top of page

注意①EoH(アイズオブヘブン)のストーリーモードのラストまでのネタバレを含みます。未プレイの方は、読んでもさっぱり訳がわからないかもしれません。すみません。

 

注意②花京院が下半身だけ女体化しています。妊娠もします。しかし花京院は自分のことを男だと信じて疑っていません。後天性女体化、といっていいのかわかりませんが、そんな感じです。

 

注意③承太郎が病みモード全開です。承花的にはハッピーエンドです。

 

EoHを今さらなのですがクリアして、色々悩んであのラストを承花の民としてどう解釈すればいいか、ごろごろもだえた結果がこれです。

勢いのまま書いたので、説明不足でわかりづらいところもあるかもしれません。

少しでも伝わっていただければ幸いです。

 

 

 

「承太郎!」

 

カイロ国際空港でおれに走り寄ってきた花京院は、DIO戦で受けた傷も癒え、一カ月の入院生活ですっかり体調が回復したらしい。走るフォームも安定しているし、声からして元気そうだ。

紅潮した頬は好物のチェリーにも似て鮮やかだったが、それでも心配なので、無理矢理サングラスをとりあげて瞳を確認すると、砂漠でンドゥールにやられた傷も、目を凝らさなければわからないほどになっていた。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたんだい」

 

おれに至近距離でじっと顔を見つめられ、花京院が恥ずかしそうに身を捩る。

しかしおれは逃げようとする腰を掴み、ぎゅうと細い体を抱きしめた。

彼のつむじに顔を埋め、肺いっぱいに息を吸うと、砂の匂いに混じって彼自身の花のような甘い香りがする。

 

「……よかった」

 

自分が思ったより、随分と弱弱しい掠れた声が出て、腕の中で花京院が息を詰めた。

大げさだな、と茶化そうとした彼の手が、ゆっくりとおれの背に回され、しっかりと抱き返される。

 

「……うん」

 

みんな生きてDIOに勝ったんだ、そう花京院に言われて、そうだなと返しながらしかし、おれは上書きされる前の世界を思い返していた。

あの基本世界でおれはたしかに、冷たくなった花京院の死体を、体中のほとんどの血液を失ったせいか青白く蝋のような彼の死に顔を、この両目に焼き付けたのだ。


 

DIOが上書きした真実を、まやかしだと言いきったあの時のおれが、今のおれを見たら呆れかえるだろうか。

真実に入門し、真実を書きかえる力を得、自分に都合のよい世界を作ったおれは、あの最低最悪な吸血鬼と結局は同じなのではないかと、この一カ月の間考えない日はなかった。

 

どうやらあの基本世界の歴史を、そして天国に到達したDIOとの戦いを体験したやつは、おれ以外に誰もいないようであった。

アヴドゥルとイギーと花京院が、一度死んだことを覚えているのはおれ一人だけだ。

だが代わりに、おれはどうやってこの世界で彼らが生き延びたのか、その記憶があいまいになっていた。

 

この、自分以外に誰も基本世界であったことを覚えていないというのは、かなり精神にクるものがあり、日本に帰ってきた今でも、おれは花京院の死んだ姿を夢に見て飛び起きることがしばしばだった。

そうなるともういてもたってもいられず、いつもの通学路で彼を待つことなく、おれは彼の家まで花京院を迎えに行く。

そうして呼び鈴を鳴らして、何事もなく花京院がひょっこりあの赤毛を覗かせてようやく、ほっと安心するのだ。

 

「……承太郎、何か悩みでもあるんじゃあないのか」

 

最近、いつも怖い顔をしているよ、と屋上で昼飯を食べ終わった時に、思いつめたように花京院が話しかけてきた。

 

「ぼくにも話せないようなことなのかい」

 

花京院はそう言って、切なげにすみれ色の瞳を揺らす。

その時のおれの気持ちを何と言えばいいのか。

全てを話して楽になりたいという気持ちと、これ以上彼に余計な心配をさせたくないという気持ち。

花京院なら理解してくれるだろうという気持ちと、知らなくていいことは、知らないままでいいのではないかという気持ち。

複雑なマーブル模様を描く心を持て余し、おれはどうしてよいかわからなかった。

 

「……お前が、おれの側からいなくなっちまうんじゃあねえかと……心配なんだ」

 

彼を混乱させるような話は避け、切れ切れに絞り出すような声でそう告げると、突然花京院がおれの手を握ってきた。

あたたかな血の通ったその手に驚いて彼の顔を見ると、花京院は困ったようにほんの少し眉をしかめ、頬を赤らめていた。

 

「ぼ、ぼくはどこにも行かないよ……承太郎さえよければ、その、ずっと一緒に……」

 

花京院は恥ずかしいのか最後まで言えず、下を向いて黙り込んでしまう。

そのチェリーのピアスがぶら下がる耳が、かわいそうなくらい赤くなっていて、おれは堪らなくなって彼を掻き抱いた。

 

「好きだ」

 

そう告げると、花京院の体がびくりと強張る。

 

「あ、あ……ぼくも、ぼくも好き……」

 

夢みたいだ、と涙声で呟く花京院に、その確かな存在と体温に、この上ない幸せを感じつつ、しかしおれは心のどこかで、この花京院はおれと一緒に50日の旅をした花京院と、はたして全てが同じだと言えるのだろうか、とぼんやり考えていた。


 

だが、花京院と恋人になれたのは純粋に嬉しかった。

花京院の涼やかな低い声も、少し気取った話し方や、他人に対する気遣い、ぴんと伸びた背筋、揺れる一房長い前髪や、すみれ色の瞳、その何もかもが記憶の花京院と同じままなので、おれは安心しきっていた。

天国に到達したDIOとの戦いや、基本世界の方がまやかしなのではないか、あれは全ておれの夢だったのではないかとさえ、思い始めていた。

 

ある日、今日は親がいないんだ、と連れてこられた花京院の部屋でベッドに誘われた時、おれは気が動転し、頭が爆発しそうになっていた。

彼とこんなことになるなんて、思ってもみなかったのだ。

覚束ない手で彼の制服に手をかけた時、花京院も同じように緊張しているのか、彼はさざ波のように体を震わせた。

 

「ぼくの体、傷だらけだから……君を、がっかりさせるかも」

 

は、は、と犬みたいな短い息を漏らし、頬を赤らめる花京院にそんなことはねえ、と掠れた声で囁いてやる。

興奮しすぎて衝動を抑えきれず、彼の脚の間に股間を擦りつけると、そこはおれと同様熱を持ってはいたが、おれはふと違和感を覚えた。

 

「……?」

 

薄く平たい胸を揉みながら、もう片方の手で下着ごと制服のズボンを脱がせる。

ドクドク、と心臓が高鳴り、汗が頬を伝う。薄い茂みに覆われた花京院の秘所は、おれと違って一筋の線があるだけだった。

 

「あ、あ、ひ……っ」

 

目をつぶって小さく喘ぐ花京院は、おれがひどく驚いているのに気づいていないようだった。

ぷくりとしたやわらかな肉を左右に開くと、つやつやとしたピンク色の粘膜が現れ、そこはおれの視線に恥ずかしそうにひくりとうごめいた。

 

「……」

 

しとどに濡れそぼったひそやかな穴に、そっと触れるとにちゃりと糸が引く。

ぬるぬるとした粘液を塗り広げるように、指で小さく円を描けば、ますます透明な液体が溢れ出てきた。

 

「……花京院」

 

震える声で呼びかけると、花京院がそっと目を開ける。

どうしたんだい、と不安げな花京院に、おれは意を決してこう尋ねた。

 

「お前、女だったのか」

 

瞬間、花京院は目を見開き、それからあの少し変わった笑い声を上げた。

心底おかしくてしょうがない、という顔だった。

 

「何言ってるんだい、承太郎。ぼくは男だよ」

 

そう告げる花京院の目は、どこまでも澄みきっていて、何の疑問もいだいていないように見えた。

花京院はおれの手を取ると、ぬるぬるした穴の上、小さな芽のような器官に導く。

 

「ほら、ここにペニスもついてるだろ……」

 

そう言っておれの指先に触れた突起は、愛撫を待ち望んでいるかのようにぷくりと腫れていた。

しかしそれはどう見ても小指の先端ほどの大きさもなく、ペニスには到底見えなかった。

おれは鈍器で思いきり頭を殴られたような、冷たい手で心臓を握りこまれたような気がした。

 

だが、もうそんなことはおれにはどうでもよかった。

真実も、上書きも、基本世界も、何もかもがどうでもよかった。

目の前に居るのが、おれの都合のいいように改変された上書きの花京院であっても、それがどうしたという気分だった。

まやかしでも、偽物でもいい。花京院がただ存在し、おれを愛し、おれのために体を開いてくれているだけで十分だった。

 

おれの中で何かが吹っ切れ、やり方もわからないまま、彼の体を押し倒し、本能のまま屹立したペニスを擦りつける。

がむしゃらに腰を振れば、何度かぬるぬるとした割れ目の上を滑った後、ずぷんと熱く濡れたやわらかな粘膜に包まれた。

 

「ああ……っ」

 

悲鳴を上げて、花京院が首を振る。彼の背が美しく弓の形を描く。乱れた髪がシーツの上に散って、目に鮮やかだ。

狭く、みちりとした肉を無理矢理こじ開けて行くと、根元まで飲み込まれたようで、ばつん、とおれの下腹が彼の尻に当たる乾いた音が立った。

 

「花京院っ……ほら、全部、入った、ぞ……っ」

 

ぐっと奥まで突き入れると、花京院が高い声を上げて体を震わせた。

だがおれは気にせず、征服するように何度も中を掻き回す。

奥を突くたび、とめどなく愛液があふれてきて、じゅぷ、ともにゅぷ、ともつかぬ卑猥な水音が立ち、花京院は声を耐えるように、その横に広い口を手の甲で押さえている。

 

「我慢するな……声、聞かせてくれ……」

 

かきょういん、と殊更低く、ねだるような甘い声を耳に吹き込むと、ぎゅううと中が締まる。

無理だ、と涙目で訴える花京院が可愛くて、いとしくて、胸がいっぱいになる。

彼の引き締まった尻を鷲掴みガンガン責め立てると、無意識なのだろう、律動を緩めようと彼の長い脚が腰に絡みついてくるが、それはますますおれを煽るだけだった。

 

「あ、あっ、ああっ、も、らめ、イク、イっちゃう、と、とまって」

 

限界が来たのか花京院がうろたえだすが、おれは容赦なく更に抽送のスピードを速めた。

花京院は過ぎた快楽に泣き叫び、混乱し、おれの背に爪を立てて大きく体を痙攣させた。

 

「ふあぁぁぁっ」

「く……っ」

 

瞬間、今までにない締めつけがおれのペニスを襲い、次いで搾り取るように花京院の粘膜が力強くうごめいた。途方もない快楽の波が押し寄せてきて、視界が真っ白に染まる。このまま死んでもいいとさえ思う悦楽の境地に上りつめ、おれはその恍惚に身を任せ、思うさま精液を彼の中に注ぎ込んだ。

 

「ああ……っ、なに、おなか、あつい……」

 

胎の中にどぷどぷと白濁を流しこまれ、ぶるっと花京院は体を震わせた。困惑する彼とは対照的に、彼の性器ははじめて割り開かれたというのに、一滴たりとも精を逃すまいと、淫らにきゅうきゅうとおれのペニスに吸いついていた。

 

「は……っ」

 

全てを出し切った後も、離れがたくて何度か抜き差しすると、花京院が小さく喘ぐ。

絶頂の余韻に上手く力が入らないのか、ぐったりとベッドに身を預け、全力疾走した時のように荒い息を零す花京院の乱れた髪を指で梳いてやると、彼の目が段々とろんとしてきた。

 

「はじめてだから、ガッついちまった……」

 

すまねえ、と謝ると花京院がぶんぶんと首を横に振る。

彼はりんごみたいに頬を真っ赤にして、何か言いたそうに口をパクパクさせたあと、ようやく小さな声で気持ちよかった、と告げた。

おれは繋がったまま、感極まって何度も彼にキスを送り、すっぽりと腕の中に花京院を抱きかかえて、この幸せを二度と手放さない、と自分自身に誓った。


 

高校を卒業して花京院と暮らし始めて、はや二年がたつ。

ある日、腹を押さえて思いつめたような顔の花京院に呼ばれ、リビングに向かうと、おれの前にほとんど一面が真っ黒な、画像の荒い写真が差し出された。

 

「承太郎、驚かないで聞いてほしいんだ」

 

ぎゅ、と膝の上で拳を握りこんだ花京院が、次に何を告げるか、おれにはとうにわかっていた。

そう、あの17のとき、DIOを倒して花京院が生き延びたあの時点から、おれには未来がどうなるかなど、すべてわかりきっていたのだ。

 

「最近、ずっと体がだるくて、それでSPW財団の健診を受けたら……その……」

 

子供ができたんだろう、おれが静かにそう言えば、花京院は驚きに目を見開いた。

強張る彼の肩を掴み、優しくキスをする。

 

「その、おかしいよな……ぼくは男なのに、こんなことになるなんて」

 

母になる戸惑いに、不安げに揺れる花京院の目を覗きこみ、おれは優しく言い聞かせる。

やさしく、子供に言い聞かせるみたいに。

 

「おかしくなんかねえ、きっと神様からの贈り物だぜ」

 

楽しみだな、とまだ薄く平らな腹を撫でると、花京院の表情が和らぐ。

やはり慣れないことに不安なのだろう、おれが守ってやらなければ。

 

「男の子かな、女の子かな」

 

きっと君に似てるだろうね、と微笑む花京院に、胎の中の子供は女なのだろうと確信しつつ、おれはこの上ない満面の笑みを、彼に返してやるのだった。

 

おしまい

 

bottom of page