる音を聞くと、その先を期待して僕はパブロフの犬みたいに興奮した。

 

今にもがっつきそうな僕に、こら、と承太郎は苦笑しながらも好きにさせてくれる。

外気に触れて震える彼のペニスを、そっと握りこむと熱っぽい吐息が頭上で聞こえた。

 

いつ見ても承太郎のは大きい。

ガチガチのそれは赤く充血していて、毎回僕の体の中に入れられているというのが信じられない。

右手でゆるゆると扱きながら、同時に左手で先端をいじめてやると、承太郎は時折腹筋をぴくりとひきつらせた。

 

ふっふっ、と短い獣のような彼の息づかいに頭がぼうっとなる。

目をつむって、長い睫毛を震わせる承太郎が可愛くて、飽きずに見つめていると彼と目があった。

顔を真っ赤にして、あんまり見るなという承太郎の、意外と照れ屋なところが好きだ。

 

「見たいんだよ、君のそういう顔」

 

ね、頼むよ、と囁くと承太郎がぶるりと体を震わせる。

してやったりという顔で微笑めば、仕返しとばかりに首筋に噛みつかれた。

痛いよ、という言葉は承太郎の唇に吸い込まれてしまう。

 

「ふっんん、っく…うあ、あ、ああ」

 

キスをしながら薄い胸を寄せあげように揉まれ、その間に彼の右手はするすると僕の尻を降りていく。

いつの間にかクリームを纏った指が、探るように何度か行き来した後、そっと中に差し入れられる。

久方ぶりに受け入れる彼の指に異物感はぬぐえないが、辛抱強く一点をもみ込まれると、段々と僕の体は開いていった。

 

「ん、じょうたろ…そこ、きもちいい…もっと…ふ、ああ…」

 

いつもなら羞恥心が邪魔をするのに、会えない時間の寂しさが僕を素直にさせた。

子供のように彼に甘えて愛撫をねだれば、僕が望むだけ快楽が与えられる。

体が飢えている。承太郎しかこの飢えを満たせない。

ぞわぞわと鳥肌が立ち、僕はあられもなく脚を広げて彼を呼んだ。

 

「きて、さみしい」

 

はやく、と言い切らないうちに熱い楔が穿たれる。

瞬間、光がスパークしてあまりの眩しさに目がくらむ。

嵐のような快楽が吹き荒れて、体中の細胞が歓喜に沸く。

甘く重たい蜜にどっぷりとつかっているように、指一本さえ自由にならない。

 

勝手に腰が踊り、体は震え、僕の唇からはほとんど意味をなさない言葉が次々に溢れだした。

僕はただの生き物だった。承太郎の愛を受けるだけの生き物。

 

「うああ、ああっ、すごい、ひぃっ…ん、う…っ…あ、っぅあっ、ぅあッ…あああっ」

 

必死に承太郎の背にすがりつくと、汗でつるりと指が滑る。

興奮してくれているのだろうか、燃えるように熱い彼の肌に爪を立てると、承太郎の動きが更に激しさを増した。

ギシギシ、と二人分の体重を受けてソファーは悲鳴をあげている。

体の奥深くを侵略していく承太郎の突き上げに、僕は為すすべもなく悶えるだけだった。

 

ざわざわと下腹のあたりが落ち着かなく、じっとしていられずに狂おしく腰を振れば、頭上で承太郎が呻く。

彼の低い声が耳を犯し、甘い電流が駆け巡る。

体の内側の柔らかい粘膜を息つく暇もなく擦られて、砂糖漬けみたいにどろどろの僕は、高い声をあげて果てた。

断続的に精液を噴きあげて震える僕の中に熱を注ぎながら、承太郎はかすれた声で好きだと呟いた。

 

 

 

むくりと起き上がると、さんざんスプリングを痛めつけられたソファーは、二人分の体液で見るも無残な姿になっていた。

水をはじきやすい素材にしておいて正解だったが、早く手入れしないといけないだろう。

クッションはぺちゃんこに押しつぶされ、くたりとしているし、毛布はくしゃくしゃになって衣服と一緒に床に落ちている。

 

お気に入りのソファーがよれよれになっていて、がっくりきた僕は、僕の上で満足げに眠っている承太郎の頬をつねった。

思いのほかふにゃりと柔らかい皮膚をつまむと、んん、と承太郎が顔をしかめる。

彼の腕が僕を探すように彷徨い、腰へと回されてぎゅうと抱きしめられると、もう怒る気力もそがれてしまう。

まあいいか、と重たい体をソファーへと預け、僕はまた夢の世界へと旅立ったのだった。

 

おわり

 

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