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昔々、ある所に花京院典明という男がいた。彼は見目麗しく健やかな青年だったが、妻も娶らず、人里離れた山奥に一人で住んでいた。週に何度か森に分け入って薬草なぞ摘んではそれを調合して、たまに村に下りてきて売ることで生計を立てていた。村の人々は謎の多い彼のことを、魔法使いと呼んでさえいた。財産といえば大したものはなかったが、彼は筋骨隆々とした黒毛の雄馬を一頭もっていて、その美しさたるや言葉ではとても言い表せないほどであった。その若い馬は名前を承太郎といった。



 

その日も花京院は承太郎に乗って森の奥の泉の傍に来ると、若木のようなしなやかな体を曲げて珍しい薬草を摘んでいた。生い茂った木々の隙間から漏れる太陽の光に、時折ストールで汗をぬぐいながら、せっせと彼は持ってきたカゴがいっぱいになるまで、白魚のような手を動かした。

 

彼のほとんど唯一の財産といっていい馬の承太郎は、主人が働いている間、草を食んだり、泉の水を飲んだり、あるいは退屈そうにうとうと眠ったりしながら、それでも大人しく花京院の仕事が終わるのを待っている。承太郎はその黒いつやつやとした毛皮の中で、二つの目だけが美しい緑色をしていた。

 

「ふぅ……」

 

東にあった太陽が、真上を通り過ぎてしばらくして、あらかた薬にできる植物を採り終えた花京院は、土の汚れを泉の水で落とすと、古い倒木に腰掛けて、遅めの昼食をとり始めた。中性的な顔立ちの中で、そこだけアンバランスに広い口を大きく開け、彼がサンドイッチを頬張っている間、彼の馬はじっと主人である花京院を見つめていた。

 

花京院はそれに気づいているのかいないのか、ブーツの先をゆらゆら遊ばせながら、殊更ゆっくりとパンを咀嚼している。一房長い彼の前髪が、日に焼けていない顔に影を落としていた。

 

しばらくして、花京院が食事を終えると、彼の馬は辛抱たまらないというように花京院に近づいてきた。硬い蹄がやわらかな土を踏みしめる音に、花京院は満足げに薄い唇に笑みを浮かべた。

 

「承太郎、おいで」

 

そう言ってすみれ色の瞳をうっとりと細め、花京院は己の体を倒木の上に仰向けに横たえた。途端、承太郎はぶるっと顔を振ると、太陽の光を遮るように彼の上に覆いかぶさる。承太郎は馬特有の長い性器ーー花京院の腕ほどもあるそれを、興奮したように彼の尻に擦り付けた。

 

「あはは、駄目だよ、まだ入らない……ちょっと待って」

 

花京院は機嫌良さそうに笑うと、ゆったりとした服を捲り上げ、白く長い脚をあらわにした。彼はまろい尻の間に手を伸ばし、自ら後孔を手早くほぐすと、承太郎の性器をもう片方の手でそこへ導く。

 

「どうぞ……」

 

そう花京院が呟くや否や、ぐっと承太郎が腰を突き入れる。花京院は慎ましやかな秘部に、凶器のように太く長いペニスを受け入れ、それでも嬉しそうに甲高い嬌声をあげた。

 

「ああっ、すごい、あ、あはっ、あ、あっ」

 

承太郎はその場で駆けるように、足を踏み鳴らしながら何度も何度も花京院へと腰を打ち付ける。しっとりと汗ばんだ黒い皮膚の下で、隆々と盛り上がった筋肉が躍動していた。結合部からはじゅぷじゅぷといやらしい水音が立ち、激しいまぐわいに湯気が立ち上っていた。花京院は承太郎と同じように息を荒げ、長い手足で承太郎の腹に抱きつくようにしながら、赤毛を振り乱して狂い悶える。

 

「あーーっ、あ、ひぁ、あ、あっ」

 

森によく響く承太郎のいななきを恍惚とした表情で聞きながら、花京院も恥ずかしげもなく喘ぎ、愛しくてたまらないというように尻を擦り寄せる。彼の背中と倒木の間に挟まれた、質の良い大きなケープがくしゃくしゃになるのも気にせず、一人と一頭は倒錯的な交接を続けた。

 

「あっ、も、でそう、あ、ああっ、じょたろっ」

 

じき大した時間もたたないうちに、花京院がうろたえた声で限界を訴え、今まさに放逐しようとした時、ガサリと草むらで音がしたのを、花京院は聞き逃さなかった。

 

「あ……」

 

承太郎に揺さぶられ、ぐらぐら揺れる視界の中で花京院が見たのは、青ざめた顔で立ち尽くす少女だった。木の実を拾いに来たらしい彼女は、人と馬が交わるあまりの光景にわなわなと体を震わせ、手にしたバスケットからぼろぼろと栗やらくるみやらを落としてしまっていた。

 

「あ、あっ、お、じょうさんっ、ちがうんだ、その、こわがらせるっ、ん、んっ、つもりはっ、あああっ」

 

花京院が手を伸ばし、少女に切れ切れに呼びかけるのを、承太郎は気にもせず引き締まった臀部を打ち付け、主人を追い詰める。黒々と太く、グロテスクな馬のペニスが、白い尻の間を淫らな音を立てて行き来しているのを目の当たりにし、少女は息を飲むと一目散に逃げ出した。

 

「ああっ、じょうたろ、まって、まっ、とまって、あ、ああっ、やっ、あーーっ」

 

ガサガサ、と少女が必死に草をかき分けて走っていく音を聞きながら、花京院は一際大きな声をあげて精を噴き上げた。同時に彼の腹の中で承太郎のペニスが痙攣し、どぷどぷと大量の白濁が注がれていき、その熱さと勢いに花京院ははくはくと口を戦慄かせる。花京院の細い脚の間から、収まりきらない精液がぼたぼたと溢れ、彼の会陰を、服を、どろどろと汚していく。

 

「ああっ……」

 

あたりにむわりと青臭い匂いが広がり、その濃厚な香りに花京院はぶるりと体を震わせた。それから彼は、ついさっきまで腹の中を暴れまわっていた長いペニスが、ずるりと抜かれる感触に熱い息を吐く。承太郎は名残惜しそうに、主人の腹の上でぬるぬるとペニスを前後させた。

 

「ふは……」

 

花京院は何度か荒い呼吸を繰り返し、ぐったりと体を弛緩させた。機嫌を伺うように、承太郎が舌を伸ばして頬を舐めるのを受け入れながら、花京院は困ったように眉を寄せる。

 

「あの女の子……君のせいで、怖がらせちゃったじゃあないか……」

 

もう、と文句を言いながらしかし、花京院は満更でもなさそうに承太郎の長い顔を撫でた。

 

「ただでさえ、ぼく、魔法使いとかって呼ばれてるのに……また変な噂が広がっちゃうよ……」

 

そう言って花京院が肩をすくめるも、承太郎はどこ吹く風で、愛しげに主人の髪に鼻を埋めて、すんすんと匂いを嗅いでいる。

 

「……まあ、君さえいれば、ぼくはどこで暮らしたって構わないから、いいんだけど」

 

花京院はにまりと笑うと、太腿を大量の精液が伝うのも気にせず、承太郎に顔を擦り寄せ、愛馬にとびきり淫らで、情熱的なキスを送った。


 

おしまい

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