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年上の甥の首もと、白いコートに隠れるようにして、紅色の線が数本伸びていることに、仗助は気づいた。

 

「承太郎さん、どーしたんすか、その首んとこ」

 

赤くなってるっすよ、と指さすと、承太郎は鍛え上げられた首筋に手を伸ばした。

ぴりっとした痛みを感じたのか、その眉がしかめられる。

 

「大丈夫っすか?なんなら治しますよ」

 

仗助が自身のスタンドを出現させると、承太郎はふっと微笑んだ。

 

「いや、大したことない。猫にやられたんだ」

「えっ承太郎さん、猫飼ってるんすか」

 

仗助には、この寡黙で大柄な男が、猫を愛でるところなど思い浮かばなかった。

 

「まあな」

「まじっすか、いいなあ。今度見せて下さいよ」

「そのうちな」

 

そういって承太郎は、今まで見たことのないような優しげな、それでいて少しぞっとするような美しい笑顔を見せた。

上手くはぐらかされてしまったことに、歯痒さを感じながらも、それ以上承太郎の猫について聞くことはなんとなく憚られて、仗助は口をつぐんだ。

 

 

 

「ただいま」

 

杜王グランドホテルの324号室、広々としたスイートルームに承太郎が帰りつくと、奥の部屋からくぐもった喘ぎ声と、ブーンという羽虫のような機械音が小さく聞こえた。

承太郎は白いコートをハンガーにかけ、それからゆっくりとホテルの従業員にも勝手に開けないようにいいつけてある、奥の小部屋へと向かう。

 

近づくにつれ、部屋の中にいる彼の愛猫が承太郎の足音に気づいたらしい。

すすり泣きの声が大きくなり、甘えるような、憐れみを誘うような鳴き声がする。

 

鍵をことさら時間をかけてはずし、焦らすように扉を開けると、そこには手と足をベルトで固定され、口に穴のあいたボールをくわえさせられた青年がいた。

 

どこを見ているのかわからない、焦点のあわないすみれ色の瞳は淫蕩に溶け、生々しい所有の印を散らされた体が、小刻みに震えている。

その小ぶりな尻からは、ピンク色のコードが尻尾のようにのび、内部に埋め込まれたローターが容赦のない刺激を絶えず彼に与えていた。

 

「ふうっうう――」

 

ぽろぽろと涙をこぼしながら青年は頭を振り、床についた一房だけ長い前髪が揺れる。

彼は自由にならない体をなんとか動かし、承太郎の足元に這いよってきた。

 

青年の転がっていた床には、まだ乾いていない白い粘液が点々とこぼれており、承太郎はそれを見てとると、青年の尻をたたいた。

パンと乾いた音が室内に響き、赤毛の男の目が恐怖におびえる。

 

「花京院、また我慢できずにもらしたのか。とんだ淫乱だな」

 

淫乱、という言葉に花京院と呼ばれた青年は、頬を真っ赤に染め、恥じいるように長い睫毛を伏せた。

 

しかし、淫具に苛まれている彼の尻はもじもじと揺れ、そのたびに勃起して蜜をこぼす、色の淡いペニスが見え隠れした。

明らかに花京院の体は熱を孕んで熟れ、彼の尻は雄の性器を求めて狂おしく収縮をくりかえしていた。

 

花京院は、捨てられた子猫のように、身を縮こまらせ震えながらも、承太郎の股間に顔を寄せて頬擦りした。

さかりのついた雌猫だな、と承太郎が笑って、花京院の柔らかな赤毛を優しくなでる。

自分を甘やかすような承太郎の大きな手に、花京院は嬉しさのあまり泣きそうになってしまう。

 

爽やかなコロンの香りに隠された、承太郎のにおいを嗅ぎとろうと鼻を埋めると、承太郎が慣れた手つきで口枷をはずす。

それを口淫への許しの合図と理解して、花京院は歯を使ってジッパーを下げた。

 

唇と舌だけで、下着の中から承太郎の性器をなんとか取り出す。

赤黒く脈打つそれを、口内に招き入れて吸うと、承太郎が熱っぽい吐息をもらした。

 

大きな口いっぱいに承太郎を含みながら、花京院はぼんやりと考えた。

どうして僕たちはこんな関係になってしまったんだろう。

 

DIOとの戦いで九死に一生を得た花京院を、承太郎は病院から奪い去って自分のものにしてしまった。

それは、もう誰にも花京院を渡すまい、という承太郎の強い意志のあらわれだったのかもしれない。

 

スピードワゴン財団のスタッフや、医師達が花京院を連れ戻しにやってきたが、最強のスタンド使いを前にしては為すすべもなかった。

花京院以外の人間を、殺すことも厭わないような怒気を孕んだ承太郎を目にして、花京院は彼のペットになることを受け入れた。

 

だが、花京院はいくら承太郎にひどい仕打ちをされようが、罵られようが、彼のことを憎むことができなかった。

狂気に燃える承太郎の緑の瞳の奥底には、悲しみや切なさが確かに沈んでいる。

ときおり見せる優しげな彼のしぐさ、例えば花京院に愛おしそうに口づけたり、かいがいしく食事を手ずから与えたりするとき、花京院は全てを許してしまうのだった。

 

つまるところ、自分は彼を愛しすぎているのだ、と花京院は思った。

彼の寂しさを少しでも埋めることができるなら、自分は何だってやるんだろう。

 

歯を立てないように、唾液をからませて唇で承太郎のペニスを優しく刺激する。

舌で先端の粘膜をつつき、とろとろと零れる先走りを夢中になって吸う。

 

花京院の綺麗に剃りあげられた、赤子のようなすべらかな股間には、不釣り合いな成人のペニスが痛いほど張り詰めている。

触れられてもいないのに、それは臍につくほど反り返り、切なげに涙を流している。

 

そんな花京院の様子を見て、承太郎が目を細めて問いかける。

 

「いれてほしいか?」

 

花京院は承太郎のペニスから口を離すと、期待の色を目に浮かべて頷いた。

満足そうに承太郎が笑い、花京院の体から拘束具を外し、彼の体を仰向けに横たえる。

 

花京院のしなやかな脚を肩につけるようにして、彼の体を折り曲げると、承太郎は彼に自分の膝を持たせて、支えているように言いつけた。

 

濃い桃色に色づく、花京院の蕾から無機質な玩具を取り去ると、長時間弄ばれていたそこは承太郎を欲して淫猥にひくついている。

閉じ切らずに、だらしなく潤滑剤を零す花京院の秘部のふちを、指でぐるりとなぞると、彼が耐えるようにぎゅっと目をつぶる。

 

承太郎がしばらくそうして遊んでいると、花京院が消え入りそうな声で、お願い、と呟いた。

 

「じょうたろ、お願い…お願いだから、もう…」

 

承太郎が命じたとおり、けなげに脚を大きく開き、その屹立した性器も、彼を受け入れるべく慣らされた箇所もすべてさらけ出して、花京院は懇願した。

 

花京院の瞳から、ぽろぽろと真珠のような涙が零れ落ち、この淫靡な雰囲気には全く相応しくない言葉だが、承太郎はそれをとても清らかで高潔なものに感じた。

 

切なげに嗚咽する花京院に、承太郎はなだめるような口づけを与え、まなじりに浮かぶ涙をそっとぬぐってやった。

 

「すまねえ、やりすぎたな」

 

そう承太郎が謝ると、花京院はふるふると頭を振り、それから承太郎の腰に脚を絡ませると、「早く」と彼を煽った。

 

花京院の蜂蜜のようにとろけた瞳から目を離さずに、承太郎は猛る自身を、誘われるままゆっくりと花京院の中に埋め込んでいく。

やわらかくうねる花京院の体内に包まれ、思わず漏れそうになる声を押し殺し、承太郎は腰を進める。

 

熱く狭い花京院の中に、ようやく全てを収めきった瞬間、彼が悲鳴をあげて、大きく体を痙攣させた。

花京院の性器から、断続的にぴゅくぴゅくと白い飛沫があがり、二人の体を濡らす。

 

「あ、あ…嘘…」

 

花京院は信じられないといった表情で、自分のペニスを見つめた。

そこは直接的に触れられないまま、後孔からの刺激のみで精液を吐きだしていた。

 

困惑する花京院を抱きしめると、彼の体がびくりとこわばる。

承太郎が花京院の瞳を覗き込もうとすると、彼は遮るように手で顔を隠し、声を震わせた。

 

「ごめんなさい…許して…」

 

どうしたと穏やかに尋ねると、花京院は勝手に達したことを恥じているようだった。

 

「僕、承太郎の言うとおり、淫乱なんだ…ごめんなさい…お願い、僕を捨てないで」

 

すすり泣く花京院の背中をなで、承太郎は優しくキスを落とした。

 

「お前は淫乱だが、別に恥ずかしがることはない。俺が責任もって、一生飼ってやる」

 

子供に言い聞かせるように花京院の耳元で囁くと、彼は涙をこらえながら、舌たらずに尋ねた。

 

「ほんと?」

「ああ」

 

花京院は承太郎の答えを聞くと、安心したようにくたりと力を抜き、承太郎に体を預けた。

 

花京院が落ち着くのを待って、ゆるゆると腰を動かすと、花京院は可愛らしい声をあげて身悶えた。

 

「ふ、っ、っん…は、ぁっう、ああ、あ、ぅあッ…あああっ…」

 

その甘やかな声がもっと聞きたくて、承太郎は花京院の弱いところばかりを責める。

せわしく浅い呼吸をしながら、承太郎の動きに合わせて体をくねらせ、花京院は承太郎をめいっぱい受けいれて歓喜に震えた。

 

「はっ……うあッ!じょ、たろ…そこ、きもちい、ん、う…っ……あ…あ、くっ、ぅあッ…あああっ…」

 

渦のようにからみつく花京院の中に溺れそうになりながら、承太郎は激しく彼を突いた。

放逐したばかりの花京院のぺニスは、承太郎の腹に擦られてまた頭をもたげている。

 

尾骨のあたりから欲望の炎が燃え上がり、本能に任せて花京院を食らいつくす。

粘膜と粘膜の擦れ会う、途方もない悦楽に、意識を飛ばしそうになりながら、承太郎は自分の服を強く握っている花京院の手を引き剥がし、首もとに腕をまわさせた。

 

結合した部分からじゅぷじゅぷとローションが泡立つ卑猥な音が響き、花京院が頬を真っ赤にしながら、猫のような甘えた声で承太郎を煽る。

 

汗で滑るまいと、爪を立てて背にすがりつく花京院に胸を焦がされながら、承太郎は低く呻いて、花京院の体内に白濁を流し込んだ。

承太郎に1拍遅れて、花京院もさんざん弄ばれたせいで、水のように薄い精液をだらだらと溢れさせて、もはや何度目になるのかわからない絶頂を迎えた。

 

 

 

肩で息をしながら、全身をぐったりと弛緩させている花京院を見て、承太郎は目を細めた。

汗で額に張り付いた前髪をかき分け、キスしてやると花京院がくすぐったそうに身をよじる。

 

そのとき、首筋にちりりとした痛みを感じて、承太郎は朝の叔父とのやりとりを思い出した。

 

「…仗助がな、俺の年下の叔父なんだが、お前のつけた爪痕を見つけて、どうしたのかと聞いてきたんだ」

 

きょとんとした顔で話を聞いている花京院の頬を撫でながら、承太郎は続けた。

 

「飼っている猫にやられたと言ったら、会いたいと言っていた…お前も仗助に可愛がられたいか?」

 

ん?、と訊ねると、花京院は悲痛な顔で首を振った。

承太郎の掌に口づけて、必死に懇願する。

 

「嫌だ、僕は君だけのものだ。他の誰にも触らせないでくれ、お願いだ」

 

何でもする、とすがりつく花京院に満足して、承太郎は彼を強く抱き締めた。

 

「わかった、お前は一生俺だけのもんだ。他の誰にもやったりしねえ」

 

その言葉に、花京院は言い知れぬ幸せを感じながら、主人に庇護される安心感に包まれて、ゆっくりと眠りに落ちた。

 

おしまい

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