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承太郎と同棲を始めて一番よかったと思うことは、いつでも好きな時に人目を気にしないでイチャイチャできることだ。

承太郎、とちょっと名前を呼びかければ、キスだってハグだって何でもし放題なのだ。

もちろん、セックスだって。

 


 

付き合いだしてからわかったのだが、ぼくも承太郎も普通の人より性欲が強いみたいで、ぼくらは暇さえあれば言語によるコミュニケーションと同等の頻度で、体によるコミュニケーションに励んでいる。

それはもう、いちいち服を脱いだり着たりするのも面倒なくらいで、休みの日などぼくはもっぱら下に何も穿かず、カットソーに丈の長いカーディガンなど合わせて、承太郎に求められるまま、あるいは自分から誘って、ソファやベッドや風呂場やキッチン、果ては廊下でまでことに及んでいた。

 

承太郎と抱き合うのは途方もなく気持ちいい。

ふわふわした雲の上にいるような、あるいは波間にゆらゆら漂うような心地がする。

あまりの幸福に笑いだしたくなったり、時には彼への愛で胸がいっぱいになって泣きそうになることもある。

体を繋げるたび、新しい発見があって面白い。この前は承太郎の脇腹に小さなほくろを見つけた。

何度セックスしてもいつも新鮮で、全く飽きることがない。彼と体温を分け合うことが楽しくてしょうがない。

 

今日も洗濯機を回し始めたらすぐに、掃除を終えたらしい彼に呼ばれた。

はいはい、と小走りでリビングに向かえば、承太郎がソファに寝そべりながら、ぼくをしきりに手で招いている。

その脚の間が、既に窮屈そうに膨らんでいて、ぼくはとても嬉しくなる。

 

「もう、朝もしたのに悪い子だな」

 

ぺろりと興奮で乾いた唇を舐め、彼の上に跨ると、我慢ならないのか承太郎は大きな手で僕の腰を掴み、熱い塊を裸の尻に擦りつけてきた。

 

「ちゃんと部屋を綺麗に掃除したんだ、ご褒美をもらってもいいだろう」

 

腰に響く低音でそう囁く彼の目は、欲情にとろとろ蕩けている。

こういう時、彼は尻尾を振りながらご主人様に褒めてもらうのを待つ大型犬みたいでかわいい。

承太郎は典型的な「褒めて伸びるタイプ」のようで、料理や掃除を頑張ったご褒美に彼のリクエスト通りのプレイや体位をしてあげていたら、めきめき家事の腕が上達してきた。

 

ぼくとエッチがしたくて、一生懸命頑張る承太郎を見ていると、こちらとしても全力で応えてあげなくちゃ、と思う。

よしよし、と帽子を取って頭を撫でてやると、承太郎がカットソーをめくってぼくの胸に吸いついてきた。

本当は乳首が大きくなってしまうから、あんまり吸ってほしくないのだが、嬉しそうな彼を見ているとまあいいか、と思ってしまう。

その間にぼくは承太郎のジッパーを下ろし、ズボンも下着も脱がせないで、器用にお目当ての物を取りだした。

 

「もう準備万端だね……」

 

ぶるりと勢いよく飛び出してきたそれは、赤黒いボディに血管を浮かべ、ガチガチに硬くなっていた。

根元をぼくがそっと触ると彼のペニスはピクピク動いて、先端からじわりと粘液を溢れさせる。

早くぼくの中に入りたくて、うずうずしているそれを見ると、ぼくも堪らなくなってくる。

カットソーのポケットから取り出した使いきりのローションの封を切り、手早く後ろを慣らす。

 

「っふぁ……きょ、今日は……どう、するんだい……」

 

ぼくが上で動けばいいのかい、と切れ切れに問えば、胸から口を離さずに目だけで承太郎が肯定を返す。

こういう時ほんのちょっとだけ、ぼくはもう少し恋人の口数が増えればなあ、と思う。

それでもわかった、と答えて彼のよく鍛えられた腹に手を置こうとすると、一回り大きな手に阻まれる。

ぎゅっと指同士を絡ませて両手を握られ、ぼくは戸惑う。

 

「……も、もしかして、手は禁止なのか……」

 

ん、とこれまた胸から口を離さず、承太郎が今度は声に出して返事をした。

だからぼくは羞恥心でどうにかなりそうになりながらも、脚だけで体重を支え、おそるおそる腰を落とさねばならなかった。

 

「う、うぅ……」

 

深く折り曲げた脚が、ぶるぶる震えている。

承太郎の腹に手さえ付ければ、体重を前にかけながらゆっくり飲み込めるのに。

何度彼と騎乗位で繋がったかわからないけれど、こんな風に挿入するのはやっぱり怖い。

腹の奥まで串刺しにされそうだ。

 

おそるおそる腰を下ろしていくと、ちゅぷ、と先端が僅かに潜り込む。

承太郎のペニスは十分な硬度があるから、手で支えなくてもこのまま行けば全部入るのだろうが、ぼくは完全にビビってしまって、そこからどうにも進めなかった。

 

「うぐ……」

 

だらだら、と額を汗が伝う。

だがぼくの心とは裏腹に、後ろは早く満たしてほしくてはしたなく口をパクパクさせていた。

承太郎はというと、王者の風格でそんなぼくの様子を楽しそうに下からじっと見つめている。

しかしご褒美といった手前、ここでまごまごしているわけには行かなかった。

ぼくは承太郎の手を強く握り返し、キッとそのグリーンアイズをにらみ返すと、一息に体重を落とした。

 

「うああっ」

 

にゅぐぐ、と卑猥な音を立て、肉襞をかき分けて承太郎が押し入ってくる。

衝撃が電流のように背骨を伝って脳を揺さぶる。ぼくは天を仰ぎ、大きく胸を上下させて喘ぐしかない。

 

「ふっ……こりゃあ、ちときついな……」

 

苦しげに眉を寄せ、それでもなお楽しそうに承太郎はにやりと笑う。力抜け、と彼はやさしく諭すように言うけれど、ぼくはできないよと頭を振った。

 

「だって、こんな、う、あ、ああっ……」

 

ぐぐ、とぼくの中で承太郎が更に大きさを増し、気持ちいいところが押し上げられて、ぼくは悲鳴を上げる。

折り曲げた脚が限界を訴え、踏ん張りが利かない。

腹の中が熱い。体の中に太い楔が打ち込まれていて、身動きが取れない。

もうおれの上に座っちまえ、と承太郎にぐいと手を引かれるまま、ぼくの尻が完全に彼の腹につく。

凶悪な承太郎のペニスが根元まで中に埋め込まれる。

 

「あああっ」

 

瞬間、目の前で火花が散ったような気がした。

何もかもが白く塗りつぶされ、ぼくの体は一瞬重力から解放され、軽やかにどこまでも飛んで行ってしまう。

ひどく体が自由で、何でもできる気がしてくる。凄まじい幸福感がぼくを襲い、自然と頬が緩む。

ついで、ものすごい力で再び地上に引き戻された。

 

「おい、花京院、大丈夫か」

 

ぺち、と頬を叩かれ、何度か瞬きをしているうちにぼんやりとした視界がクリアになると、承太郎が心配そうにぼくを覗きこんでいた。

彼の胸には白く濁った液体が点々と飛び散っており、青臭いにおいがぼくの鼻を掠めた。

 

「あれ……」

 

ぼく、承太郎とセックスしていて、それで……ぼんやりと頭にもやがかかっていて、よくわからない。

ただ腰がじん、と甘く痺れている。

ひどく気持ちよくて、体の中にあたたかく幸せな蜜をたっぷりと注がれたように、ぼくという器が満たされている。

 

「悪い、無理させたな」

 

未だ状況が飲み込めないままぼーっとしていると、おれが動いてやるから、と体を抱え直される。

ソファの上に座った承太郎にだっこされて、何だかぼくはそれがとても嬉しくて彼にぎゅっとしがみつく。

優しく揺すられて、自然に声が出た。

 

「あ、あっ……きもち、あ、ふぁ……じょうたろ、あ、すき、そこすき……」

 

ぱちゅぱちゅ、とぼくと承太郎の肌がぶつかりあって、規則的に音が鳴る。

彼の下生えが擦れてくすぐったい。思わずふふ、と笑うと承太郎が楽しそうに覗きこんできた。

 

「気持ちいいか」

 

鼻同士がくっついてしまうような距離でそう尋ねられて、ぼくも楽しくってうん、と答える。

すごくいいよ、溶けちゃいそうだ、と伝えたら、溶けちまったら困る、と承太郎がぼくを逃がさないように強く抱きしめてきた。

そのままトントン、と奥を突かれて、笑い声みたいな喘ぎが漏れた。

仰け反った喉仏に承太郎が甘く噛みついてきて、思わずぎゅうと彼を締めつけてしまう。

ありありと粘膜で感じる彼のペニスは、大きくて硬くて熱くて、火傷しそうだった。

 

「あ――っ、あ、あっ、すごい、あはっ……も、でちゃう」

 

ぞくぞくと背骨が浮き立ち、体が勝手に震える。承太郎に縋りつくものの、汗で滑り落ちそうになって思わず爪を立てる。開きっぱなしになった口から、引っ切り無しに限界を訴えれば、おれも、と熱っぽい掠れた声で返された。

 

「中に、出していいか……」

 

耳元で囁かれ、恍惚の海に浸った頭で必死に、出して、と強請る。

君の精液ほしい、いっぱい出して、ぼくの中に下さい。ほとんど叫ぶみたいに、ぼくは彼を求める。

それを聞いて、にんまりと嬉しそうに笑う承太郎が愛しい。こういう時ばかり、彼は悪戯好きな子供の顔を見せる。

 

イク、と小さな声で訴えた時にはもう、自分の力ではどうすることもできない大きなうねりが体を襲っていて、ぼくはただ目を瞑ってその甘く幸せな嵐に身を任せるだけだ。

ガクガクと体が痙攣し、一度も触れられていないペニスから欲望が弾け飛んでいく。

とめどなく脳内麻薬が放出され、ぼくはだらしなく口を開けたまま、それを甘受する。

 

同時に腹の奥の方から甘美な蜜が溢れ出て、全身を満たしていく。気持ちいい。

あまりに気持ちよすぎて、こんなに人間の体は快楽を感じることができるのだ、とぼくは毎回感動してしまう。

そのままぐったりと体を弛緩させ、恍惚と余韻に浸る。

 

すると承太郎がぼくの上に覆いかぶさってきて、満足げにため息をついた。

こんな風に彼が全身の力を抜き、ぼくに身を預けてくれるのが嬉しい。

繋がったまま二人してソファにもたれ、ふうふう荒い息を吐く。

 

少しずつ落ち着いてくると、そういえば最初は騎乗位のはずだったのだ、と思いだしてきて、申し訳ない気持ちになってくる。

上手くできなくてごめん、と小さく謝ると、承太郎がやさしく髪を撫でてきた。

 

「次の楽しみに取っておくぜ」

 

いいご褒美だった、ありがとな、と労わるみたいに額にキスされると、ぼくはさっきまでの落ち込んだ気分も吹き飛んで、また頑張ろう、と思えてくる。

承太郎好きだよ、と彼の太い首に腕をまわせば、おれも愛してる、と情事に潤んだ瞳で情熱的に返された。

 

おしまい

 

 

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