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俳優パロです。

クルセイダースのみんなが俳優で、ご都合主義で、役の名前と俳優の名前は同じです。

そんなもんかなと思ってください。

 

注意:劇中劇で、承太郎と花京院が徐倫ちゃんを口説くシーンがあります。

 

 

 

おれはその日、すこぶる機嫌が悪かった。

なぜなら目の前で恋人が、女を口説いているからである。

 

おれの恋人――花京院典明は今、真黒な学生服を身に纏い、美しい銀糸のような髪と同じ色をしたフレームのメガネをかけ、彼とそう背の変わらない少女に、愛の言葉を囁いていた。

 

「君の存在が、どれほどぼくの心をかき乱しているか…貴女には、わからないんでしょうね」

 

寂しそうな表情を浮かべ、花京院は戸惑う少女を壁際へ追いやる。少女を逃さぬように片腕を壁につき、そっと顔を寄せて彼は吐息をこぼした。

 

「好きです…」

 

絞り出すように花京院がそう呟き、カメラがぐっと2人に寄る。

震える花京院の細い指が少女の顎にかけられ、薔薇色の唇が重なろうかという瞬間――

 

「はい、カーット!!オッケーです!」

 

監督の大きな声がスタジオに響き渡り、わあっと歓声が湧いた。

 

「花京院君、すごく良かったよ!みんな君の演技に釘付けだよ!」

 

素晴らしい映画が取れそうだ、と監督は満面の笑みを浮かべて花京院の肩を抱いた。

おい、おれの花京院に近寄るんじゃあねえ、とガンを飛ばすも、当の花京院はおれを諌めるように、ちらっとこちらを見たあと、そんなことないですよ、と照れ臭そうにしている。

花京院に告白されていた少女役の女――おれの親戚だが――空条徐倫も花京院を褒め称えた。

 

「お芝居なのに、私もドキドキしちゃったわ」

 

猫のような大きな目を花京院に向け、徐倫が彼に笑いかけるのも気に食わない。

おめえにはファッションセンス皆無の、ロン毛の彼氏がいるじゃあねえか、さっさと花京院から離れやがれ。

 

イライラしながら体を揺すっていると、見兼ねた花京院がスタッフに会釈してこちらにやってくる。

いつもは赤毛の彼の髪が、今は銀に染められていてキラキラと眩しい。

 

「ちょっと、どうしたんだい承太郎…大人気ないぞ」

 

おれたちが付き合っていることは、スタッフの間じゃあ公然の秘密になっていたが、彼は人目を気にしてヒソヒソと話しかけてきた。

おれはそれも気に食わなくて、眉間に思い切り皺を寄せてしまう。

 

「…恋人が、目の前で女を口説いてりゃあ、誰だってこういう顔と態度になるぜ」

 

ふん、と鼻を鳴らして彼を睨めば、花京院はあんぐりと口を開けて驚いた顔をした後、ぷっと吹き出した。

 

「何言ってるんだい、承太郎…嫉妬したのかい?フハハッ、お芝居だよ、お芝居、クックックッ、ああおかしい」

 

心底面白そうに花京院は笑う。

おれの気も知らないで。

 

「おいおい、そんなこと言ってるがな、午後にはおれが徐倫を口説くシーンもあるんだぜ…その時にも、おめーが今みたいなことが言えるかどうか、試してやる」

 

すると花京院は、笑いすぎて思わず溢れた涙を拭いながら、

 

「ぼくが何年この仕事やってると思ってるんだい?カメラの前の偽物の恋人に、嫉妬するわけないだろう」

 

と言うものだから、おれもムキになって

 

「その言葉、覚えておけよ」

 

とだけ言って、冷静になろうと自分の楽屋へ引っ込んだ。

 

 

 

 

なんだか無性に腹が立って、昼飯の弁当も大して食わずに楽屋の畳の上で寝転がっていると、コンコンとノックの音が響いた。

もしかして先ほどの一件で花京院が謝りに来たのか、意外と可愛いところがあるじゃあねえか、と跳ね起きて扉を開けると、そこにはよく見知った女がいておれはガッカリした。

 

「あら、ずいぶんなご挨拶ね。こんな美人が目の前にいるんだから、少しは嬉しそうな顔しなさいよ」

 

と徐倫は言った。

おれはそれには答えず、再び畳に寝転がる。

その様子を見て、徐倫はやれやれだわ、と肩をすくめた。

 

「さっき、花京院君とケンカしてたでしょう、私見たんだから」

 

彼女はおれをなじるようにそう言った。

 

「どうせまたあんたが悪いんでしょう…撮影が終わったら、早く謝りなさいよ」

 

もうセットいりの時間なんだから、ちゃんと準備しなさいよね、と徐倫は言って、部屋を出て行く。

何なんだ、あの女は。

おれは晴れない気持ちのまま、仕方なく起き上がるとのろのろと準備を始めた。

 

 

 

あんなことがあったせいか、午後の撮影にはまるで身が入らなかった。

いつも一発OKが多いのに、珍しいこともあるもんだなあ、と監督は言い、調子でも悪いのかと心配されてしまった。

プロとしてあるまじきことだ。

徐倫はイラつきを隠そうともせず、3回めのテイクでおれの脛を蹴ってきた。

 

「ちょっと、全然身が入ってないじゃない」

「…すまねえ」

「花京院君も見てるんだから、しっかりしなさいよ」

 

徐倫はバシッとおれの背を叩いた。

それから急に真面目な顔になると、

 

「…あたしじゃあなくて、花京院君に言うつもりで演技するのよ」

 

ぼそ、と彼女はおれだけに聞こえるようにそう言って、音のしそうなほど長い睫毛を上下させた。

おれは一瞬面食らったが、早くしなさい、と彼女に急かされて、必死に目の前に花京院を思い浮かべる。

肌の白い彼が恥ずかしそうに頬を紅潮させ、おれの腕の中にいるとしたら、おれは何と言うだろうか。

 

シーン48、スタート、と威勢のいい声がして、おれは徐倫の向こう側にいる、幻の花京院を見つめる。

彼の熱を、匂いを想像すると、自然と体が動いた。

 

ほっそりとした腰に手を回し、ぐいと体を引き寄せる。

こうすれば彼はきっと、驚いたような視線を向けるだろう。

そうしたらおれは欲に濡れた瞳を向けてやるのだ。

 

二人の視線が絡み、瞬時に空気が甘い重さを孕む。

顔に落ちかかる前髪を耳にかけてやりながら、熱っぽい息を吐く。

 

「…あまり、おれを煽るんじゃあねえ、抑えがきかなくなっちまう」

 

愛しい番の首筋に、所有印を残そうと噛みつく獣のようにそう呟く。

びくりと一瞬だけ腕の中の体が強張るが、すぐにおれに答えるように背中に手が回る。

キスをねだるように小さく唇が開かれ、おれは乱暴に頭を掻き抱くと顔を寄せた――

 

「カーット!」

 

監督の大きな声に、ハッと我に帰る。

完全に役に入り込んでいた。

 

甘く艶めいた空気に、固唾を飲んで見守っていた現場の緊張が解ける。

未だ夢を見ているような気持ちで腕の中を覗けば、やればできるんじゃあないの、と徐倫が苦笑した。

 

「いやー承太郎君、さすがだね!見違えるようだ、撮り直した甲斐があったよ!」

 

こりゃあヒット間違いなしだな、と嬉しそうな監督に、おれはお手間をとらせてすみませんでした、と頭を下げつつ、花京院の姿を探した。

すると視界の端でちらりと黒い学ランが翻り、おれはスタッフに軽く挨拶を済ませると、急いでその姿を追った。

 

 

「花京院!」

 

早足で廊下を進んでいく花京院を必死に追い、彼の腕を掴む。

 

「おい、何でいなくなっちまったんだ…」

 

先ほどから何度も名前を呼んでいたのに、となじろうとして、おれは振り向いた彼の顔を見て言葉を失った。

 

「泣いてんのか…」

 

すん、と鼻をすすった花京院は、真っ赤になった目で泣いてない、とぶっきらぼうに答える。

ぽろぽろと止めどなく溢れる彼の涙を、掌で掬ってやると、花京院はそっと目を閉じた。

真珠のような涙が零れるたびに、それがキラキラと光を反射して、綺麗だ、とおれは思う。

何も言わずに彼を抱きしめ、背を優しくさすってやれば、おれの胸のあたりが、彼の涙で暖かく濡れていく。

 

「…ぼくの、負けだな」

 

ぐす、としゃくりあげて、花京院はそう呟いた。

 

「お芝居だから、へっちゃらだと思ってたのに…君と徐倫ちゃんが、びっくりするほど綺麗で、絵になってて、そしたら、急に寂しくなったんだ」

 

承太郎、と彼はおれの名を呼ぶ。

 

「好きだよ、好き…おねがい、ぼくのこと、嫌いにならないで」

 

震える小さな声は、いつもの彼からは想像もつかないほど弱々しい。

普段周りに気を遣って、我侭を言わない彼のささやかな望みに、おれは胸を締め付けられる。

今は随分と小さく、か細く見える肩を抱き、おれは身をかがめて彼に口付けた。

 

「嫌いになるわけねえだろ…さっきだって、徐倫じゃあなくて、お前に言うつもりで演技したんだぜ」

 

うそ、と驚いたように声を上げる花京院の、涙のせいか熱い瞼に、すっと高い鼻に、薔薇色の頬に、そして震える唇にキスをする。

 

「…おれも好きだ、だから泣くんじゃあねえ」

 

ぎゅう、と強く抱きしめれば、腕の中からうん、と震える声が返ってくる。

花京院が落ち着くまでしばらくそうして待っていると、彼がおれの服を小さく摘まんで引っ張ってきた。

 

「…承太郎……その、今日、撮影が終わったら……ぼくの家に、来ないか」

 

覗きこんだ彼の顔が真っ赤で、おれはまさかと思う。

 

「い、今まで、覚悟ができず、待たせてしまって…すまなかった」

 

彼の言葉に、おれの心臓は高鳴り、頭がくらくらした。

これは、単に家に遊びに来いと言っているわけではないだろう。

 

行くぜ、と答えたおれの声は、情けないことに少しばかり裏返っていた。

花京院は、ふっと緊張を緩め、よかったと笑った。

 

 

 

花京院が一人で暮らしているマンションの、あまり家具もないシンプルな寝室のベッドに、おれは寝転がって天井を見ていた。

浴室からはザーザーとシャワーの水音が聞こえて、意識するまいと思っても、そのかすかな音はおれの耳にやけに大きく聞こえた。

 

花京院の家に来たのは、これが3回目だった。

1度目は、撮影の合間の本当にわずかな時間しか滞在しなかったから、彼が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、少しばかり話をしただけだった。

2度目は、撮影が長引いて終電を逃してしまったおれに、タクシーでこれから家に帰るのも疲れるだろう、と言って彼がこの部屋に泊めてくれた。

 

あの時は二人ともくたくたに疲れていたのに、1人用のベッドで身を寄せ合っているうちに、なんだかそういう気分になったのだ。

それで、まあそのなんだ、行為に至ろうとしたのだが、なにぶんお互いに経験と知識がなく、それに彼がおれの裸を見て怯えてしまったものだから、結局閉じ合わせた彼の太ももで擦って熱を吐きだしたのだった。

 

あれから、お互い口には出さなかったが、おれはおれで色々と勉強したし、彼もこっそり自分で練習しているようだった。

仕事も山のように入っているのに、彼がおれとのこういうことを大事にして、ちゃんと考えてくれているのが嬉しかった。

 

おれは財布の中からゴムと使いきりのローションのパックを取り出し、ベッドの横にさりげなく置かれたティッシュの隣にそれを置いた。

なんだか落ち着かずにそわそわとベッドの上を転がっていると、ややしてシャワーの音が止む。

 

どういう顔をして待っていればよいのかわからず、おれは浴室の前まで彼を迎えに行った。

ガラリと扉を開けおれを見た瞬間、花京院が跳び上がる。

 

「わあ!!じょ、承太郎……びっくりしたよ」

 

しっとりと濡れた肌に縞模様のパジャマを着た花京院が、頬を赤く染めて俯く。

これから脱がせてしまうというのに、律義に一番上までボタンを止めている彼が愛しい。

 

「わりい……待ちきれなかった」

 

彼の腰を抱き首もとに顔をうずめると、花京院が恥ずかしそうに「ベットで」と呟くので、おれは彼を横抱きにして寝室に向かった。

顔を覆ってわあわあ叫ぶ花京院に構わず廊下を進み、その体をベッドに下ろすと指の隙間からこちらを覗く彼と目があった。

 

堪らずキスしようとすると、彼の指が素早く閉じてまた顔を隠してしまう。

おれはそれがちょっと気にくわないが、まあいい、どうせすぐにそんな余裕もなくなるだろう。

 

プチプチと手早く彼のパジャマのボタンをはずし、さらけ出された彼の首筋を舐め、痕が残らないように気をつけながら軽く吸う。

ぴくりと強張る花京院の体を押さえつけ、そのまま唇を下に移動させてゆく。

筋肉と僅かな脂肪ばかりの硬い胸を揉み、色づいた先端を口に含むと彼の足がもどかしげにシーツを蹴った。

 

ふっ、ふっ、と段々荒く短くなる花京院の呼吸におれは機嫌を直し、そっと右手を彼の下腹に伸ばす。

急に性器に触ると驚くだろうから、くるくると掌を臍のあたりでしばらく遊ばせ、その後でパジャマの上から膨らんだ股間を撫でてやる。

布ごしでもわかるほど熱を持ったそこを、軽く、強く、緩急をつけて刺激してやると彼の口から喘ぎが漏れた。

 

「んっ……ふ、ん、んぅ…」

 

ちらりと花京院の顔をうかがえば、彼は片手でシーツを握り、もう片方の手を口にあてて声をかみ殺している。

横を向いて目を閉じているせいで視線は合わないが、紅潮した頬が彼の感じている喜悦を教えてくれていた。

花京院の興奮した声が聞きたくて、おれは下着の中に手を突っ込んで彼の薄い茂みを撫でる。

ゆるりと勃ちあがったペニスを直接刺激しないように、内腿を軽く引っ掻いてやれば、彼の爪先が跳ねあがった。

 

「あ、あっ…や、やだ、ひっ…」

 

びくん、と体を震わせ彼が頭を振ると、一房長い銀色の前髪が踊るように揺れた。

それでも構わずおれが愛撫を続けていると、彼がおれの手をとる。

驚いて花京院を見上げると、彼は大きな口をぎゅっと真一文字に結んで視線を泳がせ、それからそろそろと、おれの手を彼のペニスに導いた。

 

恥ずかしそうに目を伏せる彼をもっと困らせたくて、おれはそれを握ることもせず、ほんの少しだけ指先を触れさせたまま、動かない。

すると花京院は瞳を潤ませ、焦れたように腰をくねらせた。

 

「な、なぁ…承太郎」

「どうした」

「その、さ、触ってくれないか…」

 

もじ、とおれの手を挟み込むように太腿を擦り合わせ、花京院はそう言った。

 

「…どこを触ればいいのか、言っちゃあくれねえか」

 

にやにやしながらそう問えば、花京院がおれを睨む。

 

「わかるだろ…おねがいだ、早く…」

 

すり、とおれの手に屹立したそれが当たるように、彼は腰を振った。

おれはことさらゆっくりと下着ごと彼のパジャマを脱がせ、花京院の耳に息を吹きかける。

 

「言えよ…」

 

ぬちゃりと糸を引く、彼の性器の先端を軽く指で擦りながら、おれは囁く。

花京院はぎゅうと目をつぶり、息も切れ切れに喘いだ。

 

「あ……あっ」

 

はくはく、と陸に打ち上げられた魚のように口を震わせ、彼が何事か呟く。

 

「ん?」

 

花京院の蕩けた表情に、ぞくぞくと背骨が震え、おれの口角は自然と上を向いた。

切羽詰まったように彼がおれの首に手を回し、ぐいと顔を引き寄せる。

 

「     」

 

ぽそぽそと集中しないと聞き逃してしまいそうな小さな声で、花京院は淫らな言葉を吐いた。

いつも禁欲的な雰囲気を纏い、物静かで理知的な彼が発したその言葉に、おれは満足してご褒美にキスをしてやる。

 

「よくできたな…」

 

頑張った彼を褒め、刺激を待ち望んで涎を垂らすペニスを強く扱いてやると、花京院が気持ちよさそうに吐息を零す。

体を焦がす快楽の炎に羞恥心も薄れたのか、花京院はもう声を抑えなくなっていた。

 

「ああっ、あ、あ、はぁっ…じょうたろっ…ん、んぅ、き、みもっ」

 

完全に理性のぶっ飛んだらしい花京院が、そのほっそりとした手でおれの股間を撫でる。

苦労しながらも彼はおれのズボンのチャックを下げ、彼と同じように張り詰めているペニスを取り出した。

 

「うしろ、さみしい…っ、ふっ、ん、んんっ…い、れて…」

 

さっき、慣らしたから、と彼はもう片方の手で尻を割り開くと、ゆらゆらと腰を揺らしておれを誘う。

その刺激の強すぎる光景にくらくらしながら、おれは乱暴にゴムをつけ、ローションの封を切って彼の蕾に塗りたくると、一息に中に飛び込んだ。

 

「うああ…っ」

 

ぐぐ、と腰に力を入れて奥に進むたび、彼の粘膜は柔らかく蠢いておれを飲み込んで行く。

先ほどのシャワーが随分と長かった理由をようやく理解して、おれは愛しさに思わず彼の唇に噛みついた。

 

「ふぐっ…ん、んふっ、ん、ん、んぅ」

 

恍惚と舌を絡ませ、おれの動きに合わせて腰を振る彼は凄まじい色気を放ち、おれを翻弄する。

初めてのくせに、もっと、もっとと貪欲に強請る彼に惜しみなく愛を与え、おれは抽送を早めた。

 

「じょうたろ、すき、すきっ…きもちぃっ、あ、あ、ああっ」

 

びくびくと体を震わせる彼に、おれも好きだと何度も囁きながら、激しく奥を突く。

腰が甘くしびれ、酸素不足の脳では、花京院の事以外何も考えられない。

全ての血流が下腹に集まるような感覚、彼と繋がった場所からドロドロに溶けるような感じに目眩がする。

衝動のままに花京院の体を揺さぶり、内壁にぎゅうぎゅう締めつけられておれは呻いた。

 

「じょうたろっ、も、ダメ、だっ、あ、ああ、でる、あ、あ、ああっ」

 

じっとしていられないのか頭を振り、快楽を逃がそうとする彼を押さえつけ、どんどんと追い込んでいく。

悲鳴をあげておれの下で体をくねらせる彼を見ていると、むくむくと独占欲がわいてきた。

こいつはおれのものだ、おれだけの花京院だ。

 

「ああ、やっ、でちゃう、でる、じょうたろっ、あ、あ、ああ――っ」

「…っ」

 

おれの腰に脚を絡め、腹筋を波打たせて彼がぴゅくぴゅくと精を放つ。

弓なりに体をそらして絶頂を迎え、一際強く搾り取るように蠢く彼の粘膜に、おれも言いようのない悦楽を感じながら、熱を解放した。

 

 

 

ふうふう、と息を整えている花京院を抱き込むと、彼が笑って熱いよ、と文句を言った。

おれは聞こえないふりをして、そのまま彼のにおいを嗅ぐ。

 

「君ってさあ…思ったより、変態だな」

「そうか?」

「そうだよ」

 

言葉の割に、彼はにこにこと上機嫌だ。

 

「ねちっこいし、意地悪だし、変な言葉、言わせようとするしさ」

 

そのあともつらつらと、先ほどのセックスについて振り返る彼の言いたいように言わせ、しばらく待った後に、

 

「でもそんなおれも好きだろ」

 

と聞けば、もちろんと彼は嬉しそうに答えた。

 

おしまい

 

 

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