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注意書き

 

この世界に二人きりの続きのようなものですが、読んでなくても大体わかります。

生存院設定で、承太郎は既婚・子持ちで離婚はしてません。

徐倫ちゃんが承花の不倫現場を見るという薄暗い話です。

大丈夫そうな方はどうぞ。

 

 

 

 

 

ダディにはノリアキという日本人の友達がいる。

ノリアキは昔大ケガをしたせいで、目が悪く、歩くときはいつも杖をついている。

ノリアキのお仕事は絵を描くことで、色鮮やかな魚が泳ぐ美しい海の絵や、どこまでも続く砂漠の絵を描いて生活している。

だからママが仕事で忙しいときには、時間に融通のきくノリアキが、私の面倒をみてくれることになっていた。

料理がからきしなダディに代わって、ノリアキはおいしいご飯を作ってくれるし、私を子供だと馬鹿にしないで、レディとして扱ってくれる。

 

私はノリアキが大好きだった。

ノリアキと一緒に旅をして、彼の描く遠い異国の風景に入り込みたかった。

 

そんなわけで今日も、出張で家にいないママの代わりに、ノリアキが泊まり込みで私とダディの世話をしてくれていた。

ノリアキはてきぱきとごちそうをつくり、私をお風呂にいれ、丁寧に髪をとかしたあとはベッドで絵本を読んでくれた。

彼の優しい声は、すぐに私を夢の中に連れていった。

 

 

夜中にふと目が覚めて、時計を見ると時刻は2時をすぎた所だった

。私はなんだか喉がかわいて、キッチンで水を飲もうと部屋をでた。

真っ暗な廊下をそろそろと歩いていると、ダディの部屋から光がもれているのに気づいて、私は立ち止まった。

 

どうしてこんな遅くに、電気がついているんだろう。

ダディはまた学会に論文を出すのだろうか。

よせばいいのに私は好奇心に負けて、ドアをほんの少しだけあけて中をのぞいてしまったのだ。

 

部屋の中には背の高いダディのために大きなベッドがある。

そこにダディはいた。

 

寝ているわけではなく、なぜかダディは裸で、汗が浮かんだ背中だけが見えた。

ダディの腰には長く細い足がからんでいて、骨ばったその足に私は見覚えがあった。

今日お風呂で見たばかりのノリアキの足だ。

白いノリアキの足はダディにゆさぶられて、宙をかいている。

 

ベッドはダディとノリアキの体重をうけて、耳障りな音をたててきしんでいる。

ノリアキの顔はよく見えないけれど、小さく彼のすすり泣く声がする。

 

彼らが何をしているか、私には理解できなかった。

なんとなく子供なりに、見てはいけない光景だということを肌で感じた。

 

私はなんだか恐ろしくなって、水を飲むことも忘れて、自分の部屋へ戻った。

気がつくと嫌な汗でパジャマは濡れていた。

ベッドに隠れるように潜り込んで、お気に入りのウサギのぬいぐるみを抱き締める

。ジョリーン、今日見たことは忘れるのよ。

きっと寝ぼけて悪い夢を見たんだわ。明日になれば何もかも元通りよ。

そう自分にいい聞かせて、私はぎゅっと目をつぶった。

 

 

 

次の日、ほのかな甘い香りで私は目覚めた。

眠たい目を擦りながらリビングにむかうと、ノリアキが朝ごはんをつくっている。

 

「おはよう、徐倫。ごはんできてるよ」

 

にこりと私に笑いかけるノリアキからは、バターとミルクのにおいがして、夕べの重苦しい夜の気配はない。

やっぱり私の見間違いだったんだわ。

私はいつもと変わらない日常に安心して、口いっぱいにパンケーキを頬張ったのだった。

 

 

 

 

 

承太郎の大きな手のひらが、僕の体を好き勝手になでまわす。

久しぶりに感じるその熱に、僕はぐずぐすに溶かされていく。

出したくもないのに、女のような声がもれ、承太郎の体にすがりついていないと自分を保てない。

首筋に承太郎の息を感じたと思うと、そこを強く吸われ、僕は抗議の声をあげた。

 

「ちょっと、痕がつくだろう。やめてくれよ」

 

承太郎はどこ吹く風で、まったく気にしていないようだった。

ひどい男だ。僕が入院している間に、子供まで作った男だ。仕方ない。

そのどうしようもない男に、心底惚れ込んでいる僕も救いようがなかった。

 

彼の妻と娘を欺き、僕たちの関係は続いていた。

家事を手伝うという名目で、彼の家で抱き合ったり、研究で海に出る彼についていって、のんびり絵を描きながら、夜になれば愛し合ったりもした。

 

背徳の沼にはまりこんで、僕は息もできない。

彼の奥さんも娘の徐倫も大好きなのに、彼女たちの知らない承太郎を知っているという薄暗い優越感にひたっている僕は、きっと地獄に落ちるんだろう。

だがこの男と一緒なら、行き着くはてが地獄だろうとどこだろうと構いはしなかった。

 

足を大きく開かされ、承太郎が僕の中に入り込んでくる。

熱い。僕の心臓がうるさいくらいに鳴り響き、肺が酸素を求めてあえいでいる。

僕の体はコントロールを失い、パズルのようにバラバラと崩れていくような感覚が襲ってくる。

目の裏で小さな光の爆発がおこる。

承太郎から与えられる快楽のしもべとなり、何も考えられない。

僕の欲望を満たしてくれるなら、何でもするという気持ちになり、この瞬間に溺れていく。

 

ああ、絶頂が近い。ぞわりと腰の骨が浮き上がるような感覚。

その時だった。承太郎の肩ごしに見えるドアがほんの少しだけ開いていることに気がついたのは。

 

どっと背中に汗がわき、思わず小さな悲鳴がもれた。

おかしい、ドアはきっちり閉めたはずだ。

しかし鍵は?記憶が曖昧で思い出せない。

今、この家にいるのは僕らの他には一人しかいない。

8歳になる承太郎の一人娘。

 

もう行為どころではない。

ドアをしめなくては、そう思うのに承太郎の激しい律動によって、スタンドを出すこともままならない。

せめて声を出すまいと、自分の手の甲で口をおさえるが、承太郎の反感をかったらしい。

腰の動きが更に荒々しくなり、気がつくと僕は涙を流しながらはしたない声をあげていた。

 

嵐のような快感が襲い、僕は体の奥に熱い奔流をたたきつけられながら果てた。

 

 

 

承太郎が寝入ったのを見計らい、僕はパジャマを身につけると徐倫の部屋へと向かった。

悪いと思いながら中をそっとのぞくと、部屋は真っ暗で徐倫のかすかな寝息が聞こえる。

さっき彼女が、僕らのいる部屋の前に来たと思ったのは、僕の気のせいだったのだろうか。

 

徐倫の女の子らしい部屋は、僕が幼い彼女から承太郎を取り上げているという事実を僕に認識させ、責め立てるようで居心地が悪い。

本当は僕が彼女の母親がわりなどやる資格はないのだ。

 

いつか僕はこの子に断罪されるのだ。そういう予感をひしひしと感じながら、僕は徐倫の部屋を後にした。

 

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