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あなたはいちやの承花で

【揺れながら / 濡れて、透けてる】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

はあはあと花京院が荒い息を繰り返し、長い前髪が揺れた。突然の雨に全力疾走で神社の軒下に転がり込んだはいいが、二人とも濡れ鼠だ。参ったなと笑う花京院の肌に張り付いたシャツは本来の役目を失い、薄桃色の胸の尖りが透けてしまっている。心臓の鼓動がうるさくておれは無言で学ランを彼にかけた。

あなたはいちやの承花で

【人に隠れて / 手錠をかけて】

をお題にして140字SSを書いてください。

かちりと音を立て、承太郎の腕を手錠で保健室のベッドに括り付ける。ばくばくと心臓が早鐘を打ち息が荒くなる。カーテン一枚、扉一枚隔てて同級生は勉学に励んでいるというのに、ぼく達は人に隠れてふしだらな行為に及ぼうとしている。悠然と王者の風格の承太郎に要求されるまま、ぼくはキスを捧げた。

あなたはいちやの承太郎で

【あたってるよ / シーツにくるまって】

をお題にして140字SSを書いてください。

花京院は冬の間毎夜おれに抱きついて眠る。体温の高いおれは彼の抱き枕兼毛布というわけだ。随分と冷え込んだ今日も、彼は自分のベッドではなくおれの布団をめくりこちらへやってきた。ごそごそと丁度良い場所を探る花京院の、脚の間が熱を持っている。当たってるぞと言えば彼は恥ずかしそうに俯いた。

 

 

あなたはいちやの承花で

【涙声でねだって / もちろん、その先には】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

ビデオカメラの無機質なレンズの先には、素肌に赤い縄だけを纏った花京院がいる。四肢の自由を奪われ、天井の梁から吊るされた彼は、爪先立ちが辛いのだろう、内腿を震わせておれの名を呼ぶ。どうしたと聞くこともせず、ぷくりと腫れた乳首を指で転がして待てば、とうとう彼は涙声でいれてと強請った。

 

あなたはいちやの承花で

【ごほうび / 先に待ってる】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

人というものは報酬があってこそ、モチベーションを保って事に当たれるのではないだろうか。今日も仕事で日を跨いでからよろよろと帰宅したおれに、玄関先で花京院がキスをくれる。お疲れ様、大変だったね、先にベッドで待ってるね、という彼から甘いシャンプーの香りがして、おれをひどく興奮させた。

 

あなたはいちやの承花で

【素直になったのに / 手のひらをからませて】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

いれてと素直に強請ったのに、意地悪な承太郎はぼくが自ら彼を招き入れるように緑の目で促した。羞恥に脳髄が焼ききれそうになるが、彼が官能的なキスをくれるからぼくはどこまでも淫らになってしまう。彼と手指を、舌を、絡ませながら一つに繋がる瞬間、このまま時間が止まればいい、とぼくは思った。

 

あなたはいちやの承花で

【ふるえながら / さみしいからじゃない】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

花京院の震える体をそっと抱きしめる。己の分身を誰にも理解されずに、たった一人で歩んできた彼の孤独は想像もつかない。優しくキスを送れば、彼が母親に甘える子供のようにしがみついてきた。寂しいからこんなことするんじゃあない、君が好きなんだ、とうわ言のように呟く花京院がひどく小さく見えた。

 

あなたはいちやの承花で

【誘惑のその先に / 肌の温度差】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

付き合って半年になるのに、承太郎が一向に手を出してこない。ぼくはそれが物足りなくて、ボディタッチを増やし、思わせぶりな言動で彼を誘惑し続けた。今日も酒に酔ったふりをしてしなだれかかると、突然承太郎に押し倒された。肩を掴む承太郎の手が燃えるように熱くて、ひどくぼくをうろたえさせた。

 

あなたはいちやの承花で

【恍惚に溺れて / 手錠をかけて】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

承太郎にめちゃくちゃにされたい。時折自分を支配する被虐思考に、ぞっとする。もうどうしようもないほど彼に溺れていて、ぼくは息もできない。ベッド柵に手錠で両手を括り付けられ、抵抗できずに犯されながら恍惚とぼくは喘ぐ。圧倒的な力で承太郎に捩じ伏せられて感じるのは、紛れもない快楽だった。

 

あなたはいちやの承太郎で

【すべて君の中へ / 夜まで待てない】

をお題にして140字SSを書いてください。

 

全てうだるような暑さが悪いのだ。おれ達は夏休みに入ってから、毎日のように互いの家で過ごすようになっていた。夜まで待てずにまだ明るいうちから、汗まみれになって何度も抱き合う。おなかが熱いから外に出してよ、という花京院を無視して欲望の全てを注げば、やると思ったと楽しそうに彼が笑った。

 

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