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あなたはいちやの承花で

【濡れた唇、閉じた瞳 / 夢の中では】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

夢の中なら、こうやって抱き合えるのに。花京院の濡れた唇にそっとキスを落とせば、彼は大人しく目を閉じる。角度を変え、甘露のような唇を味わううちに、どんどん欲がたまっていく。好きだ。そう囁いて彼の中に飛び込んだとき、背に立てられた爪の痛みで我に返る。夢みたいだ、と花京院が泣き笑った。


 

 

あなたはいちやの花京院で

【甘い匂い / スキンシップ?!】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

ハーフだからか承太郎の挨拶はちょっと変だ。腰に響く低音のおはよう、おやすみ、ありがとうの全てに唇へのキスが付属する。スキンシップが過剰すぎる。それに車で隣になるときも、寝袋で寝る時もやたら近い。甘い匂いがしてドキドキする。どうしてと問えば友情の証だと言われた。悪い気はしなかった。


 

 

あなたはいちやの承花で

【視線で果てて / うしろから見ないで】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

裸で姿見の前に立たされ、欲を孕んだ顔も期待に震える屹立も、何もかもが曝け出される。やれよ。承太郎に耳元で囁かれ自らを慰める。見るなと懇願しても、彼は構わず緑の目でぼくを犯す。すぐにその視線で果てれば、手を鏡につかせられ彼が後ろから入り込んでくる。ぼくは歓喜に獣じみた咆哮を上げた。


 

 

あなたはいちやの承花で

【カギのかかった部屋 / 吐息まじりに】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

キスを交わしながら後ろ手に鍵をかければ、たちまち部屋はねっとりと甘い空気を孕む。電気を消してくれという花京院の吐息交じりの懇願を無視し、おれは彼をベッドへと押し倒した。旅の疲れが取れるようにとジジイが用意したせっかくの高級な部屋は、これから心地よく疲労するためにだけ使われるのだ。


 

あなたはいちやの承花で

【同じ布団の中 / やわらかな体】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

目覚めたばかりのぼんやりとした意識のまま腕を伸ばせば、何かあたたかなものに触れた。不思議に思ってそのかたまりを引き寄せれば、熱の正体は花京院だった。そこでおれの意識が覚醒する。頰がもの凄い勢いでかっと火照る。昨日おれはこのやわらかな体を抱いたのだ。同じ布団で眠る彼の横顔は、ひどくいたいけだった。


 

あなたはいちやの承花で

【緊張が愛しくて / 声は出さずに】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

ぐっと奥を突けば花京院が体を震わせた。異国の路地裏で中途半端にズボンを下ろされ、立ったまま後ろから犯される彼は、緊張でその体を固く強張らせている。片手を建物の壁につき、反対の手で大きな口を覆う花京院は、おれとの身長差を埋めるため爪先立たねばならず、おれはそれをひどく愛しく思った。


 

 

あなたはいちやの承花で

【舌舐めずりをして / 様子を伺って】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

おれの上に乗り上げた花京院が舌舐めずりをする。期待に膨らんだ股間に引き締まった形良い尻をぐりぐりと擦り付け、彼はこちらの様子を伺っている。痺れを切らしたおれがその細腰を鷲掴もうとすると、法皇の触脚に阻まれる。淫靡に微笑む花京院は挑発的におれを見つめながら、ゆっくりと腰を落とした。


 

 

あなたはいちやの承花で

【汗を流して / マッサージ】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

承太郎は毎回ぼくの体を好き勝手にパクパク食べてしまうけど、終わったあとにシャワーで汗を流し、ベタベタになった髪と体を洗ってくれる。それからパジャマを着せ、ベッドに運び、あの大きな優しい手で労わるようにマッサージしてくれるから、ぼくはすぐに気持ちよくてとろとろと微睡んでしまうのだ。


 

あなたはいちやの承花で

【横たわり… / ここはダメ】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

ベッドに腰掛け細く紫煙を吐き出すと、横たわったままの花京院がぼくもと強請る。情事の後の気怠い雰囲気を残す彼に煙草を咥えさせ、先端同士を触れ合わせて火を分ける。普段吸わないくせに彼の姿は様になっている。口づけようとすると煙草臭いから嫌と断られた。よくわからないこだわりがあるらしい。


 

 

あなたはいちやの花京院で

【後悔なんてしない / すべて見せて】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

全部見せろと言われ、震える手で服を脱いだ。腹の傷跡も、はしたなく勃ちがった性器も全て承太郎の前に晒される。大きな手が確かめるようにぼくの体の線を撫でる。触れあわせた唇はぎこちなく、映画のキスシーンみたいに上手くはできなかった。彼に優しく押し倒されながら、後悔なんてしないと思った。

 

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