
小学生と高校生の話
「君、左脚を切ったようだが…」
大丈夫かい、とハンカチを差し出してきた「花京院典明」を見た瞬間、おれは石段から落ちて膝を擦りむいたのもどこかへ吹き飛ぶほどの、凄まじい電流がビリビリと体に流れるのを感じた。
ふわふわした一房長い巻毛が特徴的な紅茶色の髪、同じ色の長い睫毛に縁取られた菫の花みたいな瞳、白く長い指先とその先に品良く並んだ桜色の爪、そしてきちんと折り畳まれた清潔そうなハンカチ。その全てが、おれの目を釘付けにした。だからおれはすぐに、これが恋なんだ、と本能的に理解することができた。
馬鹿みたいに口を開けて、ぽーっと花京院に見惚れるおれを、彼は心配そうに見つめてくる。脚を切ったように見えたけど、もしかして頭も打ったのかな、とおろおろしながら花京院はおれの頭を撫でてきた。
「違う、頭は打ってねえし、おれは大丈夫だ……」
「本当かい?でもぼうっとしてるみたいだし、病院に行った方がいいかも……」
「そうじゃあねえ、おめーが綺麗だから見惚れてただけだ」
好きだ、おれと付き合ってくれ、と言うと、花京院は驚いたようだった。
「え、でも君……そのランドセル、まだ小学生だろう」
「なんだよ、年なんか関係ないだろ……」
子供扱いするな、と言えば、花京院はごめん、とひどくすまなそうに謝ったが、おれは泣いてしまいそうだった。
「ごめん、本当にごめんよ、泣かないで……」
ぼくの家がすぐそこだから、少し話そう、と学生服を着た花京院はおれの手を引いた。おれは頭一つ離れた彼との身長差に、また涙が出そうになった。
連れてこられた花京院の家は、静かな住宅街にあるマンションの二階の一室だった。両親は島の山岳部の方で牧場を経営しているらしく、花京院は高校進学に際して一人暮らしを始めたのだと教えてくれた。
「さっきはごめんね……その、告白なんてされたことがなかったから、びっくりしてしまったんだ」
そう言ってお茶を淹れてくれた花京院は、島で一番偏差値の高い高校の二年生だった。成績が良いので生徒会長をやっていて、その活動が忙しいために部活動はほとんどしていないそうだ。園芸部とか興味あるんだけどね、と笑う彼は、たしかに花が似合う。だけどどんなに綺麗な花だって、彼の美しさには敵わないだろう。
花京院はこんなのしかないけど、と煎餅をたくさん持ってくると、自分は海苔がついたやつをぽりぽり食べ始めた。一人暮らしを心配した両親が、たまに送ってくるらしい。
「君、高学年かと思ったら、まだ一年生だったんだな……クラスでも背は高い方だろう、百四十くらいはあるのかな」
花京院はランドセルに書かれた、「いちねんいちくみ くうじょうじょうたろう」という字を愛おしそうに眺めている。小学生とおしゃべりするのなんて久しぶりだ、今は何が流行っているんだい、と訪ねてくる彼に、ぐずぐず鼻を鳴らしながら相撲、と答えたら、ぼくも相撲大好き、と花京院は笑った。それから彼は急に真剣な顔になると、おれの目を見てこう言った。
「承太郎君、ぼくのこと好きになってくれてありがとう……本当に嬉しいよ。でもぼく達、随分と年齢も離れているし、君の好きって気持ちは、友達とか、両親とか、兄弟に感じるようなものと同じなんじゃあないかな」
どうかな、と顔を覗き込んでくる花京院に、おれはムキになって何度も違う、と繰り返した。しまいには悲しくなってきて、また瞼の裏がかっと燃えて、懸命に堪えてもみるみる涙が溢れてきた。好きになった花京院の前で、赤ん坊みたいに癇癪を起こす自分が恥ずかしい。
「なんでダメなんだよ、花京院はもう、好きな奴がいるのか」
ヤケになってそう聞けば、花京院はすぐに違うよ、と首を振った。なかなか泣き止まないおれに困って、花京院も泣きそうになっている。
「違う、だってぼく、誰かを好きになったことも、誰かに好きになられたこともないから、わからないんだ……」
花京院の菫色の瞳は、涙で潤んで一層色を濃くしている。おれはそれがひどく美しく、旨そうに思えて、自分が泣いていたこともすっかり忘れて、思わず頬を伝う彼の涙を、犬みたいにぺろぺろ舐めていた。花京院はおれの舌の感触にびっくりして、体を強張らせたが、それでも子供みたいに泣きじゃくり続けた。
「じゃあ花京院、おれにしろよ。おれでいいだろ。おれが教えてやる」
おれは花京院を泣き止ませようと、彼の顔中にキスの雨を降らせた。いまや立場は完全に逆転し、花京院はおれに縋り付いてぐずついている。
花京院からもキスしてくれ、と言えば、彼は視線をうろうろ彷徨わせた後、そっと目を閉じて、おれの唇の上に触れるだけのキスをした。
そうして、花京院はおれの恋人になった。おれは学校が終わるとすぐに花京院の家に転がり込み、彼と一緒にテレビゲームをしたり、宿題を教えてもらったりした。今まで勉強ばかりしてきた花京院は、あまり友達もいなかったみたいで、おれと遊ぶ時はいつも子供みたいにはしゃいでいた。
だがおれのせいで成績が落ちてはいけないので、彼が勉強で忙しい時は、おれは部屋の隅の方でおとなしく読書をしていた。会話などなくても、花京院がいる部屋の空気は、ふわふわと幸福な綿菓子みたいだった。
ご両親が心配するから、と花京院は必ず夕食前にはおれを家に帰したが、いつも帰り際には頰にキスをしてくれた。恥ずかしそうに目を伏せ、花京院が体を屈めてキスしてくれるのは、とてもドキドキする。そしてなぜだかそういう時は必ず、ちんちんがムズムズした。
だからある日、おれがそのことを正直に話すと、花京院はえっ、とひどく驚いた声を出した。その頰が、みるみるうちに赤く染まっていく。
「じょ、承太郎……それ、誰にも言ってないよね」
「……花京院にしか言ってないぜ」
病気なのか、と聞けば、花京院は困ったように眉を寄せて、考え込んでしまう。
「病気ではないんだけど……」
今もなってるぜ、と言ったら、花京院は余計びっくりしたみたいだった。
「なあ……花京院、見て……」
なんだか体が熱くなってきて、座ったままの花京院の前に立ってズボンとパンツをずり下ろすと、ぷるんとちんちんが飛び出してきた。いつもより大きくて、カチカチに硬くなって上を向いている。
「あ、なんか変な感じがする……花京院、花京院……」
花京院は目をまんまるにして、耳まで真っ赤にしながらも、おれのちんちんから目が離せないようだった。花京院に見つめられると、ますます下半身に熱が集まり、少しも落ち着いていられない。花京院の少し開いた唇が、ひどく柔らかそうに見えて、おれは思わずちんちんを花京院の口に押し付けていた。
「んむっ、や、じょたろ、ふ、ぐ……っ」
「あ、きもち……っ、かきょういんの、くち、あったかい……」
文句を言うために開いた花京院の口の中に、ちんちんを突っ込み、へこへこと腰を振ると、恐ろしいほどの快感が襲ってきた。花京院の頰の裏側、濡れた舌、つるつるした歯の感触が、とても気持ちいい。熱くとろとろした花京院の口内に、おれは夢中になった。
「うむ、ん、んふ、ふっ、んんっ」
花京院の小さな顔を、ぐいぐいおれの腹に押しつけると、息苦しいのか花京院の口がぎゅううとおれのちんちんを吸い上げた。その凄まじい衝撃に、腰の抜けるような感じがして、おれの体は勝手にびくびくと痙攣した。
「あ……っ」
「んん……っ」
体中にぞくぞくと甘い電気が流れて、脚の付け根のあたりが痺れている。はあはあ、と荒い呼吸を繰り返しながら、ぐったりと体の力を抜くと、花京院がおれの脚の間から這い出てきた。
「ぷはっ、はあ……っ、ひどいや、承太郎……」
そう言っておれを睨む花京院の、瞳は熱っぽく潤んでいた。彼の脚の間が膨らんでいて、そこだけズボンが盛り上がっている。
「ぼくのおちんちんも、君のせいで変になっちゃったよ……」
君がなんとかしてくれ、と花京院はおれの手を取ると、自分の脚の間に導いた。おれがおそるおそるズボンと下着を脱がせると、おれよりずっと大きくて、先端の皮が剥けてる、ピンク色のちんちんが出てきた。
おれははじめて花京院のちんちんを見て、彼にもちゃあんとちんちんがあるのだ、ということに感動していた。おれと同じようにぴん、と上を向き、先端からとろとろと白っぽい液体が溢れている。
「花京院……これ、なんだ」
「ああ……これはね、気持ちいいと出るんだ……」
ねとねとと指にまとわりつく液体に気を取られて、いつの間にか手が止まっていたらしい。花京院がじれったそうに、触って、と囁いた。
「君はまだ手が小さいから、両手でぼくのおちんちん、挟んで……そう、上手だね……それでちょっと強めに擦って……」
おれがごしごしとちんちんを擦ると、気持ちいい、と花京院はうっとりと呟いた。だからおれはこれでいいんだとちょっとほっとして、頑張って手を動かし続けた。
「花京院、花京院っ……気持ちいい?」
「うん、うん……っ、あ、じょうたろ、いい、そこ、すき……っ」
もっともっと、と花京院は夢中になっておれの手に腰を押し付けてきて、おれは彼のそのあまりのいやらしさに、またちんちんがズキズキと痛くなってくる。
「あ、花京院っ、また、おれのちんちん、変だっ」
おれのも触って、と頼めば、花京院が手を伸ばしてくる。彼は再び硬くなったおれのちんちんと、自分のそれをひとまとめにして握ると、激しく手を上下に動かした。
「あ、あっ、あっ、かきょういんっ、なにこれ、すごいっ」
「あん、あっ、ああっ、きもちぃっ、じょうたろのおちんちんと、ぼくの、こすれてっ……はぁ、すごくいい……っ」
イク、イク、と頬を紅潮させた花京院が、何度も切れ切れに叫び、頭がぼうっとする。彼はどこに行ってしまうんだろう。どこにも行かないで欲しい。ぞくぞく、と肌が粟立つ感覚に身体を震わせ、おれは花京院、と彼の名を呼んだ。
「かきょういん、かきょういんっ、すき、だいすき、あ、あーっ」
「ああっ、おちんちん、きもち、きもちっ、あ、だめ、も、イク、ほんとに、あ、ふあぁぁあーっ」
気持ち良さが頂点に達し、目の前が真っ白になった瞬間、びゅるる、と花京院のちんちんから、白くどろりと濁った液体が放たれ、おれの頬まで飛び散る。青臭い匂いの粘液に、おれがびっくりして固まっていると、花京院が慌ててティッシュで頬を拭ってくれた。
「ごめん、顔にかけちゃった……」
本当にごめんね、と申し訳なさそうに謝る花京院を遮り、おれは興味津々でこれは何なんだ、と彼に尋ねていた。
「え、あ、こ、これは精液って言ってね……」
「すごい、どうやって出すんだ?これ、おれも出せるのか」
矢継ぎ早のおれの質問に、花京院は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも、もごもご教えてくれた。
「その、これは赤ちゃんのもとで、身体が大人になって、えっちなことをして、すっごく気持ち良くなると出るんだ……」
君はまだ、もうちょっと大きくならないと出ないと思う、と言う花京院が、随分と遠くに感じて、おれは思わず彼にしがみついていた。
「やだ、花京院……おれが大人になって、精液出るようになるまで、どこにも行かないで……」
子供みたいに聞き分けのないおれに、花京院はどうしたの、と目を丸くした。
「だって、さっきイクって言ってたから……」
おれがそう言った瞬間、ぷっと花京院が吹きだした。
「なんだよ、笑うことないだろ」
「いや、ちがう、ふははっ、そうじゃあなくて、くっ、だめ、おかしい」
ノォホホ、と奇妙な笑い声をあげて、腹を押さえて花京院はカーペットの上を転げ回った。さっきまであんなに蕩けた顔で、おれとちんちんを擦り合ってたくせに、もうすっかりあのいやらしさは鳴りを潜め、普通の高校生に戻っている。
「あのね、承太郎……イクっていうのは、精液が出るって意味なんだ……」
「えっ」
まさか「イク」にそんな意味があったとは。花京院が何処かへ行ってしまうと、勘違いしていた自分が恥ずかしい。まだにやにやしている花京院を恨めしく睨めば、ごめんってば、と花京院がおれにキスしてきた。
「……花京院、最近何でもキスでごまかそうとしてるだろ」
ばれてるぜ、と言うと、花京院はそんなことないよ、と口を尖らせた。
「……承太郎、好きだよ」
ぼくずっと待ってるから、早く大きくなってね、と花京院は目を細めて微笑んだ。
何気ない毎日の中で、おれと花京院は今まで通り勉強し、遊び、おやつを食べ、そしてその日常の中に、「ちんちんを擦り合う」という行為が追加された。
花京院いわく、これは大切な人としかしてはいけない特別なことで、二人だけの秘密にしなくてはならないらしい。もちろんおれは誰にも言うつもりはなかった。おれがぺらぺら話すことで興味を持った奴が、花京院に同じことをしたら許せないからだ。
彼の誕生日には、おこづかいを貯めて菫の花の種を買った。花京院はすごく喜んでくれて、二人で一緒に植木鉢に植えた。春になったら、花が咲くという。おれと花京院は芽が出たといっては大はしゃぎし、よく二人で飽きもせず、土からぽつぽつと芽生えた小さな葉を眺めた。
夏休みには、花京院と一緒に海に行った。水着を着た花京院はとても綺麗で、白くすらりとした脚や、ツンと尖った桃色の乳首に、おれはまたちんちんがぎゅっとなった。青い海の中を悠々と泳ぐ花京院は、魚みたいだった。
二学期が始まってからは、なかなか一緒に遊ぶ時間が取れなかったけど、海で花京院と拾った小さな貝殻を見つめていると、穏やかな気持ちになった。会えなくても、花京院はおれを好きだという確信があるからだ。
だが、道徳の授業で聞いた「承花マッチングテスト」の話は、そんなおれのちっぽけな自信を粉々に打ち砕いた。最適な「承太郎」と「花京院」の組み合わせは、「承花マッチングテスト」で決まる。おれと花京院が好き合っていても、番いになれるかどうかは「承花マッチングテスト」の結果次第という事実が、おれをひどくうろたえさせた。
「承花マッチングテスト」の授業を受けた日、おれはどうにも自分を抑えられず、花京院の家に向かっていた。近々試験があるから、という理由で、花京院と次に会うのは来週の日曜日と決めていたのだが、一秒だって待てなかった。
「承太郎、どうしたんだい」
はあはあ、と息を荒げて花京院の家まで走ってきたおれを、彼は試験の前だというのに部屋に入れてくれた。羊羹があるけど食べるかい、と聞いてくる花京院に、いらないと答えて、おれは彼の細い腰にしがみついた。
「……花京院は『承花マッチングテスト』を受けたことがあるのか」
「え?まだだよ……ただ、今度の試験が終わったら受けなくちゃあいけないけど……」
受けないで、というおれの声は、情けなく震えていた。涙がじわりと溢れて来て、花京院の腹に顔を埋める。
「受けないで……花京院が、誰かに取られるの、やだ……」
「承太郎……」
胸が痛い。瞼の裏が熱い。鼻の奥がツンとする。喉の奥が、ガラスの破片が刺さったみたいに、ズキズキした。
「承太郎、大丈夫だよ……」
「承花マッチングテスト」は最適な番いを作る仕組みなんだから、君がぼくのこと好きでいてくれるうちは、きっとぼくは君以外の誰ともマッチしない、と花京院は優しく言った。
「君が、ぼくのことを変わらず好きでいてくれるなら、ぼくは十年くらい待てるよ……」
顔を上げてよ、と言われて、ゆっくり花京院を見ると、彼はおれに笑いかけ、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。本当か、と問えば、本当さ、と彼はおれの背を撫でた。
「ぼくが、誰かに取られてしまうんじゃあないかって、心配になっちゃったんだね……」
こんなに好きになってもらえて、ぼくは幸せだな、と花京院は嬉しそうに目を細めた。それからいつもおれの機嫌を取る時と同じように、ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスの雨をくれる。しかしなかなかおれが泣きやまないので、彼は困ったようにおれの目を見つめた。
「……そんなに心配なら、おちんちん擦り合うより、もっとすごいこと教えてあげようか」
二人だけの秘密にできるならいいよ、と言う花京院の顔は、真剣そのものだった。だからおれはすぐに涙を拭い、できる、と彼に返した。
「じゃあまず服を脱いで……」
おれは花京院からぱっと身体を離すと、彼に言われるまま服を脱ぐ。するとおれのちんちんは、もう既にぴんと立っていた。花京院も裸になり、こっちに来て、とおれをベッドへ連れて行く。
「ぼくの言う通り、ゆっくり優しくやってね……」
彼はベッドの上に座り、脚を大きく開くと、自分でお尻を広げて見せた。もうゆるく上を向いた花京院のちんちんの下に、小さなお尻の穴がひくひくしている。
「ベッドの横の棚に、小さなボトルがあるだろ……そう、それであってるよ。それの中身を、ぼくのお尻の穴に、優しく塗ってくれるかい」
きゅぽ、と瓶の蓋を開けると、中からとろりとした透明な液体が出てきた。なんだかほんのり甘い匂いがする。おれはおそるおそる、その液体を花京院のお尻に塗った。
「うん、承太郎、上手だよ……」
そう花京院に褒められて、おれは嬉しくなる。ますます一生懸命に塗っていると、彼はそろそろ指を入れてみて、とおれに囁いた。だからおれはテレビで見た陶芸の職人みたいに、いっそう真剣になって、そっと花京院のお尻に指を入れてみた。
「あ……ふふ、入ってきた……承太郎、ぼくのお尻の中、どんな感じかな……」
「なんだか……あったかくて、やわくて、おれの指に吸いついてくる……」
不思議な感じだ、と言えば、花京院はそっか、と嬉しそうに笑った。
「じゃあ、ちょっと動かしてみて……あ、あっ、そう、上手、上手……」
花京院はおれが指を動かすと、子猫みたいな声で鳴いて、腰をくねらせた。さっき塗ったぬるぬるした液のおかげで、つっかかることなく、指はスムーズに動かすことができる。
「花京院、次は?次はどうすればいい……」
「次はね……一本ずつ、指を増やしてみて……」
おれは夢中になって、花京院の言う通りに彼のお尻に入れた指を増やしていった。三本指が入った頃には、花京院のお尻の穴はもうとろとろになっていて、縁がぷっくりと充血しているのがとても可愛らしかった。
「ああぅ……っ、おしり、きもち……うん、もう、大丈夫かな……」
花京院は自分の右手でちんちんを擦りながら、はあはあ息を荒げていたが、おれが四本目の指を入れようとしたところで、もう指は増やさなくていいよ、と言った。
「じゃあ承太郎……指を抜いて、さっきの液を足したら……ぼくのお尻の穴に、君のおちんちんを、入れてみて……」
花京院はベッドにごろりと寝転がると、両手で自分のお尻を開いてみせる。おれの指で散々広げたそこは、内側の粘膜をちらりと覗かせていた。そのつやつやした濃い桃色が、おれをくらくらさせる。
「は……っ、花京院、花京院……っ」
余裕などなく、ガッつくように花京院のお尻の穴にちんちんを押し付けると、少しの抵抗の後に、ぬぷぬぷと飲みこまれていく。花京院の中はぬるぬるしていて、きゅうきゅうとおれのちんちんに吸いつき、生き物みたいにうねる粘膜に、おれは全てを持っていかれてしまいそうな感覚に陥る。
「あっ、あ、あ、なんだこれ、すごい、ちんちん、とける……っ」
「あっ、あ……っ、じょうたろの、おちんちん、すごい、きもち……あ、あんっ、ああぅ……っ」
気持ち良すぎてじっとしていられず、へこへこ腰を振ると、花京院がふうふう息を荒げて身悶える。花京院のお尻の中は、あたたかく、ふわふわしているのに、ひどく狭くて、ちんちんを抜き差しするたびに、おれの形にぴったり馴染んで締めつけてくるのだった。
「ねえ、ふ、んんっ……じょうたろ、ぼくのおしり、どう、かな……っ」
「あ、あっ、かきょういんの、おしりっ、すごい、きもちよくて……こし、とまらない……っ」
臍の下の辺りから、ぐーっと何かが這いあがってくる感じがあって、背骨がぞくぞくする。体の中から湧きあがる、名前のつけがたいマグマのようなエネルギーに急かされ、おれはただただ腰を振り続けた。花京院のお尻に、腰を打ちつけるたび、ぱんぱんと乾いた音が立つ。
「あ、あっ、かきょういんっ、なんか、くる、あ、あっ」
「はぁっ、じょうたろ、あ、あんっ、いいよ、めちゃくちゃにしてっ」
少しでも花京院の奥に入り込もうと深く腰を使い、どんどん動きを速めると、目の前でちかちかと光が散る。ずちゅん、と花京院の一番奥までちんちんを埋め込んだ瞬間、ぎゅうう、と一際強い締めつけに襲われ、頭がぼうっとなって、太腿の辺りがじぃんと痺れた。びくびくとちんちんが震え、腰が抜けそうになる。
「あっ、あはっ、んあぁっ……はあ……中で、おちんちん、どくどくしてる……精液出さないで、イっちゃったのかな……」
気持ちよかったかい、と聞かれて、返事をしようと思うのに、喉がひりついて上手く声が出せず、おれは何度も頷いた。花京院は嬉しそうに微笑んで、おれをぎゅっと抱きしめてくれた。
「ぼくも気持ちよかったよ……」
ほらみて、と言われて視線を下に落とすと、花京院の腹の上に白く濁った液体が飛び散っていた。
「ふふ、とうとうぼく達、えっちしちゃったね……」
大好きだよ、と花京院がキスをしてくれて、胸がぽかぽかとあたたかくなる。やっと花京院が自分のものになったみたいで、おれはなんだか泣いてしまいそうだった。
「おれ、花京院のことが、大好き……」
掠れた声でそう告げると、花京院がうっとりと目を細めた。よしよし、と頭を撫でられて、恰好悪いけどおれはちょっと泣いてしまった。
「ね、承太郎……大きくなったら、きっとぼくを迎えに来てね……」
待ってるから、と言う花京院に、うん、うん、と何度も頷いた。花京院の腕の中はあたたかく、心地よかった。
「承太郎は大きくなったら、どんな風になるのかな……」
花京院はおれを抱きしめ、目を閉じながら、夢見るように、ぽつりぽつりと話しだす。
「ぼくは大人になったら、この島の外へ行ってみたい……外の世界に何があるのか、この目で確かめたいんだ」
まだ誰にも言ったことがないんだけど、ぼくは本当は冒険家になりたいんだ、と花京院は言った。
「じゃあ、おれは海が好きだから、海の冒険家になって、船で花京院をこの島の外に連れて行ってやる」
おれがそう言うと、花京院は本当かい、と目を輝かせた。
「承太郎と冒険の旅に出たら、どんなに楽しいだろう」
えへへ、と無邪気に笑う花京院は、いつもと違ってひどく幼く見えた。彼は先ほどの行為で疲れたのか、少し眠たそうにしつつも、おれの髪を優しく手で梳きながら、話を続けた。
「口には出さないけど、両親はぼくに牧場を継いでほしいみたいだし、担任の先生はお医者さんにでもなったらどうだい、って言うけど、ぼくは世界中を旅してみたい……」
みんなに言ったら無理だって笑われるか、馬鹿にされると思っていたけど、承太郎は優しいね、と花京院は言った。おれはなんだか堪らなくなり、彼の身体を強く抱きしめ返す。
「絶対に、おれが花京院を島の外に連れて行ってやる。おれが大人になったら、自分の船を手に入れるから、花京院を乗せてどこだって行ってやる」
花京院はおれの話を聞きながら、にこにこと嬉しそうに笑っている。おれと花京院は、抱きしめあいながら、島の外の世界に思いを馳せた。
いつの間にかそのまま眠ってしまったようで、おれは花京院の腕の中で、彼と船で世界中を旅する夢を見た。夢の中でおれは花京院より背が高くなっており、花京院は今と変わらず綺麗だった。
花京院は船の上でのびのびと楽しそうに生活をしていて、釣った魚で器用に料理を作ったり、船のまわりを飛び回るカモメに餌をやっていた。おれはそんな花京院を横目で眺めながら、コンパスや双眼鏡を頼りに、穏やかな凪いだ海を悠々と船で進んで行く。
夢の最後に、おれと花京院は「承花島」に良く似た、まだ誰も見つけていない新しい島に辿り着いた。花京院はここに住もう、と言い、おれもその島の空気が気に入ったので、彼の提案に乗ることにした。花京院はこの世界にぼくと君しかいないみたいだね、と笑い、おれは彼を抱き寄せると弧を描いた唇にキスをした。
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