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「あ、あ……っ、ん……」

 

物音がして夜中にふと目が覚めると、おれの腹の上に花京院が乗っていた。部屋が薄暗くてよく見えないが、小さく声を漏らしながら彼は下腹をおれに擦り付けている、ようだった。ぎょっとして急速に意識が浮上するが、金縛りにあったみたいに体が動かない。

 

「あ、ああ……きもち、きもち……っ、はぁっ、じょ、たろ……」

 

ぐりぐり、と押し付けられる熱い塊に、まさかと思う。まるで乗馬でもするみたいに、腰を跳ねさせる彼は、片手をおれの腹につき、もう片方を後ろに回している。何かを掻き回すようなくちゅくちゅという水音が、真夜中の静まりかえった部屋の中でやけに響いていた。

 

「あ、あっ……ひあ、あ……」

 

花京院に気づかれぬよう薄目で確かめると、彼は下に何も身につけてはいなかった。下着も、パジャマさえも。おれに擦り付けられていたのは、やはり勃起した花京院のペニスで、それはしなやかな細長いフォルムを、薄い皮が慎ましやかに包んでいるのだった。

 

にゅるにゅると先端から溢れる先走りの滑りを借り、おれの腹筋に押し当てることで彼は自らを慰めている。右手はどうやら尻のあわいに伸びており、淫靡な音楽は激しく指を抜き差しすることによって奏でられているようだった。普段取り澄ました彼の顔は、今は赤く上気し、だらしなく蕩けきっている。ゆるく開いた薄い唇から、たらたらと唾液が顎を伝う。

 

そんな彼の媚態に当てられたのか、それともこの異様な状況がそうさせるのか、おれの性器も熱を持ち、むくむくと膨らみつつあった。花京院もそれに気づいたようで、彼は嬉しそうにおれのズボンの前を寛げると、ぶるりと飛び出たペニスにやわい尻を擦り付け始めた。

 

「あは、すごい……承太郎の……」

 

その後に彼の口から飛び出た卑猥な言葉に、頭の芯がかっと燃える。小さく体を震わせ、淫らな言葉を紡ぎながら、彼は発情した獣みたいに一心不乱に腰を振っている。先端に円を描くように尻を擦り付けたかと思うと、裏筋をほっそりとした指で弄びながら、何度も尻の間でペニスをなぞる。

 

「あーーっ、あ、あ、あっ、おしり、きもちっ、あ、んんっ」

 

おれが起きるのを怖れてか、最初は小さく控えめだった彼の声は今や無視できないほど大きくなっている。花京院は快楽を貪るのに夢中で、おれがじっくりと観察しているのに気づいていない。

 

「あ、あっ、ん、んんっ、あ、ひ、ひっ、ああっ、あ、あっ」

 

乗馬でもするように激しく腰を上下させ、己のペニスを扱きながら、なかなか絶頂が訪れないのか花京院はもどかしげに首を振り、一房長い前髪が淫らに揺れる。切れ長の瞼にきらりと涙の粒が光るのを見てとって、おれは不自然にならない程度に腰の位置を動かした。

 

「あっ!?」

 

ちゅぷ、とおれのペニスの先端が、僅かに花京院の中に飲み込まれる。途端、花京院がぶるりと体を震わせ、動きを止めた。逡巡するように視線がさまよい、ごくりと彼の喉が鳴る。

 

「あ……」

 

そろ、と花京院が脚を開き、遠慮がちにほんの僅かだけ腰を落とす。ぐぐ、と少し亀頭が埋まるものの、大きすぎたのかびっくりしたように腰が逃げる。

 

「っは……ふ……っ」

 

荒い息をこぼしながら、花京院は再び少し腰を落とす。くちゅり、という卑猥な水音に、聴覚が犯される。おれは生殺しのようなその刺激に、脳の芯がカッと熱くなる気がした。

気がつくとおれは彼の腰を鷲掴み、勢いよく下に引き下ろしていた。

 

「あぁあぁっ!!」

 

じゅぷぷっと根元までペニスが埋め込まれ、花京院は甲高い悲鳴をあげた。間髪入れずに揺さぶりながら下から突き上げると、驚いたように彼がおれを見つめた。

 

「い、いつから、おきて、う、ああっ、ひぐうぅっ」

 

ぎゅうぎゅう強く絞りあげられて、あまりの快楽におれも思わず低く唸る。熱く熟れた粘膜は、ペニスにぴったりと吸いつくようだった。いやらしい音を立てて思う様腰を振ると、次々に喜悦の波が襲ってくる。

 

「あ、あっ、やらっ、とまって、とまってぇ……っ」

 

ぐずぐず泣きじゃくる彼の甘い声に、うっとりと聞き入る。嫌だ嫌だと言いながら、さっきから花京院の腰は快楽を貪ろうと淫らに踊っていた。

 

「へこへこ腰振って、おれの体でオナってたのは……どこのどいつだ?」

 

ん?とわざと低い声を作って問いかければ、羞恥に彼の顔が真っ赤に染まる。呼応するように後孔がぎゅううと締まり、持っていかれそうになる。

 

「次は、二人でするって……っは、約束したよな……」

 

我慢できねえ悪い子は、ちゃあんとお仕置きしなくちゃあいけねえな。そう言ってガンガン突き上げると、面白いように花京院のペニスが揺れた。

 

「ごめっ、ごめんなさいっ、あ、あ、ああっ、ひとりで、オナニーして、ごめんなしゃい……っ」

 

許して、と舌足らずに懇願しながら、花京院が髪を振り乱して悶える。そのあまりの媚態におれも余裕を失い、発情した獣みたいにただただ腰を振りたくる。やわく膨らんだ器官を擦りあげるたび、引き攣れたように彼の腹筋が波打つ。

 

「あ、ああっ、イクっ、じょうたろの、おちんちんで、あ、ああっ、あーーっ」

 

びゅるる、と花京院のペニスが触れてもいないのに精液を飛び散らせる。口を大きく開け、びくびくと痙攣する体を逃さぬようにがっちりと捕まえ、おれは最奥に奔流を叩きつけた。吸い上げるようにうねる彼の体内に、大量の白濁を注ぐのは気が遠くなるくらい気持ちいい。

 

「あ…… 」

 

天を仰ぎ恍惚と体を震わせる花京院は、匂いたつような色香を含んでいた。ゆっくりと自身を引き抜くと、白く滑らかな花京院の内腿を、おれの精液がたらたらと汚していった。

 

「……今度から、オナニー禁止な」

 

したくなったらおれに言え、と告げれば、花京院が困ったように眉を寄せた。恥ずかしそうにもじもじと膝をすり合わせ、何か言いたそうにしている。

どうした、と優しく聞けば、花京院はほんの少し躊躇ったあと、小さな声でこう言った。

 

「も、もう一回、したい……」

 

耳まで真っ赤にして俯いた彼を、おれはもう一度腕の中に抱きかかえた。

 

おしまい

 

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